佐々木将人@函館 です。

法律論に限定するのでフォロー先はfj.soc.lawに限定しています。

>From:"Naoto Zushi" <news-admin@muzik.gr.jp>
>Date:2006/04/12 21:56:47 JST
>Message-ID:<e1itec$f0s$1@antre.cala.muzik.gr.jp>
>
> 基本的には、その説は強く支持しますし、おっしゃるとおり、投稿者
>に第一の責任があるというのももっともだし。

正直なところ投稿者に第一の責任があるということを議論することに
何の意味があるのか理解できません。
ニフティサーブ(現代思想フォーラム)事件では
書込みを行った者とシスオペとニフティが
それぞれ被告になっており
2審でも別々の判断基準を示して別々の結論を出しています。
「投稿者に責任があれば他の者は責任を負わない」
などということにはなっていません。
この点はきわめて重要です。

> で、責任論についてですが、@nifty裁判では管理者にとってかなり厳
>しい判決が出ています。

では詳しく見ていきましょう。
とりあげる判決は
「ニフティサーブ(現代思想フォーラム)事件控訴審判決」
平成13年9月5日東京高裁判決 判例タイムズ1088号p94〜
(こっちを「ニフティ2審判決」と呼ぶことにします。)
「動物病院対2ちゃんねる事件判決」
平成14年6月26日東京地裁判決 判例タイムズ1110号p92〜
(こっちを「2ちゃん判決」と呼ぶことにします。
 なお控訴されましたが控訴棄却になっていますので
 1審判決で検討します。)
を中心に
適宜ニフティ2審判決の一審にあたる
平成9年5月26日東京地裁判決 判例タイムズ947号p125〜
(以下「ニフティ1審判決」と呼ぶことにします。)
を織り交ぜながら検討します。

1 ローカルルールは外部には効力がない
fjを読み書きしている人の中にはここを致命的に勘違いしている人が相当います。
注意が必要です。
ある社会にあるルールが存在していたとしても
そのルールの存在はその社会に属しない人にはなんの効力も及ぼしません。
古くからの法格言「合意は第3者を利さず害さず」は端的にこのことを示しています。
ニフティの方は原告被告が等しくニフティの会員であること
さらには現代思想フォーラムの会員であることから
現代思想フォーラムの独自ルール(運営方針)や
ニフティの独自ルールも考慮の対象になっているのに対し
2ちゃんの方は削除ガイドラインなるものはきわめてあいまい不明確であるとし
削除ガイドラインの存在をもって被告に責任なしとする主張を
ことごとく否定しています。
「fjを読んでいればfjのルールが適用になるのだ」
という主張は明確に誤りです。
もしそういう主張が通るのであれば2ちゃんだって
「2ちゃんを読んでいればそれは2ちゃんのルールが適用になるのだ」
となって
ニフティのようにそのルールの存在が考慮の対象になったはずなのです。

2 ニフティ2審判決におけるシスオペの責任の根拠
(1)権限
会員規約により削除の権限が与えられている
一般会員は自ら削除することができない
(2)効果
削除により完全ではないものの
他の会員に触れなくして被害の拡大を防ぐことができる
(3)言論の自由についての解釈
誹謗中傷等の問題発言は、議論の深化、進展に寄与することがないばかりか、
これを阻害し、標的とされた者やこれを読む者を一様に不快とするのみで
これが削除されることによる発言者の被害等はほとんどない。
※余談ですが「contents baseな削除は言論の自由の侵害だ」ということが
 せいぜいfjのローカルルールであって
 日本の裁判所では通用しない主張なのがわかります。
(4)結論
削除する権限を有するにとどまらず
削除すべき条理上の義務を負う

3 2ちゃん判決における管理者の責任の根拠
(1)権限
削除人が削除ガイドラインに基づいて削除することができ
削除人は管理者によって適任であると判断された者が
任命されているのであるから
管理者は当然に削除する権限を有する。
さらに事実上他に管理者はいない。
発言によって名誉を毀損された者は、自ら削除できない。
(2)結論
削除の責任を負担するのは当然

> 「fjは記事の管理をしません」と言っても、多分、外には理解されな
>いと思いますし、裁判になったとき、私はそのように証明することがで
>きません。

というかこれで委員会の負け戦にならない理由付けというのが
全く思い浮かばないくらいに明らかだと思います。
・委員会はキャンセルを流すことができる
・それ以外の者は事実上流せない
・委員会以外に事実上管理者はいない
状況下でニフティ2審判決をあてはめても2ちゃん判決をあてはめても
「削除すべき条理上の義務を負うか削除の責任を負うのは当然か」
という結論以外あり得ません。

> もし、問題のある記事が出た場合、誰かが委員会にメールを出して、
>そのメールが到着した瞬間から、委員会が何らかの解決を迫られる可能
>性、下手したら連帯して不法行為責任を負うは結構高いと思います。

私もそう思います。
ニフティ1審判決ではシスオペの責任を認めていますが
(この部分は2審で破棄された。)
この損害賠償債務は不真正連帯債務であるとしています。

> 配送しているサイトへの責任ですが、基本的に私は責任を負わないと
>考えていますが、

アメリカ不法行為法では「発行者」と「配送者」を区別した上で
発行者に対しては発行で自ら名誉毀損表現をした場合と同様の責任
配送者(書店・図書館)に対しては
名誉毀損表現を「知っていた」「知る理由があった」ときのみ責任
とされていますが
日本ではやはり2ちゃん判決がプロバイダ責任制限法3条1項の責任について
「名誉毀損発言が書き込まれたことを知っていたのであり
 これにより原告らの名誉権が侵害されていることを認識し、又は、
 認識し得たのであるから、(中略)責任を免れる場合にはあたらない」
と言いましたので
ニュースサーバーの管理者も責任を追及され得ると思います。

----------------------------------------------------------------------
Talk lisp at Tea room Lisp.gc .
harmonic@lydian.club.ne.jp  佐々木将人
(This address is for NetNews.)
----------------------------------------------------------------------
ルフィミア「めがねっこは有力説!」
まさと「多数説ではないのね……(泣)」