Fuhito Inagawa wrote:
> 稲川です。

> 
> ん?なんか話がかみあってないことない?
> 
> 私は罪刑法定主義という「思想」は、何が犯罪で
> あるかが明確でなければならないと要請している、
> このことから、構成要件が明確でなければならない
> と言っているんですが。
> 
> で、あなたの仰るところの「罪刑法定主義そのもの」
> というのは何でしょうか?
> 
> 罪刑法定主義という「言葉そのもの」から導かれる
> もの、ということでしょうか?
> 中身の無い「言葉そのもの」からというのであれば、
> 観念論になってしまうというか、何も言っていない
> と同じということになってしまいますが?

失礼しました。説明が足らなかったようです。

わたくしが「罪刑法定主義そのもの」と言いましたのは、「罪刑法定主義」の内
容を基本的に「法律主義」と「事後法の禁止」と捉えているからです。

第一に、「法律主義」について。これは憲法31条の「法律の定める手続」によ
らなければ処罰されないという規定を受けたもので、その「手続」の中の処罰根
拠をなす実体規定も「法律」でなければならないという趣旨だと解する立場に
立っています。簡単に言えば刑法は法律の形式で定められるのが原則だと言うこ
とです。(=民主主義的要請)

第二に、「事後法の禁止」について。これは憲法39条を受けたものです。要
は、行為者が行為に出る時適法であったのに後に不適法だとされるのでは人々の
行動が自粛され、自由が束縛されるが、これはけしからんとする考えです。(=
自由主義的要請)これを裏から言えば、行為を不適法だとして処罰するには、行
為時にその不適法が知らされていなければならないと言うことにもなろう。こう
捉えたときには第一第二は同一に帰着する。なお、これは多かれ少なかれ民事法
にも言えることでは有る。(=行為の予測可能性)

第三に、刑法が他の法律と異なるのは被疑者として取り扱われるときに行為者の
負担にかなりの違いが有る点です。したがって、後の裁判で明らかにされればそ
れでいいではないかと言って済まされない場合が考えられる。これは実体法の問
題ではないけれど、実体法の時点でも考慮すべきものとして、刑罰法規の「明確
性」が要請されてくる。そこで、憲法31条の適正手続き条項の趣旨を実体規定
にまで及ぼし、「ある程度の明確性」は必要であると解する。わたくしは、これ
は、本来の罪刑法定主義の内容ではないけれども以上の理由から考慮されて然る
べきものと解している。

註)この刑罰法規の明確性は根拠・程度・誰を基準にしてのものか      
  等を考えた時、独立して取り上げ、集中して検討するのも有意      
  義であると思う。最高裁判所の判例が出ているけれども理論的      
  な詰めはきわめて不十分。我々が自由に議論することの方が価      
  値があるかも。ここではそれにとことん関わるのを避け「犯罪      
  構成要件」と他の法分野に言う「構成要件」との違いに関する      
  限りにとどめましょう。

--
one of the people in general