Re: 分配律で分配する側の演算
ちょっと混乱して自分なりに整理するのに苦労してたんですが……
#そもそも、こういう話を真剣に考えるのって20年ぶりくらい^_^;
どうも「普通と逆の結合律」を持ち込むのが個人的にも気色悪いし、
人に説明する上でも見通しが悪くなるような気がします。
というわけで、F.K.さんの証明を書き換えてみますね。
In article <basrmq$do9$1@caraway.media.kyoto-u.ac.jp> kuwa_fs@ybb.ne.jp writes:
>集合Rに演算+と*が定義されていて,
>+についての単位元を0,*についてに単位元を1,と記します.
だけを踏襲します^_^;
そして、通常の結合律
a * (b + c) = (a * b) + (a * c)
が成立するものとして、
「環」の定義とは逆に
+について単位的可換半群
*について可換群
とし、*についてのaの逆元を1/aとします。
次に、F.K.さんは、まず「a」について式変形した後、
>aは任意ですからa+1も任意なので,任意のaに対し,
と進めていますが、混乱の元なので、
最初から「a - 1」改め「a * 1/0」について式変形します。
#この方針を決めることで、やっと問題の本質に気付きました^_^;
>このとき,
1 = (a * 1/0) * 1/(a * 1/0)
= (a * 1/0) * ( 1/(a * 1/0) + 0 )
= ((a * 1/0) * 1/(a * 1/0)) + ((a * 1/0) * 0)
= 1 + ((a * 1/0) * 0)
= 1 + (a * (1/0 * 0))
= 1 + (a * 1)
= 1 + a
(+ について群ではない=逆元の存在が保証されていないので、
直ちに a = 0 とはなりません)
>これを用いると,任意のaに対し
a = a * 1
= a * ((1/a) + 1)
= (a * (1/a)) + (a * 1)
= 1 + a
= 1
>となり,
R={1}
>となります.
以上の証明を追ってみると、*についても+についても可換性を全く使っていません。
(使わなくても良いようにF.K.さんの理路を少し変更してあります)
+については結合律さえ使っていない。
つまり、
乗法加法の双方に単位元が存在
乗法には結合律が成立
という、「環」の定義に較べるとかなりゆるい条件の元で
通常の分配律が成立
乗法の逆元が(零元=加法単位元まで含めて)存在
とすると、系がtrivialになってしまうということですね。
「体」を定義する際に、乗法に関しては
「全体から零元を除いた集合が群になっている」としますね。
これは実数体について「零に逆数は無い」という“常識”の一般化ですから、
何の気なしに受け容れていたのですが、
この「零元を除く」という定義自体に
ここまで深刻な影響力があるということはうっかりしてました。
考えてみれば、塚本さんが「しまった.」となった集合演算についても、
どこが「環」ではないかというと「逆元不存在」が本質的ですよね。
In article <bb0206$i7a$1@caraway.media.kyoto-u.ac.jp> kuwa_fs@ybb.ne.jp writes:
>それにしても,Hayakawaさんの
>> 単位的可換半群の方の演算で分配する事はできない証明
>> といったものは可能なのでしょうか?
>という問には,環の定義を当り前に受け入れていた私は,虚を突かれました.
まあ、「てきない証明」という言い回しは的外れですけど、
問題提起としては極めて深かったということでしょうか。
戸田 孝@滋賀県立琵琶湖博物館
toda@lbm.go.jp
Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
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GnuPG Key fingerprint = 9BE6 B9E9 55A5 A499 CD51 946E 9BDC 7870 ECC8 A735