工繊大の塚本です.

In article <k9gt9b$1s8$1@dont-email.me>
"Kyoko Yoshida" <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> In article <121106173213.M0101078@ras2.kit.ac.jp>
> Tsukamoto Chiaki <chiaki@kit.ac.jp> writes:
> > 「数学のロジックと集合論」を持っているのですから
> > ちゃんと読みましょう. p. 105, p. 129 にあるように,
> > 自然数と同じ濃度を持つ集合が有限集合で,
> > そうでない集合が無限集合です.
> 
> これは選択公理や帰納的集合存在公理が仮定されてないの状態での
> 無限集合の定義なのですね。

違いますよ. 「選択公理」は仮定していませんが,
「帰納的集合存在公理」は仮定しています.

「数学のロジックと集合論」の 157 page にあるように,
無限公理の述べ方にも色々あり, 「あらかじめ有限・無限の定義を
与えてから無限公理を定式化する方法もあるが」, 自然数の存在を
「帰納的集合」の存在から導いてから無限を定義するのがこの本の
立場です.

> "どの自然数とも同濃度を持たない集合が存在する"という公理が
> 後に現れるのですね。 

それは「公理」ではなく, 「帰納的集合存在公理」から導かれる
「定理」です.

> > inductive set はこの定義での無限集合ですが,
> > 無限集合でも inductive set でないものはいくらでもあります.
> 
> 基数がアレフ_1,アレフ_2,…等ですね。

それは何か大きな勘違いが重なっています.
無限基数は極限順序数ですから, 帰納的集合(inductive set)です.
例を挙げるなら極限順序数以外の集合を挙げる必要があります.

> 記号"∈"と外延性公理と空集合公理と対の公理があってなら
> 確かに{x}が集合となる事は認められますが。

 ZF集合論の話をしているのですから, それで良いわけです.

> なるほど。集合zを{a,b}と書き,{a,a}を{a}と書くと約束する。つまり
> http://www.geocities.jp/a_k_i_k_o928346/axiom_of_pairing__00.jpg
> という具合でいいのですよね。

そんなところです.

> x∈{x,y}の"∈"には何の意味も無い(未定義記号)のですね?

はい.

> でもでもそうしますと外延性公理
> http://www.geocities.jp/a_k_i_k_o928346/axiom_of_extensionality__00.jpg
> では"∈"が未定義記号なら"x∈A"とかも未定義語で結局,
> "x∈A⇔x∈B"の箇所が意味不明にはならないのでしょうか?

なりません. 明確です.

> "∈"という記号は何かと問われたら応えに窮するので"∈"を定義したのでしたが

貴方の記述は定義にはなっていませんでした. ともあれ,

> それだと一階述語論理で形式された公理論的集合論の立場
> (つまり,∈は無定義記号とする(?))に反してしまうのですね。
> すみません。一階述語論理で形式された公理論的集合論の立場とは
> 簡単に言えばどういうことでしょうか?

それを理解したいのであれば, 「数学のロジックと集合論」の
第4章が良い入門になるでしょうから, ちゃんとお読み下さい.

> http://www.geocities.jp/a_k_i_k_o928346/infinite_descending_sequence__00.jpg
> とするつもりでしたがこれは全くのインチキである事が判りました。
> http://www.geocities.jp/a_k_i_k_o928346/infinite_descending_sequence__01.jpg
> では如何でしょうか?

如何でしょうか, って, それは私が書いた

> > 因みに, n \in m かつ m \in n となる集合 m, n が存在するとき
> > 正則性の公理が満足されないことは,
> > A = { m, n } とすると, A は空集合ではなく,
> > C \in A となる C は C = m であるか C = n であり,
> > C = m の時は n \in C かつ n \in A であり,
> > C = n の時は m \in C かつ m \in A である,
> > ことから分かります.

の劣化コピーですね.

> http://www.geocities.jp/a_k_i_k_o928346/axiom_of_regularity__01.jpg
> となったのですが
> 「n \in m かつ m \in n となる集合 m, n が存在するとき」
> の時,確かにm∋n∋m∋n∋…
> となり正則性の公理に矛盾が生じる事が分かりましたが,
> 一般の無限降下列の場合にはどのようにして矛盾を発生させれるのでしょうか?

 Peano の公理を満足する自然数が定義出来てからであれば,
 { a_n }_{n \in \mathbf{N}} のような集合の存在を述べて
議論すれば済むことです.
「 n \in m かつ m \in n となる集合 m, n 」は存在しない,
ということを用いて「最小の帰納的集合」として定義された
自然数が Peano の公理を満足することを証明しようとしているから
その証明の仕方を問題にしたのです.

> つまり,
> 置換公理&分出公理⇒空集合公理
> が成り立つので空集合の公理を取っ払ってる公理系もあるのですね。

「置換公理と分出公理」ではなく
「無限公理と分出公理」です.
現に「数学のロジックと集合論」では採用されていません.

> 更に,
> 置換公理⇒分出公理
> が成り立つので,
> 置換公理⇒空集合の公理
> が成り立ちますよね。
> そうしますと,置換公理さえあれば空集合の公理は不要なのでしょうか?

いいえ. 「無限公理と置換公理」さえあれば
「空集合の公理」は不要, というのが正しい.

> > 定義がなければ { x } が何を表すのか分かりません.
> > p. 157 の \emptyset の定義の後に,
> > { x } の定義も書いてありますから,
> > 参照して下さい.
> 
> http://www.geocities.jp/a_k_i_k_o928346/def_of_braces__00.jpg
> という風な感じで宜しいでしょうか
> (因みに記号「⇔^I」はimplication(含意)を意味します)?

括弧の使い方が変ですね.
 \forall u (u \in z) \Leftrightarrow u = y
ではなく,
 \forall u ( u \in z \Leftrightarrow u = y )
です.

> そしてこの定義はZF公理系より前に述べるべき定義だと思い,
> ZF公理系に前置しました。 

ま, 何処に置いても構いません.

> 何故なら{y}が定義されて初めて,外延性公理などが順述されると思ったからです。

 { y } といった記号は, 単なる省略記号, あるいは
意味を取り易くする為の記号ですから, 「定義されて初めて」
などという言葉を使っているのは, 誤解しているということを
示すものです.

> 更に,z,yをsetsではなくmathematical systems(数学的体系)としたのは,
> ZF公理系を満たす数学的体系の事を"集合"と呼ぶのが
> 集合の定義だと思ってますので,
> ZF公理に前置したz={y}の定義のz,yは集合と呼ぶことは不可能だ
> と判断したからです。

命題を述べる際の単なる変数です.

> それとも,「∈」や「{ }」や「z={y}」は未定義語と解釈すべきなのでしょうか
> (すみません。ちょっと混乱中です)?

要は文字列の置換規則だと思えば良い.

> 先ず,
> x={φ,{φ},{φ,{φ}},{φ,{φ,{φ}}},…,{φ,{φ,{φ,…,{φ,{φ}}…}},
> y={φ,{φ},{φ,{φ}},{φ,{φ,{φ}}},…,{φ,{φ,{φ,…,{φ,{φ}}…}}
> (但し,xとyの{ }の入れ子数は等しいとは限らない)
> と書ける。

厳密な証明中の言明に「…」を使っては駄目です.
そこに何が入ることを想像しているかは他の人には伝わりません.

> それで以って,yの入れ子数がxの入れ子数が一つ多い場合は
> x∈yは真となる(∵公理エ),それ以外はx∈yは偽(∵公理エ)となる。
> 従って,φを集合の出発点として公理ア,イ,ウ,エを構築すると
> x∈yの真偽が判定できた。(終)

集合というのは何かが定義出来ていないものでは何も証明できません.

> では如何でしょうか?

こういった形式的な述語論理の世界を基盤とする時は,
文字列の操作に帰着できないものは, 何も信用しては
いけません.

> やはり,「{x}」には(通例は)
> http://www.geocities.jp/a_k_i_k_o928346/def_of_braces__00.jpg
> という定義がZF公理系を述べる前に与えられるものなのですね。 

省略記号は何処で与えても良いし, 全く使わずに済ませることも
出来るものです.
-- 
塚本千秋@数理・自然部門.基盤科学系.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp