工繊大の塚本です.

In article <8ce5afed-ece7-429a-8340-382dcf93f887@h20g2000yqn.googlegroups.com>
kyokoyoshida123 <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> In article <090226182655.M0102588@cs1.kit.ac.jp>
> Tsukamoto Chiaki <chiaki@kit.ac.jp> writes:
> > 空集合が入ることも必要です.
> 
> E∈AならE^c∈AなのでE∪E^c∈Aでφ=(E∪E^c)^c∈Aだから
> φ∈Aという条件はと特に必要ではないと思いますが勘違いしてますでしょうか?

それはそうですが,

> あっ! もしかしてφ∈Aでないなら,Aが全く元を持たない場合は
> 自明な(?)集合体になってしまいますよね。

空な集合族は集合体とは呼ばないですね.

> http://www.geocities.jp/narunarunarunaru/study/algebra.jpg
> をチェックしてみました。それには
> 『A×Bが可測矩形ならいつでも互いに素な可測矩形の可算和集合に表される。
> μ_0(A×B)=Σ_{j=1}^∞μ_0(A_j×B_j)
> を示すために

いや, (可測)矩形に対して定義した μ_0 が,
(可測)矩形の disjoint な和の全体のなす集合体 A に拡張されて,
 (A, μ_0) が premeasure となる, ということは,
矩形 A×B が可算個の矩形 A_j×B_j の disjoint な和に
なっているとき, μ_0(A×B) = Σ_{j=1}^∞ μ_0(A_j×B_j)
が成立することから導かれる, として, その
「 A×B = ∪_{j=1}^∞ A_j×B_j (disjoint) ならば,
  μ_0(A×B) = Σ_{j=1}^∞ μ_0(A_j×B_j)」を示すために,

> もし,x_1∈A,x_2∈Bなら点(x_1,x_2)は
> きっかりいずれかの矩形A_j×B_jにだけ属する。
> 従って,Bはx_1において互いに素な和集合として表される』
> これは
> http://www.geocities.jp/narunarunarunaru/study/kukei.jpg
> よりBのx_1断面B^{x_1}が確かに互いに素なBのx_1断面らの和集合で
> 表される事は分かります。
> 
> 『測度μ_2の可算加法性より
> χ_A(x_1)μ_2(B)=Σ_{j=1}^∞χ_{A_j}(x_1)μ_2(B_j)
> となる』
> と説明されているのですが左辺のχ_A(x_1)は常に1だから左辺はμ_2(B)の値ですが
> 右辺はχ_{A_j}(x_1)が効いてくるので
> http://www.geocities.jp/narunarunarunaru/study/kukei.jpg
> のようにBのx_1断面B^{x_2}だけの和集合になると思います。
> よって等号は成立しないと思うのですが…。なぜ等号成立なのでしょうか?

 Web の図は全体が矩形 A×B になっていないのでまずいでしょう.
特性関数を使えば,

  χ_{A×B}(x_1, x_2) = Σ_{j=1}^∞ χ_{A_j×B_j}(x_1, x_2)

が成立しているという仮定があります. 矩形ですから,

  χ_A(x_1) χ_B(x_2) = Σ_{j=1}^∞ χ_{A_j}(x_1) χ_{B_j}(x_2)

となっており, x_1 ∈ A なら, 左辺は χ_B(x_2),
右辺は, χ_{A_j}(x_1) = 1 となるものについての χ_{B_j}(x_2) の和
になります. 要するに, B は, χ_{A_j}(x_1) = 1 となる,
高々可算個の B_j の disjoint な和ですから,

  μ_2(B) = Σ_{χ_{A_j}(x_1) = 1} μ_2(B_j)

だと言っているわけです. それを

  χ_A(x_1)μ_2(B)=Σ_{j=1}^∞χ_{A_j}(x_1)μ_2(B_j)

の式は表しています. もっと端的には, 各 x_1 を固定するごとに,

  χ_A(x_1) χ_B(x_2) = Σ_{j=1}^∞ χ_{A_j}(x_1) χ_{B_j}(x_2)

という, x_2 の関数についての等式が成り立ち,
それを x_2 について積分すると,

  χ_A(x_1) μ_2(B)
  = ∫_B χ_A(x_1) χ_B(x_2) dμ_2(x_2)
  = ∫_B Σ_{j=1}^∞ χ_{A_j}(x_1) χ_{B_j}(x_2) dμ_2(x_2)
  = Σ_{j=1}^∞ ∫_B χ_{A_j}(x_1) χ_{B_j}(x_2) dμ_2(x_2)
  = Σ_{j=1}^∞ χ_{A_j}(x_1) μ_2(B_j)

が成立するというわけです. ここで, 積分と無限和の
順序交換は, 単調収束定理を用いたとお考え下さい.

> とりあえずχ_A(x_1)μ_2(B)=Σ_{j=1}^∞χ_{A_j}μ_2(B_j)が言えたとしたら
> Monotone convergence theorem「0≦f_n∈L^1がfへの単調増加列なら
> lim_{n→∞}∫_X f_n dμ=∫_X fdμ」から
> (これはσ有限でなくても使えるんですよね),
> Σ_{j=1}^n χ_{A_j}(x_1)μ_2(B_j)は単調増加だから
> χ_A(x_1)μ_2(B)=Σ_{j=1}^∞χ_{A_j}(x_1)μ_2(B_j)の両辺の積分を採って

これは x_1 の関数としての等式ですから,
 x_1 についての積分を行うのです.

> ∫_{A×B}χ_A(x_1)μ_2(B)(μ_1×μ_2)
> =∫_B(∫_Aχ_A(x_1)μ_1)μ_2(B)μ_2
> (∵Fubiniの定理)

そうではありません. μ_2(B), μ_2(B_j) は定数ですから,

  μ_1(A) μ_2(B)
  = ∫_A χ_A(x_1) μ_2(B) dμ_1(x_1)
  = ∫_A Σ_{j=1}^∞ χ_{A_j}(x_1) μ_2(B_j) dμ_1(x_1)
  = Σ_{j=1}^∞ ∫_A χ_{A_j}(x_1) μ_2(B_j) dμ_1(x_1)
  = Σ_{j=1}^∞ μ_1(A_j) μ_2(B_j)

となるわけです.

この事実を用いて, μ_0 が A に拡張できて, premeasure と
なることを示すのには, 更に議論が必要ですが, それは
 text には書かれていませんから, 御自身でお考え下さい.
-- 
塚本千秋@応用数学.基盤科学部門.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp