Re: Quiz_06iv2004(解答)
さて、問題の Bourbaki です。
M_SHIRAISHI wrote:
> # 原文で紹介しておいたほうが*迫力*があるでしょう。 ヽ(^。^)ノ
>
> il faut bien reconnaitere que la notion leibnizienne de differentielle
> n'a vrat dire aucum sens: au debut du XIX siecle, elle tomba dans discredit
> dont elle ne s'est relevee que peu a peu; et, si l'emploi des differentielles
> premiere a fini par etre completement legitime, les differentielles d'ordre
> superieur, d'un usage pourtant si commode, n'ont pas encore ete vraiment
> rehabilitees jusqu'a ce jour.
>
> 【試訳】ライプニッツ流の微分の概念は、正直いって、何ら意味を持っていなかったこと
> はよく確認しておくべきである。 19世紀の初めになると、微分の概念は信用を落とし、
> その信用は徐々にしか回復していない。一階の微分の使用は完全な正当性を得たとは言え、
> 高階の微分のほうは、今日に到る迄、用いると便利ではあるが、本当の意味では未だ再建
> されてはいないのである。
まず出典ぐらいは断るべき。これは Bourbaki といっても『原論』ではなく、
『数学史』のほう(清水・村田訳『数学史』(東京図書)の p.231)。
訳はまあ OK。
もっとも「何ら意味を持っていなかった」は(村田訳にあるように)
「正確な意味づけを持っていなかった」のほうがいいだろうし、
2行目の「微分の概念は」も「この微分の概念は」としたほうがはっきりする。
スペルミスもチェックしよう。
Rehabiliter が問題の「再建」で、これについては後で。
要するに直訳レベルではできているけど、問題はその先で、誤読・曲解の連続。
上で指摘した点もそれと関連がある。
にしてもよくまあ探してくるねえ。Cauchy のほうは「要論 (Resume..)」ですか。
こればかりは感心する。もっとも本当に感心するのは、これだけ調べておいて
内容の理解が全然できていない点なんだけど。
だけどこうして具体的に引用してもらえば(本人は自信満々なのかもしれないけど)
どこでどう間違えたのかがはっきりして結構なこと。
> # Boubaki の見解と私の見解とは、一致している点もあるにはあるけど、全面的に一致
> しているわけではないのは明らかでしょう。 Bourbakiは「(Cauchy流の一階の微分を)
> 完全に正当性を得た」と言っているのに対し、私は、Cauchy流の一階の微分の定義は
> “アホな定義”だと言ってこき下ろしているのだから。
アホかいな。
まず「「(Cauchy流の一階の微分を) 完全に正当性を得た」と言っている」
んじゃなくて、「Leibniz 流の微分が正当化された」の。
ここは一貫して、Leibniz 流の微分概念の話。
だから上でも「この微分の概念は」のように「この」を入れたほうがいいわけ。
そしてそれを正当化したのも Cauchy(だけ)というよりは、その後の展開
(線型代数的扱い等)も含めての話でしょうね。だから時間がかかったわけ。
「一致している点もあるにはあるけど」なんてのは M_SHIRAISHI 流の、
文字面だけを見て都合のよさそうなところを持ってくる勝手読み。
# この「文字面だけ見て」は M_SHIRAISHI 分析の重要キーワードの1つ。
しかしそれ以上に、他に何も調べたりしなくても、
上が論理崩壊していることがなんでわからないんだろう?
下の文を見たほうがはっきりするかな?
> 続きは無いけど、Bourbaki の言わんとしていることは明らかです:−
>
> dy:=f'(x)・△x と定義したならば、dy=f'(x)dx は、なんとか、導ける。
>
> しかし、この定義からは d^2y=f''(x)dx^2 をはじめとした高階の微分が
> 導けるわけではない。
これは M_SHIRAISHI さんの主張でしょ?
つまり「dy:=f'(x)・△x という定義」が悪いんだと。
ところがまず第一に、Bourbaki の言う「Leibniz 流一階微分の正当化」が
直接的に dy := f'(x)Δx を介しての話かは不明。
# それ以前に、そもそもここを誤読しているんだからどうしようもないけど。
『原論』をちょっと見たぐらいでははっきりしないけど、Bourbaki の
抽象化志向を考えても、むしろそうでは「ない」可能性のほうが大きい。
だからまずここがハズレ。
もっと重要なのは、Bourbaki は『前提なしに』
「高階の微分のほうは、...本当の意味では未だ再建されてはいない」
と言っているんだから、誰も「再建」できていないわけ。
だったら“アホな定義”だから再建できないのか、そもそもが不可能なのか、
わかるはずないでしょう。
「M_SHIRAISHI が世間的栄誉を得られないのは fj.sci.math が悪いからだ」
と言われたら「そりゃねーだろ」というようなもので、そもそも得られっこ
ないんだから、誰の責任でもない。
だから「dy := f'(x)Δx という定義が悪いから高階微分が導けない」
というのは M_SHIRAISHI 流の勝手読みに過ぎず(それにしてもひどい)、
Bourbaki の言っていることとは縁もゆかりもない。
この人、数学がダメなだけでなく論理もからきしダメだね。
各文を取り出しても:
> dy:=f'(x)・△x と定義したならば、dy=f'(x)dx は、なんとか、導ける。
これを M_SHIRAISHI さんは否定している(いた)わけだよね。
それ取り下げたの?それとも Bourbaki ともケンカする?
言ったように、これが Bourbaki の意図したことかさえそもそも怪しいけど。
> しかし、この定義からは d^2y=f''(x)dx^2 をはじめとした高階の微分が
> 導けるわけではない。
これがナンセンスであることはさんざん述べてきた通り。
本人は Δx = x1-x トラウマに罹ってしまったままなので、
一向に何を言われているかさえ理解できないようだけど。
ハタから見れば、M_SHIRAISHI さんは「ナンセンスな前提に立ち、
ナンセンスな議論を行えばナンセンスな結論が得られる」という
マッチポンプを自作自演しているだけ。
=========
さて、ここまでは M_SHIRAISHI 流デタラメの世界からの rehabilitation の過程で、
ようやくここからが本題。
M_SHIRAISHI wrote:
> 私も、幸か不幸か(ヽ(^。^)ノ)、N Bourbaki のメンバーではないので、彼らが
> どういう意味で「高階の微分は、厳密な意味では、再建されてはいない」と主張して
> いるのか、正確なところは、知りませんが、恐らく、『解析概論』の p.51 に書いて
> あるようなことは「認められない」と考えているからなのではないかと推察します。
「恐らく」以下は無視するとして、エラく殊勝な態度に変わったではないの。
「Bourbaki の言わんとしていることは明らかです」よりはだいぶトーンダウン
しているけど、当初の自信満々がぐらつき始めた表れでしょう。
もっとも言っていることはその通りで、何がどう再建されていないのか、
少なくとも『数学史』の範囲でははっきり書かれていない。
だから厳密に言えば、著者以外であれば(M_SHIRAISHI であろうが平賀であろうが)
推察に過ぎないわけですが、そこは自ずと数学的常識や他の典拠を踏まえているか
等々によっての違いはある。M_SHIRAISHI 論は最初からリングアウト状態。
考える前提として、冒頭の引用文の「続き」ではなく、
その前の部分を見ておく必要はあります:
「最後に、記号の形式的取り扱いに傾くという純ライプニッツ的な傾向は、
18 世紀全体を通じて、当時の解析学の手段方策が正当と認めてくれそうな
範囲を超えて、しだいに強調されるようになっていった。特に...」
(Bourbaki: 清水・村田訳「数学史」(東京図書) p.231)
「特に」以降が冒頭の「ライプニッツ流の微分の概念は...」につながるわけで、
これを踏まえれば議論の対象が Leibniz 流の微分概念の不透明さ・行きすぎと
その再構築・正当化にあることは明らか。
問題はその内容ですが、だいぶ長くなったので一旦ここで切ります。
本当の本題には入れずじまい。続きは夜以降かなあ。
Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
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