佐々木将人@函館 です。

>From:YASUI Hiroki <jyasui@mail.ecc.u-tokyo.ac.jp>
>Date:2003/09/05 20:50:47 JST
>Message-ID:<ymrmu17rqwrs.fsf@as302.ecc.u-tokyo.ac.jp>
>
>法例11条2項によって排除されるのであれば、結局のところ、中国の「国
>内法だけでかたのつく問題です」とはならないように思うのですが…。

この話はもともと「中国の裁判所に出訴」した場合の話ですから。
日本の裁判所に出訴した時点で中国の国内法だけでかたづく訳ではないのは
これは割と明らかではないかと思います。
……どう考えても日本の民事訴訟法の適用はある訳で。

そしてポイントは結局この検討の中では
「国際法の出てくる余地はない」という点です。
日本の裁判所に出訴したところで
適用されるのは日本法と中国法という「国内法」だけです。

>“遺棄という一回限りの行為が1945年に行われた”と見なすのではなく、
>“毒物の安全な管理を行い続けるべき日本政府が今日までその義務を怠り
>続けている”と立論する線はないのでしょうか。
> # “ドラム缶に詰めての埋設は安全な管理ではない”という主張を前提
> # にした上での話になりますが…。

その主張をする場合
「本当にそれは義務か?」ってことが厳しく問われるでしょう。
危険物を埋めることに違法はないが
埋めた後の管理に違法があったというのは
国内法的にも国際法的にもかなり無理のある立論だと思います。
(国内の廃棄物処理で考えていただければよろしいかと。
 どっかで「それはそもそも埋めた時点で問題あり」か
 「管理についての無過失責任を問うている」か
 どちらかの思想が入っているように思います。)
さらに日本の実効支配が及ばなくなった時点で
なお管理を求めるというのもこれまた国際法的には問題です。

>ということは、“過失責任を問われる可能性は明白にはゼロではない”と
>見ておいた方が無難である、ということでしょうか。

私だったら
「事実認定の部分で確定できないものがあるので
 事実認定に基づく法的な評価は
 両建てでやっておく」
と考えているところです。

逆に言えば1945年時点での技術水準は
ある程度論証可能な訳です。
……単に私が知らないだけで。
そしてその論証の結果、過失の有無は(概念的には)決められます。

>ところで、報道によれば、今回の事件の処理に関して日本政府は、日中共
>同声明による賠償請求権放棄を根拠として補償請求には応じない一方、被
>害者・遺族に見舞金を出すという形で解決を図るつもりのようです。

これは私も読みました。

>言うなれば、政治的解決といったところでしょうか…。

もしくは法律上の「和解」と考えてもいいかもしれません。

もともと日本政府が私の見解に近い
「そもそも故意過失なし、国際責任も発生しない」という線か
仮にそうでないにせよ賠償権放棄という線なのか
よくわからないのですが
その法的主張は維持したまま紛争解決をはかったのであれば
まさに和解でしょう。

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