工繊大の塚本です.

In article <k6i1c5$1bh$1@dont-email.me>
"Kyoko Yoshida" <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> In article <121024173620.M0225737@ras1.kit.ac.jp>
> Tsukamoto Chiaki <chiaki@kit.ac.jp> writes:
> > 「選択公理」がなくても定義は出来ますよ.
> > 普通の無限集合の定義とは一致しないだけで.
> 
> うーん、どういったものでしょうか?

言ったそのままです. 普通の「無限集合」の定義と,
「デデキント無限集合」の定義とがあり, 
「デデキント無限集合」であれば「無限集合」になりますが,
「選択公理」がなければ「無限集合」が「デデキント無限集合」
になることは証明できません.

> http://www.geocities.jp/a_k_i_k_o928346/def_of_infinite_set__01.jpg
> で大丈夫でしょうか?

前半の単射性の証明ですが, ちゃんと教科書が読めているとは
評価できません.

 x \in { x } というのは Axiom of pairingの公理と
 { x } の定義から従うことです.

 x \cup { x } = y \cup { y } から分かるのは

 ((x \in y) \lor (x = y)) \land ((y \in x) \lor (y = x))

であり, それは

 ((x \in y) \land (y \in x))
 \lor ((x \in y) \land (y = x))
 \lor ((x = y) \land (y \in x))
 \lor ((x = y) \land (y = x))

と同値ですが, x \neq y (つまり, \lnot (x = y),
このとき \lnot (y = x) でもあります) のときは,
 (x \in y) \land (y \in x)
が成立することになります.
このとき, \cdots x \in y \in x \in y \in x
という無限下降列の存在は自明のようではありますが,
それが Axiom of regularity に反することは
ちゃんと「証明」してみて下さい.

> あと,Axiom of extensionalityとは簡潔に言えば集合x,y,zが在って,
> x=y∧y=zならx=zと言う主張でしょうか?

 ((x = y) \land (y = z)) \to (x = z)

というのは「等号の公理」の一部であり,
 Axiom of extensionality とは違います.
# p. 167 参照.
 
> 当初は「集合a,bが在って,(x∈aならx∈b)∧(x∈bならx∈a)の時,a=bとする」が
> Axiom of extensionalityの意味かと思ってましたが

それで正しい.

> Axiom of extensionalityが登場する時点では記号"∈"が未定義状態でした。

集合論においては,
「集合」 x, y に対して x \in y が
成立するか, しないか, ということが命題として意味を持つ
ということが仮定され, さらに, その記号 \in を含む命題
について「集合論の公理」が成立していることが仮定されている時,
何が言えるのか, を考えるのです.
「集合」とか \in というのは最初から最後まで定義を持たないもの
と考えることもできますし, 「集合論の公理」全てが満足されて
いるということが「集合」とか \in の意味を限定していると
考えれば, それら全てで定義されていると考えても良いでしょう.

> それで,ZF公理系の前に記号"∈"を下記のように定義してみました。

だから ZF 公理系の「前に」記号 \in を定義するというのは
公理論的集合論の立場ではありません.

> [公理ア] xを集合と呼ぶ事にする。

これって何の意味もありませんね.

> [公理イ] {x}を集合と呼ぶ事にする(対集合の公理(?))。

 { x } の定義もなしに { x } という文字列を使うのですか.

> [公理ウ] {x,{x}}を集合と呼ぶ事にする(合併集合の公理(?))。
> [公理エ] {x,{x}}が集合ならばA:={x,{x},{x,{x}}}も集合とする。
> そして一番外側の中括弧とカンマ(カンマが無い場合も含む[公理イ])で
> 区切られたx,{x},{x,{x}}は集合Aの元と呼び,
> x∈A,{x}∈A},{x,{x}}∈Aと記述する。
> [公理オ] 元を全く持たない集合(これをAとする)が存在する
> (∵[公理ア]ではφは中括弧を持たないので記号"∈"が使えない),
> この時,A=φと表す事にし,Aは空集合であると言う。

貴方の「公理」では与えられた場合についてのみ
 \in が使えることになっているので,
 x, y を勝手な集合とする時, x \in y に意味があるかどうか
すら分からないことになります.

> このようにZF公理系の前に記号"∈"を定義して置かないと,
> ZF公理系を述べる際に迚も不便になりそうに思いました。

貴方は何も定義出来ていませんし,
そういう定義をしようと思うこと自体,
一階述語論理で形式された公理論的集合論の立場に反しています.

> http://www.geocities.jp/a_k_i_k_o928346/def_of_natural_number__04.jpg
> で大丈夫かと思います。 

 I_A (教科書での N_A) の定義はそれで良いですが,
 I_A が任意の recursive set (教科書での inductive set) の
部分集合であることの証明は省かれているようですね.

 Peano の公理の部分は「 Peano の公理」の理解が
違っているようにも思います.

因みに教科書に書いてあるのは「略証」です.
ちゃんと「証明」にまで, 行間, 或いは, 語間を埋めて,
完成させて下さい.
-- 
塚本千秋@数理・自然部門.基盤科学系.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp