SASAKI Masato wrote:
> 
> 佐々木将人@函館 です。
> 
> >From:Keizo Matsumura <kmatsu@nr.titech.ac.jp>
> >Date:2003/10/28 16:21:47 JST
> >Message-ID:<3F9E190B.24305344@nr.titech.ac.jp>
> >
> >権利能力なき社団の管理組合が工事会社Aを損害賠償で訴えた件3件、全部この
> >法理で却下に
> >なっています。損害を受けたと思う各区分所有者が損害賠償を請求すればたりー
> >と判決されて
> >います。
> 
> ちなみに判決年月日・裁判所名示せる?
> 
> >ただ、規約で管理費は管理組合に納めるとなっています。わたしはこれは通常収
> >める先を
> >決めたのみで、訴訟での請求権(徴収権)までも決めたものではないと思いま
> >す。
> >そこをこの裁判でチェックしたい。
> 
> 管理費債権の債権者は誰で債務者は誰なのん?
> (まつむらさんの主張でかまわない。)

債権者は各区分所有者、債務者はまつむら。

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管理費請求権は、金銭債権であり、可分債権である。

本件は、民法の多数当事者の法理により、処理されねばならない。

可分債権の場合、各区分所有者が、その持分に応じて債権を有している。
管理費請求権は、各区分所有者の持分に応じて各区分所有者に分割帰属してい
る。

下は、これに関する判例である。
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判例
①東京高判平2.5.28判時1354号100頁。
(注解不動産法5区分所有法、青山正明編、青林書院、141頁)
事案で管理組合の総会で管理会社に対する損害賠償請求の訴を提起することを決
議
して、管理者が原告となって訴を提起したところ、「本件建物が共用部分であっ
たにし
ても、これが失われたことにより金銭債権である損害賠償請求権に転化すれば、
その
損害賠償請求権は……当然に各区分所有者の共有持分に応じて各区分所有者に分
割
帰属することになり、区分所有者の共同の財産としての性質は失われたものとい
うほ
かないから、これに伴い、管理者はその管理権限を失うものと解すべきであ
る。」と判
示した。

②東京地判平成8年7月15日、判時1599-79(百合ヶ丘ガーデンマンション事件)
 「……共用部分の構造的欠陥による損害賠償請求は、各区分所有者に共有持分
割合
に従って分割帰属し…」

③東京高判平成8月12月26日判時1599-79(百合ヶ丘ガーデンマンション事件)
 販売会社に対する不法行為に基づく損害賠償請求について、損害賠償請求権は
各区
分所有者に共有持分割合に従って分割帰属しており、総有的に帰属していない。

④東京地判平成9年7月29日、判時1638-98
「……損害賠償請求権は、個々の区分所有者に帰属する権利であり……損害賠償
請求
権は、損害を被ったと主張する各区分所有者が個別に行使すれば足り……」と判
示。
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 これら判例によれば、権利能力なき社団の団体には、可分債権の請求権はない
とい
うことである。各区分所有者が、分割帰属している管理費請求権を有するのであ
る。
  だからこそ、本件マンション管理組合には、区分所有法の管理者がいるので
ある。
管理者は、法により、管理費請求権を持つのである。
権利能力なき社団に管理費を請求する権限は、ない。


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文献  「新しいマンション法」法務省民事局参事官室編、商事法務研究会、5
5頁。
    管理経費の請求権の帰属と取立権者
  管理組合が権利能力のない社団の性格をもつときは、その人格なき社団に
(法律
的には、判例の考え方によれば、構成員に総有的に)帰属します。…その取立
は、…
法人格のない管理組合で管理者が置かれているときは、管理者が行うことになり
ます
(新法26条)。
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法務省民事局参事官室が「管理組合が権利能力のない社団の性格をもつときは、
…
…その取立は、……法人格のない管理組合で管理者が置かれているときは、管理
者が
行うことになります(新法26条)。と、言っているのである。
まつむらの主張と同一である。

権利能力のない社団では取立権がないからである。
それとも、法務省民事局参事官室が間違っているのか? 法務省民事局参事官室
は、
正しい。権利能力のない社団の可分債権の法理をわきまえているのである。

まつむら