工繊大の塚本です.

In article <018b523f-0841-4f56-9f31-29108fd02636@v15g2000yqn.googlegroups.com>
kyokoyoshida123 <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> もとい、
> (i) F(u):=lim_{ε→0}L(f_{u,ε})と採り,Fが単調増加である事を示す。

先ずは, 極限 lim_{ε→0} L(f_{u,ε}) の存在を示すべきです.

> Lは[a,b]でpositive

 positive というのは「 f ≧ 0 on [a, b] なら L(f) ≧ 0 」
という性質でした.

>「⇔(def) [a,b]でf≧0なら,fの(任意の)積分値は非負,
> つまりどんな測度で積分してもfが非負ならその積分値も非負」
> なので任意の測度mに対して,∫_a^b f_{u,ε}dm≧0 と書ける
> (∵今,f_{u,ε}≧0なのでpositiveの定義)。

これは L: positive とは無関係です.

> u≦vならf_{u,ε}≦f_{v,ε}なので(∵μ積分の定義),

 μ 積分は無関係. u < v のとき, u + ε < v として,

  (f_{v,ε} - f_{u,ε})(x)
  = 0                   (a ≦ x ≦ u)
  = (x - u)/ε          (u ≦ x ≦ u + ε)
  = 1              (u + ε ≦ x ≦ v) 
  = 1 - (x - v)/ε      (v ≦ x ≦ v + ε)
  = 0              (v + ε ≦ x ≦ b)

により, f_{v,ε} - f_{u,ε} ≧ 0 であるというだけのことです.
 
> 0≦f_{v,ε}-f_{u,ε}∈C([a,b])なので0≦L(f_{v,ε}-f_{u,ε})(∵psitiveの定義)
> =L(f_{v,ε})-L(f_{u,ε})(∵Lは線形)。即ち,L(f_{v,ε})≦L(f_{u,ε}).
>  よってFは単調増加。

極限を取るところは良いでしょう.

> (ii) Fはnormailzed,つまり右連続である事を示す。
> ∀u∈[a,b)を採ると,
> lim_{t→u+}F(t)=lim_{t→u+}lim_{ε→0}L(f_{t,ε})
> =lim_{ε→0}L(lim_{t→u+}f_{t,ε})
> =lim_{ε→0}L(f_{u,ε}) となる予定なのですが
> lim_{t→u+}lim_{ε→0}L(f_{t,ε})から
> lim_{ε→0}L(lim_{t→u+}f_{t,ε})がどうしても言えません。
> どうすれば 言えますでしょうか?

どんな正の数 k についても, ある正の数 δ があって,
 u < x < u + δ のとき, F(u) ≦ F(x) < F(u) + k を示します.

 F(u) = lim_{ε→+0} L(f_{u,ε}) ですから,
ある正の数 ε' について, F(u) ≦ L(f_{u,ε'}) < F(u) + k/2
となります. u < x なる x について, f_{x,ε'} - f_{u,ε'} を
考えると, x < u + ε' であれば,

  (f_{x,ε'} - f_{u,ε'})(t)
  = 0                        (a ≦ t ≦ u)
  = (t - u)/ε'              (u ≦ t ≦ x)
  = (x - u)/ε'              (x ≦ t ≦ u + ε')
  = (x + ε' - t)/ε'  (u + ε' ≦ t ≦ x + ε')
  = 0                  (x + ε' ≦ t ≦ b)

ですから, 0 ≦ f_{x,ε'} - f_{u,ε'} ≦ (x - u)/ε' であり,
 C([a, b]) において, lim_{x→u+0} (f_{x,ε'} - f_{u,ε'}) = 0
ですから, lim_{x→u+0} L(f_{x,ε'} - f_{u,ε'}) = 0 です.
つまり, ある正の数 δ があって, u < x < u + δ ならば,
 0 ≦ L(f_{x,ε'} - f_{u,ε'}) < k/2 となります.
このとき,

  F(u) ≦ L(f_{u,ε') ≦ L(f_{x,ε'}) < L(f_{u,ε'} + k/2
       < F(u) + k/2 + k/2  

ですから, F(u) ≦ F(x) ≦ L(f_{x,ε'}) < F(u) + k です.

> (iii) Theorem3.5よりμ((x,y])=F(y)-F(x) (但しa≦x<y≦b)なる
> [a,b]上のBorel測度が採れる。

 F は [a, b) 上でしか定義されていません. F(b) = L(1)
として拡張しておきます. 拡張しても単調増加であることを
確かめて下さい.

又, 上の式は μ({a}) を定めないことに注意しましょう.

> その時,μ({a})=F(a)となる。。。

 μ({a}) = F(a) と定めます.

> ハズなんですよね。

もし L が μ で定義されているとすると, F(u) = μ([a, u])
となるハズです. それなら F(a) = μ([a, a]) = μ({a}) です.

> μ((c,d])=μ([a,d])-μ([a,c])=F(d)-F(c)からμ((a,d])=μ([a,d])-μ
> ([a,a])=F(d)-F(a)で
> μ({a})=μ([a,a])=μ([a,d])-F(d)+F(a)=μ({a})+μ((a,d])-F(d)+F(a)=μ({a})+F
> (d)-F(a)-F(d)+F(a)…
> でどうしてもμ({a})=F(a)が出てきません。どのように計算されたのでしょうか?

だから, 計算では出てきません. そう定めます. 
 
> あと,μ({b})=L(1)-lim_{u→b}F(u)はどうしてこのように書けるのでしょうか?

 Theorem 3.5 により ( F から定義される) μ が測度だからです.

> (iv) このLから定まったBorel測度μが有限ある事を示す。
> μ([a,b])=μ({a})+μ((a,b])=F(a)+F(b)-F(a)(∵(iii)の内容より =F(b)<∞
>  (∵Fの定義).

これは良いですね.

> (v) このμが∀f∈C([a,b])に対してL(f)=∫_a^b fμを満たす事を示す。
> fが一般の関数の時にはf=f^+-f^- (但し,f^±=max{±f(x),0}≧0)と書けるので
> 一般性を失わずにf≧0としてよい。
> すると∫_a^b fμ=lim_{n→∞}∫_a^b f_n dμなるfの定義関数列が採れる
> (∵μ積分の定義)
> = lim_{n→∞}∫_a^b Σ_{i=1}^{k,n} a_{i,n}χ_{E_{i,n}} dμと書ける
> (canonical formの定義)。
> = lim_{n→∞} Σ_{i=1}^{k,n} a_{i,n}μ(E_{i,n}) (∵単関数の積分の定義)
> = lim_{n→∞} Σ_{i=1}^{k,n} a_{i,n}μ((c_{i,n},d_{i,n}])
> (∵E_{i,n}は互いに素な半開区間になっている(∵canonical formの定義))
> = lim_{n→∞} Σ_{i=1}^{k,n} a_{i,n}(F(d_{i,n})-F(c_{i,n}])) (∵μの定義)
> = lim_{n→∞} Σ_{i=1}^{k,n} a_{i,n}
>               (lim_{ε→0}L(f_{d_{i,n},ε})-lim_{ε→0}L(f_{c_{i,n},ε}))
> (∵Fの定義)
> = lim_{n→∞} Σ_{i=1}^{k,n} a_{i,n}
>               (lim_{ε→0}L(f_{d_{i,n},ε})-L(f_{c_{i,n},ε}))
> (∵lim_{ε→0}L(f_{d_{i,n},ε})とlim_{ε→0}L(f_{c_{i,n},ε})
>  は収束値を持つのでlimの性質)
> = lim_{n→∞} Σ_{i=1}^{k,n} a_{i,n}
>               (lim_{ε→0}L(f_{d_{i,n},ε}-f_{c_{i,n},ε}))
>  (∵Lは線形)
> = lim_{n→∞} lim_{ε→0}Σ_{i=1}^{k,n} a_{i,n}
>                          (L(f_{d_{i,n},ε}-f_{c_{i,n},ε}))
> (∵limの性質)
> = lim_{n→∞} lim_{ε→0}
>          L(Σ_{i=1}^{k,n} a_{i,n}(f_{d_{i,n},ε}-f_{c_{i,n},ε}))
> (∵Lは線形)

ここまでは良いです.

> =  lim_{ε→0}lim_{n→∞}
>         L(Σ_{i=1}^{k,n} a_{i,n}(f_{d_{i,n},ε}-f_{c_{i,n},ε}))
> (∵limの性質)

そんな lim の性質はありません. ですから, 以下はでたらめですが,

> =  lim_{ε→0} L(lim_{n→∞}Σ_{i=1}^{k,n}
>                  a_{i,n}(f_{d_{i,n},ε}-f_{c_{i,n},ε}))
> (∵limの性質)

 L は C([a, b]) の位相について連続だけれど, n を増やすことが
その位相での極限を取ることに相当するかどうかは, 明らかではない.

> =  lim_{ε→0}L(lim_{n→∞}Σ_{i=1}^{k,n} a_{i,n}(F(d_{i,n})-F(c_{i,n})))
> (∵Fの定義)

 lim_{ε→+0} L(f_{u,ε}) = F(u) でした.
 L の中で f を F に書き換えるのは無意味です.
そもそも, 上の式では, L の中に入っているものは, 関数ではなく,
唯の数です.

> =  lim_{ε→0}L(lim_{n→∞}Σ_{i=1}^{k,n} a_{i,n}μ_(E_{i,n})) (∵μの定義)

ここも L の中に「数」が入っている.

> =  lim_{ε→0}L(lim_{n→∞}Σ_{i=1}^{k,n} a_{i,n}χ_{E_{i,n}})
> (∵特性関数の定義)

それがどういうわけか関数に戻っている.

> =  lim_{ε→0}L(lim_{n→∞}f_n) (∵canonical formの定義)
> =  lim_{ε→0}L(f) (∵f_nの定義)

極限を取るものから ε が消えていることに疑問を持つのが普通です.

> = L(f)
> 即ち,∫_a^b fμ=L(f)
> よって 存在性(μ∈B)が示せた。うーん、こんな感じでいいのでしょうか?

駄目ですね.

> = lim_{n→∞} lim_{ε→0}
>          L(Σ_{i=1}^{k,n} a_{i,n}(f_{d_{i,n},ε}-f_{c_{i,n},ε}))

ここから, L の中身が C([a, b]) の位相で十分に良く f を
近似すると言えれば良いのですが, それは上手くいかないよう
です. もう少し工夫が必要でしょう.

> 後の一意性は私のπ-systemの論法でも宜しいでしょうか?
> でも前記事では一意性のすごく簡単らしくおっしゃってましたが
> その簡単な方法とはどういうものでしょうか?

任意の区間の上で一致する Borel 測度が同じものである
というのは, 「当たり前」です. 任意の区間の上で一致する
ことが導かれたところで「証明終了」です.

# ま, 一般論としては, 区間の全体が, π-system で,
# Borel 集合体を生成しているので, 云々の議論と
# なるでしょうが, いまさらそんなことを繰り返しても
# 仕方がないでしょう.
-- 
塚本千秋@応用数学.基盤科学部門.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp