工繊大の塚本です.

佐々木さんの話は法律論のところには問題ないけれど, それを
fjの話に当て嵌める仕方がおかしいのです.
# 一応 Followup-To: fj.news.policy

NGMPがfjのローカルルールであるというのは良いですね. そこに
書いてある「管理主体」というのもローカルルールとして読まな
いでは辻褄がありません.

# ある家の家訓に「我が家の主は日本の王である」と書いてあっ
# ても, 近所の人がその人を日本の王として扱う必要があること
# にはならない.

In article <20060414213122harmonic@lydian.club.ne.jp>
SASAKI Masato <harmonic@lydian.club.ne.jp> writes:
> 1 ローカルルールは外部には効力がない

正にその通り. で, 実際に Nifty や 2ch の裁判の対象になった
ような管理主体であるかどうかは, 実情に即して判断することに
なります. その判断の根拠が,

> というかこれで委員会の負け戦にならない理由付けというのが
> 全く思い浮かばないくらいに明らかだと思います。
> ・委員会はキャンセルを流すことができる
> ・それ以外の者は事実上流せない
> ・委員会以外に事実上管理者はいない
> 状況下でニフティ2審判決をあてはめても2ちゃん判決をあてはめても
> 「削除すべき条理上の義務を負うか削除の責任を負うのは当然か」
> という結論以外あり得ません。

これですか. えっと「委員会」というのは「fjニュースグループ
管理委員会」のことですね.

先ず, NetNews というのは, ある server がその投稿を許可した
ものの投稿した記事を配送網に送り出し, それを読者が受信して
読むという仕組みです. 記事に問題があれば, その投稿先となっ
た server の管理者が連帯して責任を負うことになっています.

注意していただきたいのは問題となるのはあくまでも個々の記事
であるということです. NetNews の特質は, 個々の記事の集まり
が一定の Forum を形作っているように見えますが, それは実は
思い込みでしかないということです. それぞれの記事の問題は
それぞれの記事にしかありません.

ですから,

> ・委員会以外に事実上管理者はいない

は間違いです. それぞれの記事の管理者は, その記事の投稿先の
 server の管理者です. 「委員会」はその管理者ではありません.

> ・委員会はキャンセルを流すことができる
> ・それ以外の者は事実上流せない

も全然根拠のない思い込みです. 何故委員会は, 他の者が流す
ことの出来ない cancel を流すことが出来るのでしょう. もし,
「委員会は管理主体だから」ということであれば, それは循環
論法ですね.

委員会の流した cancel だけを受け入れるという協定がどこか
にありますでしょうか. 協定がなくても事実上そうだというの
であれば, 上のような説が成り立つ可能性もありますが, 現実
には委員会が cancel を流したことはないので, 事実上そうだ
といったとしてもそれは全くの空論です.

そもそも cancel とは何でしょうか.

NetNews を winny と比べた人もいましたが, winny との違いは
情報の注入者, 情報の注入地点が明確であることと, cancel
によって, 情報の注入者, 注入地点の管理者が, 情報の伝播を
管理する機構が設けられていることです. 問題のある記事が
指摘されれば, それに対してその責任を負うものが cancel を
発行して(配送網のそれぞれの server がそれに従うという仮定
の下に)対処することが出来るわけです.

# 無論, 投稿者の責任はそれで終わるわけではありませんが,
# Nifty や 2ch の裁判で問われた管理者の責任については,
# 投稿者がそれ以後同様の投稿を行わないように管理することと,
# 問題のあった記事について cancel を行うことで果たされる,
# との限定がされているものと考えます.

そういうわけで, NetNews では cancel は投稿者と投稿先の
管理者がその責任に対処する道具として用意されているものと
一般的に理解されていますので, 第三者による cancel は元々
想定されておりません.

この立場に立てば, 現在の日本の法律では投稿者でも投稿先
の管理者でもないものが不用意に第三者 cancel を行うと,
その権限が与えられていないのにある server の記事を削除
しようとしたとして不正アクセス禁止法に触れる可能性もあ
ります. # ま, ないない.

現実には第三者 cancel においては, From: の成りすましを
しないとか, pseudo-path に特別な文字列 (cyberspam とか)
を入れて, 弾きたければ弾けるようにしておく, といった
作法が守られています. つまり(建前としては)第三者 cancel
は常に単なる勧告かお願いでしかないということです.

# 無論, こういった作法は不正アクセス禁止法以前からある
# ものですが, 不正アクセス禁止法を持ち出したのは, どう
# いった感覚でこういう作法が採用されているかの理解の為
# の方便とお考え下さい.

勧告やお願いに過ぎない第三者 cancel には記事についての
責任の有無を変更したり, 責任の所在を変更したりする機能
はないと考えるべきです. ということで,

> ・委員会はキャンセルを流すことができる
> ・それ以外の者は事実上流せない

というのを委員会が管理主体であることの根拠とするのは
二重に間違っています.

結局のところ第三者 cancel の問題は「ローカルルール」
に属する話と考えるのが正解でしょう.

ということで, そのローカルルールについて fj.news.policy
で議論しているわけです.
-- 
塚本千秋@応用数学.基盤科学部門.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp