In article <4247D7F5.3405563E@ht.sakura.ne.jp>
 IIJIMA Hiromitsu <delmonta@ht.sakura.ne.jp> writes:
> 契約書をしっかり読んでいても、あるいは読んでいることにされても、場合によ
> っては無効にできる、というのが消費者契約法の考え方です。

  あ〜。そういうことなら、

In article <4244B7FC.DCD6D6A0@ht.sakura.ne.jp>
 IIJIMA Hiromitsu <delmonta@ht.sakura.ne.jp> writes:
| 積極的に「読む人が増える」というプラスの効果がなくても、クレーマーが出た
| ときに「不満なら先に規則を読めばいいのに、あなたはそうしなかった」という
| 反論ができます。そのための担保です。

この“担保”も、「場合によっては」の条件は全く同じなのですから、同様に
無効にできるということになりますね。

  <43d46cb2.0503150404.4b12c2f9@posting.google.com> に示したとおり、消
費者(本件の場合は旅客。以下同じ)が約款を読んでいても消費者契約法の規
定により契約を無効とすることができるのは、事業者(本件の場合はJR。以
下同じ)が消費者に対し、事実と異なることを告げたとか、消費者の不利益と
なる事項を告げなかったなど(つまり、消費者が読んだ約款に誤りや嘘があっ
たような場合)、事業者に不手際があった場合に限られます。

  また、民法(民法第一編第二編第三編:明治29年法律第89号)における
“錯誤”に関する規定(第95条)も、錯誤を犯した者(本件の場合は旅客)
に重大な過失があったためであると認められる場合は対象外としています。

  再三に亘って示しているとおり、大都市近郊区間内相互発着の普通乗車券ま
たは回数乗車券による選択乗車のきまりについて記述した文書等には、必ず、
対象は普通乗車券か回数乗車券に限られるということが明記されています。仮
に、その部分だけを読まなかったのが故意ではなかったとしても、“重大な過
失”には十分該当すると考えます。

# もちろん、裁判所がどう判断するかは、私にはわかりませんが。

> いや、私は配布ではなく貼り紙を想定していました。
> 小さな駅なら1〜2枚、目立つ場所に。大きな駅ならそれなりの枚数を。
> 配布までする必要はないでしょう。

  結論は似たようなものです。一応、以下のように修正しておきます。

----------------------------------------------------------------------

  大多数の人が読まないような印刷物に、たとえ数百円〜千円であっても、運
賃や料金を充当してほしくはないです。

  それに、「駅の維持費と比べて十分に安い」という“比較”はナンセンスで
す。印刷物を掲示することで駅の維持費の全部または一部がかからなくなるわ
けではないのですから。

----------------------------------------------------------------------

  そもそも、「旅客営業規則の閲覧をご希望の方は、ご遠慮なく当社窓口にお
申し出ください」という掲示が、仮に、「その他詳細につきましては、当社の
「旅客営業規則」及び法令によります。」という掲示物を読んでその意図を理
解してくれないような人の視界に入ったとして、はたして、どれほどの効果が
あることやら。

> >   そもそも、その旅客が「湘南新宿ラインの列車は品川を通らない」と判断し
> > た根拠は何ですか。
> 車窓から品川が見えないし、地図上も品川を通っていない、では不足ですか?

  圧倒的と言うか決定的に不足です。

  湘南新宿ラインの列車が品川を通る(と見なす)か通らない(と見なす)か
は、その列車に乗車するために買うべき乗車券類の運賃,料金や効力全般に関
係し得る重要な事項です。

  そのような重要な事項が、「個々の旅客に見えるか否か」などという普遍性
が皆無でいい加減な基準によって決められているわけがありません。

  百歩譲って、もし、そんな決め方が認められているのなら、当然、旅客営業
規則などの約款に、「どの程度の視力の人が、どの時刻に、どのような気象条
件において、どの程度の速度の列車から、品川駅のどの部分が見えること」な
どのように、その基準の詳細が規定されていなければなりません。

  例えば、個々の旅客の視力によっては、「鶴見線大川支線の安善−大川間を
走る列車の車内から武蔵白石駅が見えない」などという状況も、絶対にあり得
ないとは言い切れません。

  あるいは、直線で見通せるか否かという意味でしょうか。

  その場合も、前述の場合と同様に、見通せるかどうかは、個々の旅客全員が
常に統一された判断を下すことはできませんから、誰かが(たぶん、JRが)
代表して決めて、約款に載せているはずです。

  地図の話も同じです。「地図上も品川を通っていない」ということですが、
品川駅の範囲は、いったい、どのような基準によって定義されているのですか。

  例えば、地図上で、大崎支線の、品鶴線からの分岐点(旧:蛇窪信号場)と
大崎駅との間の適当な箇所を指で差して、「実は、このあたりは品川駅の構内
なのです」などと言われたとしたら、もちろん、それは嘘なのですが、はたし
て、それが嘘であると言い切るに足る根拠を示すことができるでしょうか。

> これは「独立した営業キロが設定されており、別の線路とみなす」と判断しても
> おかしくないし、現にそう認識している人はたくさんいます。

  「たくさんいます」というのは本当ですか。

  『時刻表』の索引地図にも、駅のきっぷ売り場の運賃表の図にも、大崎支線
は描かれていません。実際の運転経路はともかく、運賃計算の上では、そのよ
うな“幽霊線”の存在を認識している人がたくさんいるとは思えないのですが。

  確かに、「別の線路であると見なされる可能性がある」と考えたとしてもお
かしくはありません。しかし、実際に乗車券類を買う際に目に入る図や文書の
どこを見ても、別の線路であるかのような記述はありませんから、全く同様に
「同じ線路であると見なされる可能性がある」とも考えられるわけであり、こ
の時点では、どちらの判断をとるべきかは、わからないはずです。

  で、「わからないことは、自分で勝手に決めたりせず、駅の係員に聞きまし
ょう」へ行き着くはずです。

> >   駅の掲示や市販の『時刻表』などのどこを見ても、「湘南新宿ラインの列車
> > は品川を通らない」などとは書かれていませんよ。
> はい。でも逆に、「通るとみなす」と断定する根拠もありません。

  ありますよ。

  『時刻表』の索引地図や、駅のきっぷ売り場の運賃表の図には、大崎支線は
描かれておらず、西大井から大崎へ至る経路の上には品川駅があります。

  これらを見て「品川駅を通ると見なす」と断定できないのだとしたら、いっ
たい、どこを通ると見なせばよいのでしょう。

# 昔、『国鉄監修 交通公社の時刻表』の索引地図に、東北本線の間々田か
#ら小山を通らないで水戸線の小田林へ至る渡り線や、鹿児島本線の黒崎から
#折尾を通らないで筑豊本線の中間へ至る渡り線(当時、陣原駅と東水巻駅と
#渡り線の折尾駅ホームはなかった)が描かれていた時期がありましたが、後
#に、どちらも抹消されました。それぞれ小山,折尾を通ると見なすというこ
#とを明示したかったためであると推定されます。

  それから、『時刻表』に掲載されているJRの営業案内の項に、『運賃計算
の特例』の一つとして、特定の分岐区間に対する区間外乗車の特例(旅客営業
取扱基準規程第149条による)についての説明があり、「西大井以遠(新川
崎方面)の各駅−品川以遠(田町方面)の各駅」の特例が載っています。この
特例が存在する理由を考えてみて下さい。

> 私は消費者契約法については「それ以外のケースでは場合によっては…」という
> 軽い意図で書いたつもりなのですが、「一般にどんなケースでも…」と誤読され
> るのは心外です。

  そもそも、その「場合によっては」の対象が

In article <42347458.E8C6C3A6@ht.sakura.ne.jp>
 IIJIMA Hiromitsu <delmonta@ht.sakura.ne.jp> writes:
| >          定期券に限らず「切符を買う」という行為は乗客が
| >         鉄道会社(等)の運送に関する約款、規則などを承認した
| >         上で運送契約を結んでいることになります。
| まあ、建前はそうなんですが、今は消費者契約法があるので、約款類の内容に
| よっては、同法を根拠にして約款にない便宜を要求される可能性もあります。

という、言わば「大原則中の大原則」だったのですから、「一般にどんなケー
スでも…」と言っていると見なされてもやむを得ないと思います。

# もっとも、読む側の主観にもよるとも思いますが。
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Yoshitaka Sugishita  杉下 宜隆  sugishit@po.ntts.co.jp