Re: 構成要件という言葉の疑問
佐々木将人@函館 です。
詳細は中野次雄「判例とその読み方」有斐閣 p10以下を御覧ください。
もしかしたら私よりわかりやすく書いているかもしれません。
>From:Fuhito Inagawa <fuhito@za.ztv.ne.jp>
>Date:2004/03/15 21:59:18 JST
>Message-ID:<c349a8$tkc$1@news.mirai.ad.jp>
>
>> 整合性の検討の結果、判例変えるべしとなれば、
>> 異なった判決を書いてもいいのが日本のシステムですが
>> そうでないシステムの国だってあります。
>
>「そうでないシステムの国」の話はしてないつもりですが?
>
>ていうか、日本はいつから判例法主義の国になってんでしょうか?
判例法主義なら「そうでないシステムの国」であって
「異なった判決を書いてもいい」ことにはなりません。
もともと判例の拘束力には段階というか種別があることを
きちんと理解しなければなりません。
(そのための「そうでないシステムの国」の話です。)
そもそも判例が特定の事件を超えて一般的に法的拘束力を持つというのは
「先例拘束の原理」
であって
この原理が適用されない場合には
一般的な「法的」拘束力は存在しません。
しかし先例拘束の原理の意味は
「同種事案においては同じ結論にならなければならない」
という意味でありますが
先例拘束の原理がない場合には
「同種事案でも同じ結論にしてはいけない」
という意味ではありません。
「同種事案で同じ結論になってもいいし別の結論になってもいい」
というだけのことです。
そして先例拘束の原理が存在しない場合の判例の拘束力は
法的拘束力には限りません。
「判例が裁判官の考え方を支配するという事実、
いいかえれば「現に裁判の先例にしたがって裁判が行われ、
また社会もそのことを期待しているという事実」」
(上記p15)
による拘束力、いわば事実上の拘束力なるものも存在しているのです。
そしてこの事実上の拘束力の根拠は
「どの裁判官にあたっても同じ裁判がなされるのでなければ不公平」
であることを前提に
「最高裁判所がするであろう判断を行うべきである」
「仮に下級裁レベルで違いが出ても
最終的にはその違いは最高裁判所で統一されるシステムである」
というところに求められるのです。
そこで振り返ってみるに
「法的に解決」の具体的手法として
「法をあてはめる」という作業が当然含まれる訳ですし
その作業には当然「法の意味内容を明らかにする」ことも含まれます。
そして「法の意味内容を明らかにする」時に
「以前どのような事件でどのような判決がなされているか」
という情報が全く意味をなさないとするのは
そもそも法の解釈方法として誤りです。
(当該事件以外には効力を持たないと明文で定められている
国際司法裁判所の判決でさえ
法の解釈において全く無意味だという見解は
国際法学の中でもスタンダードなものとは言えないでしょう。)
そうすると「法的に解決」の中には
当然過去の判例との整合性の検討が含まれるのであって
それを予断というのであれば
裁判官が法を考慮すること自体が予断なのです。
……誤った主張ということになります。
ちなみに相互に矛盾する判決はいくらでもあります。
でもそれをことさらに問題視するのは実は間違いです。
法的拘束力と事実上の拘束力が違うということがわかれば
たいていの矛盾は「事実上の拘束力」の話のはずであって
(法的拘束力なのであれば、矛盾を解消すべく法の定めがありますから。)
事実上の拘束力に強弱があり得ることは
もはや言うまでもないでしょう。
そして確かにその具体的判断は難しいのですが
たとえば一般論としてなら前述書p25以下がその基準を示しています。
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