佐々木将人@函館 です。

>From:Fuhito Inagawa <fuhito@mx.biwa.ne.jp>
>Date:2003/10/09 05:23:06 JST
>Message-ID:<3F84722A.6010001@mx.biwa.ne.jp>
>
>>>>撮影時に一時的に写ってはいるけど
>>>>即時処理の後捨ててしまうという感じだよね。
>>>
>>>で、それと、「シャッター切ったけど、文句を言われたから
>>>フイルムを感光させた」のとの違いを説明してくださいな。
>> 
>> 上記東京地裁の判決の立場で?
>> 私の立場で?
>
>できれば両方の立場を明確にして頂けると無用の混乱を
>招かずに済むと思うんですが。

では、それぞれ

1 東京地裁判決の立場
東京地裁判決にはこういうくだりがあります。
「Nシステム端末のテレビカメラによって、走行車両の搭乗者の容ぼう等を撮
 影し、その撮影された画像が記録、保存されているとすれば、これは、憲法
 13条の趣旨に反することになる余地があることはいうまでもない。
 しかしながら、前記1で見たように、Nシステム端末のテレビカメラによっ
 て一時的に走行車両の搭乗者の容ぼう等が撮影されるとしても、撮影された
 画像は瞬時にコンピューター処理によって走行車両のナンバープレートの文
 字データとして抽出され、容ぼう等が写っている画像そのものが記録、保存
 されることはない。
 右のようなNシステムの仕組みを前提とすれば、走行車両の搭乗者の容ぼう
 等が写っている画像そのものを人間が視覚的に認識することは一切できない
 から、Nシステム端末によって、承諾なしに、みだりにその容ぼう等を撮影
 されない自由が侵害されるものとは認められない。」
そうするとフイルムのカメラにおいては、
「撮影した画像はフイルムに記録されるもののその時点では人間が視覚的に認
 識することはできない。しかしそのフイルムを所定の手順で現像することに
 より保存され、人間が視覚的に認識することが可能になる」
システムであるところ
「シャッター切ったけど、文句を言われたからフイルムを感光させた」
例において人間が視覚的に認識することが不可能になったのは
フイルムを感光させるという
システムが予想していない行為を行ったからであり
しかもその予想していない行為は
「文句を言われた」ということによって発生したものにすぎず
文句を言われてなければ感光させずに現像まで行われることが
普通に行われていたであろうから
人間が視覚的に認識できることが一切できないどころか
可能になっていたところであるとむしろ評価すべきである。

2 私の立場
東京地裁判決自身がひいている昭和44年12月24日最高裁判決は
撮影自体を問題にし
また証拠保全の必要性・緊急性と方法の相当性をもって
違憲ではないとしているのであって
撮影したけど記録保存していないから違憲ではないという理由ではない。
そうすると撮影と認められる以上
フイルムで後で感光させようと
電子データで不要な部分を消去させたり変更させたりしようと
撮影という行為を行っている以上は問題がある点は一緒ではないのか?
もしそこに差があってNシステムが違憲ではないとするなら
「記録保存されていない」という点に求めるのではなく
他の点に求めるべきではないのか?
例えば1つに
記録保存というのを文字通りとらえるのではなく
「人間の手による介入がなされずに全てコンピューター処理されている場合は
 入力から出力までを一連不可分のものとしてとらえるべきであり
 この点からすればNシステムでは容貌は出力されてこない以上
 最初から撮影されていないと解するのが相当である
 (そしてこれは確かに「記録保存していない」とも言える)」
とした上で
撮影しその後感光したフイルムの例とは区別できるなどという理由付けに
よるべきではないのか?
もしくは別の1つに
撮影が許される場合に捜査対象外の人が写っていても違憲にはならない
という法理を
「写すべきナンバーに対象外の容貌が写っていても
 その写された容貌を捜査に利用しない限り違憲ではない」
という線まで拡張すべきではなかったのか?

ということになります。
東京地裁判決は判例時報1748号p144で読めますから
検証してみてください。

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ルフィミア「兄さん、秋休み、終わっちゃったね?」
まさと  「それ青いブレザーでキュンキュンさせながら言わないと……。」