工繊大の塚本です.

In article <b73c4aed-8419-42ad-9e80-6ec927715312@z9g2000yqi.googlegroups.com>
kyokoyoshida123 <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> ここではLは線形汎写像ではなく,線形汎関数になっているのですか?

普通, 写像の値域が R なら, 「関数」と言いますね.

> 「Lを線形空間Vにおいて連続とする時、
> LがVからRへの線形汎関数
> ⇔(def)
> Lは線形写像をなす」
> が暗黙を取っ払った定義なのでしょうか?

「 L が(関数のなす)位相ベクトル空間 V から R への線形汎関数
   ⇔(def)
   L は V から R への連続な線形写像」
ですね.
 
> つまり,Lが位相について連続であるとは
> 「∀t∈T (但し,TはRの通常の位相)
>  ⇔(def) L^-1(t)∈T_c (但し,T_cはC([a,b])での位相)」
> ですね。
> C([a,b])の位相とはどういうものでしょうか?

 f ∈ C([a, b]) のノルム |f| を |f| = max_{x∈[a, b]} |f(x)|
で定めた時の位相です.

> In article <090313181658.M0106879@cs1.kit.ac.jp>
> Tsukamoto Chiaki <chiaki@kit.ac.jp> writes:
> > 今, F(b) は定義されていない, という話をしています.
> 
> x∈[a,b]において f_{ε,x}(t):= 1  (a ≦t≦x),
>  1-(t -x)/ε  (x <t<x+ε), 0  (x + ε≦t≦ b),
> がf_{u,ε}の定義でしたから

 x と u がごっちゃになっていますが,

> F(b)=lim_{ε→0}L(f_{b,ε})=lim_{ε→0}L(1)  (a ≦t≦b),
> lim_{ε→0}L((1-(t -x)/ε))  (b <t<b+ε), lim_{ε→0}L(0)  (b + ε≦t≦ b)
> =lim_{ε→0}L(1)=L(1)と求まりましたが。

 f_{u,ε} というのは一つの関数ですよ. L(f_{u,ε}) を
場合わけしてどうします. a ≦ u < b であれば,
 u + ε < b となる正数 ε について,

  f_{u,ε}(t) = 1                   (a ≦ t ≦ u), 
                1 - (t - u)/ε      (u ≦ t ≦ u + ε), 
                0              (u + ε ≦ t ≦ b).

として, f_{u,ε} が決まりますが, f_{b,ε}(t) は
正数 ε について, b + ε は [a, b] からはみ出して
しまいますから, 同様には扱えません. それで,
 F(b) = L(1) と, 別に, 定義を与える必要があります.

> それでもF(b)は定義されていないのでしょうか?

どうして定義されていると思うのですか.

> > 大体, a' < a なる, を取ってきて, [a', b] 上の関数を
> > 考えるのでは, それに対する L の値など決まりません.
> 
> f_{u,ε}はu∈[a,b]⊂[a',b]において

 u ∈ [a, b] なら, 既に [a, b] で定義された
 f_{u,ε} がありますね. それをどう拡張しようが,
 L(f_{u,ε}) は [a, b] 上の関数としての f_{u,ε}
について決まっているので, ここでの話とは無関係です.

 u ∈ [a', b] で, [a', b] 上の関数 f_{u,ε} を

>  f_{ε,u}(t):= 1  (a'≦t≦u)、
> 1-(t -u)/ε  (u <t<u+ε)、 0  (u + ε≦t≦ b)

と定義するのなら, そのままでは L(f_{u,ε}) は
決まりません. f_{u,ε} を [a, b] 上に制限するのも
無意味でしょうね.

> と定義できてF(u)=lim{ε→0}L(f_{a,ε}) (a'≦u<aの時)、

これは a' ≦ u < a なる u についての F(u) を F(a) と
するということですか. それは駄目です.

> lim{ε→0}L(f_{u,ε}) (a≦u≦bの時)
> とすれば一応,Fは[a',b]で単調加やnormalizedになっていると思いますが。
> このやり方では無理でしょうか?
> 
> 何故このような事を考えるかと言うとμ([a,b])<∞を示したいのですが
> 既にご承知の通り,Theorem3.5では
> μ((a,b])=F(b)-F(a)としてしか書き表せないのでμ((a,b])<∞は言えるが
> μ([a,b])<∞はどうなるか判定できない。
> それでμ({a})=F(a)と定義してしまえばよいと仰ったのですが
> 何故このように定義できるのかしっくり来ませんで。
> μ({a})=0とかμ({a})=1とか定義しても差し支えないのでしょうか?

大いに差し支えます. 前に挙げた,

  L(f) = f(a)

という線形汎関数 L について, F(u) を求めてみましたか.

もし F を R 上で定義したいなら,

  F(u) = 0     (-∞ < u < a)
         F(b)   (b ≦ u < ∞)

と拡張するものです.

> > F(b) は f_{u,ε} を使っては定義されないので,
> > F(b) = L(1) と決めようというわけです.
> 
> 上記の私の計算通りになってます。

無意味な計算です.

> > F(a) は決まっているので,
> 
> F(a)=lim_{ε→0}L(f_{b,ε})=lim_{ε→0}L(1)  (a ≦t≦a),
> lim_{ε→0}L((1-(t -x)/ε))  (a <t<a+ε), lim_{ε→0}L(0)  (a + ε≦t≦ a)
> =lim_{ε→0}L(1)=L(1)ですね。確かに決まってますね。

本当に分かっていないのですね. L は f_{a,ε} という関数に
対して, 唯一つの値 L(f_{a,ε}) ∈ R を与えるものです.
 F(a) = lim_{ε→+0} L(f_{a,ε}) です.
 
> μ({a})=F(a)とするのですよね。何故こう決めていいか分かりませんが。

だから, L(f) = f(a) について, 考察して御覧なさい.
更に, L_c  (c ∈ [a, b]) という線形汎関数を
 L_c(f) = f(c) で定義して, F_c(u) を求めて御覧なさい.

> Theorm3.5適用直後はμは(a,b]での測度になってますから
> (a,b]上では測度になっているでしょうが
> [a,b]でも測度になっているかは不安ですね。
> 念の為,μが[a,b]の測度になっているかチェックしてみますと,
> Fは単調増加でF(a)=L(1)≧0なので非負。

 F(b) = L(1) としたので, F(a) = lim_{ε→+0} L(f_{a,ε})
とは一般には異なります. いずれ f_{u,ε} ≧ 0 より
 L(f_{u,ε}) ≧ 0 ですから, u ∈ [a, b) について
 F(u) = lim_{ε→+0} L(f_{u,ε}) ≧ 0 は分かっていますね.

> 従って,μ([a,b])⊂[0,∞]を満たしていますね。
> 可算加法性は例えばμ({a}∪(a,b])=F(a)+F(x)-F(a)
> とどうして書けますでしょうか?

 (a, b] 上の測度 μ_0 に対して, [a, b] 上の測度 μ を,
ボレル集合 E ⊂ [a, b] に対して,

  a ∈ E のときは μ(E) = F(a) + μ_0(E\{a}),
  a ∈ E でなければ μ(E) = μ_0(E)

で定めたものが測度になることはお確かめ下さい.
 
> ここがμ({a}):=F(a)と定義していいのかの具体的な疑問点ですね。
> [a',b]で拡張しておいてTheorem3.5を適用してできた測度μなら
> [a,b]もカバーしてくれているので[a,b]ででも測度になってくれ
> てますが。これが私が[a',b]に拡張したがった理由です。

それなら, 先程述べたように, F を拡張すれば宜しい.
そうすれば, やはり μ({a}) = F(a) となることも
お確かめ下さい.

> > その単関数 ψ は連続関数では
> > ありませんが, 正数 ε について, 各点 x での値を ψ の
> > [x - ε/2, x + ε/2] での平均に置き換えたもの ψ_ε は
> 
> うーん。すいません。ちょっと意味がよく分かりませんでした。

 R 上の関数 f に対して f_ε を

  f_ε(x) = (1/ε) ∫_{x-ε/2}^{x+ε/2} f(t) dt

で定めます. 例えば f = χ_{[p, q]} に対しては
( q - p > ε として)

  f_ε(x) = 0                            (-∞ < x ≦ p - ε/2)
            (x - p + ε/2)/ε      (p - ε/2 ≦ x ≦ p + ε/2)
            1                      (p + ε/2 ≦ x ≦ q - ε/2)
            1 - (x - q + ε/2)/ε  (q - ε/2 ≦ x ≦ q + ε/2)
            0                      (q + ε/2 ≦ x < ∞)

となります.
 
>  L(f)=lim_{N→∞}lim_{ε→∞}L(ψ_ε)

 ε → 0 でないと意味がないです.

> =lim_{N→∞}Σ_{i=1}^{N-1} (min_{x∈[a+(i-1)(b-a)/N, a+i(b-a)/N]} f(x))
>            ×μ([a+(i-1)(b-a)/N, a+i(b-a)/N))
>                + (min_{x∈[a+(N-1)(b-a)/N, b]} f(x))
>                   ×μ([a+(N-1)(b-a)/N, b]
> =∫_a^b f(x) dμ(x)
> という構図になるのですね。

大雑把にはそうです.

> でも示すなるとどうなりましょうか?

そういう簡単なところも示したければ, π-system の補題を
使われれば良いでしょう. しかし, この問題の主題からは
外れます.

その意味では, この問題を考えられる段階には未だ達しては
おられないということでしょう.
-- 
塚本千秋@応用数学.基盤科学部門.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp