塚本さん、どうもありがとうございます。返事遅れてすみません。
こちらの理解のあやふやなところを正していただくのはありがたいことです。

とりわけ:

Tsukamoto Chiaki wrote:
> 但し, このようにして得られる高階の微分の美しさは「ベクトル空間
> の開集合で定義されたベクトル値関数」という理想郷においてのみ保
> たれるので, ...

このような抽象空間での発想はどうも私はできないようで、
座標空間にへばりついています。
これまで書いたこともいろいろ修正の必要がありそうですが、
それはちょっと省略させてください。

で、お話はお話として、一方でそれをどう「着地」させるか、
つまり一般論を個別の、また言うなれば「退化」したケースにどう適用するか
(それによって納得のいく説明・理解が得られるか)はやはり気になります。

> このような設定の下で, 実数値の関数 f と ベクトル値の関数 F と
> のスカラー倍 f F の微分 d(f F) が df(×)F + f dF になる
> ことを証明し, 定ベクトル値関数 C の微分が 0 になることを示せば
> 実数上の実数値関数 f についての
>
>   d(df) = d(f' dx) = df'(×)dx + f' d(dx) = f'' dx(×)dx
>
> は自然と得られます. もっと高階のものについても同様.

これにしても、最初から「dx は定数(関数)」と言ってしまうのに比べて
聞いている側がどれだけわかった気になれるか、といったことです。
もちろん私自身が似たような言い方をしてしまっていますし、
塚本さんの直接の目的がそういった点にあるのではないでしょうが。

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似たような状況は、例えば(重積分の変数変換での)ヤコビアンの符号の
場合にも生じます。
  # おー。これは微分形式の話だ。
一応、座標系のオリエンテーションといったことは言いますし、
「ヤコビ行列の行を入れ替えたって計算している中身は同じでしょ?」
ぐらいのことも言いはしますが、では1変数の場合の
  ∫f(x) dx = ∫f(x(t)) x'(t) dt
ではなんで |x'(t)| としないのか、みたいな疑問が出てくる可能性はある。
意外と厄介ではあります。

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閑話休題。
今更ではあるかもしれませんが:
> # ちらと見た時の記憶に基づいて書くと, 「解析概論」でも
> # 点 x での微分 df は, より正確に書くと df_x, 或いは df(x),
> # いや, (df)(x) かな, は
> # 
> #   ((df)(x))(Δx) = f'(x) Δx
> # 
> # という Δx の関数であるという書き方になっていますね.
> # ()内に「 x は止めて, Δx が変数だと考える」といった
> # 記述があった筈.
> # つまり df は「関数」値関数.

見落としているかもしれませんが、『解析概論』にはそういう記述は
なかったように思います。

> そういう実数値関数でないものの「微分」を定義もなしに導入する
> とは高木貞治もエムシラ……もとい, 初学者が混乱しないようにか,
> 混乱しても構わないとしてか, 曖昧な書き進め方をした責めはある
> だろうと思います.

御意。

> 但し, このようにして得られる高階の微分の美しさは「ベクトル空間
> の開集合で定義されたベクトル値関数」という理想郷においてのみ保
> たれるので, 座標変換のある世界に一歩踏み出せば雲散霧消してしま
> うのはその通り. そこでどうするかは又別の話.

塚本さんとしては、Bourbaki の言う「本当の意味での再建」は
どのように解釈されているのでしょうか?

(平賀)