Re: 〔質問〕請求名称
At Sat, 08 Nov 2003 13:07:34 +0900,
in the message, <20031108130734cal@nn.iij4u.or.jp>,
cal@nn.iij4u.or.jp (SASAKI Masato) wrote
>とはいえ管理費債権の債権の性質が不可分債権なのか
>また誰が権利主体になるかについては
>確かに判例はなさそうなので
>まあその辺を争ってみるというのはありなのでしょう。
まあ争うのは確かに自由だけど、判例がないってだけで何でも争うってのも
ねぇ……。
# そういうのが極ると「法律は最高裁判例が出なければ基準にならない」なん
て発想になるんじゃないの?
>星野先生は組合の規定の準用でいくと
>「争いの元となった組合員vs他全員」になるけど
>「しかし、私は、民事訴訟法46条にあたり、
> 組合を当事者にしてよいと考えております。
> ここは権利能力なき社団的に考えてよいのではないでしょうか。」
>としています。
>
>私も個人的にはこの線に賛成で
>管理費債権が可分債権だって主張自体怪しいと思っていますが
一体どんな法律関係が問題になっているのか若干不明確ですが、星野先生は問
題となる権利ないし義務が(準)共有に状態にあるって考えているんじゃない
ですかね。
だからこそ「他全員」なわけで。
可分債権なら、「他全員」ではなくて「各組合員」になるはず。
分割できないから権利者(あるいは義務者)全員を相手にしろってことで
しょ。
……ところで、そもそも民訴法29条(旧46条)は組合にも適用されるというの
が最判昭和37年12月18日(ってーか大審院時代に既に代表者の定めがある組合
の当事者能力を認めてるくらいで。)。
そうすると、上記星野発言が昭和54年のものだとすれば'民訴法29条の問題と
しては'特に目新しい見解ではない
(有り体に言えば、今更な話。)。
そもそも民訴法29条は「当事者能力」の問題。
当事者能力が個別具体的な訴訟と無関係な一般論である以上、当該組合が民訴
法29条の適用を受ける組合に該当するかどうかだけが問題で訴訟物は原則と
して考慮する必要はない
(無論一定の訴訟物についてのみ当事者能力が認められるような特別の定めが
あれば話は別。
例えば胎児の場合、生まれたとみなされる場合以外には当事者能力がないな
ど。
しかし、組合においてそのような特別の規定はないでしょう?)。
とすれば上記星野発言は'少なくとも判例上は'とっくに認められている話
(学説上は争いのあるところではありますが。)。
要するに、
当事者能力があるかどうかは組合が民訴法29条の適用を受ける要件を充たして
いるかどうかだけの問題であって、訴訟物となるべき権利がマンション管理に
伴うものだろうがそれ以外だろうが特に区別する理由は、実体法上の特別な規
定がない限り、ない。
従って、上記星野発言の趣旨は不明だが、文字通り当事者能力を組合に認める
べきだという話なら、それは判例上既に認められていることで今更言うまでも
ない。
ということ。
しかし問題なのは実際には当事者能力ではなくて、争いとなっている権利の帰
属主体およびその態様という実体法上の問題あるいはそれを訴訟において争う
場合の当事者適格の問題
(星野発言はその前提としての組合の当事者能力に言及したという以上の意味
はないのではないかという気がします。)。
もっとも、実際の訴訟においては当事者適格とか帰属の問題とは考えずに、端
的に当事者に権利があるかどうかという問題として処理するのが高裁の立場で
あるのはかつて述べたとおり
(しかしこれは、争いとなっている権利の帰属主体が誰であるかということの
裏返しであり、当事者が実体法上帰属主体でないからこそ当事者の主張が認
められないことになる。
つまり、高裁は、訴訟物は他人に存する権利とは考えずに、それとは別の権
利と考えてその存否を判断するというやり方であるが、その不存在は事実上
の関係において他人に権利が存在することの裏返しに他ならないというこ
と。)。
そんなわけで、ここで組合の当事者能力を問題にする必然性は乏しく、その権
利が現に存在するかどうか
(あるいはその裏返しとして、誰に権利が存在するのか。)
を論じればそれで充分である。
……もっともこの問題については二年半前にあらかた説明し尽くしているんで
はっきり言って今更付け加えるような話はほとんど何もない。
> また実際上も「各区分所有者に分割して払わないと債務不履行」というのは
> 変でしょう。
更に、各区分所有者が他の区分所有者に対して有する管理費債権を相互に相殺
すれば対当額において管理費は消滅するんですがね。
そうすると、各区分所有者の負担額が同じであればみんなで相殺して全部チャ
ラになる……
(厳密にはその内の自分の分は混同により相殺を待たずに消滅する。
管理費債務というのは「常識」的には「自分も含めた」全区分所有者に対す
る義務でしょ。
だから、管理費の一部は自分自身に対して払っているのと同じ。
ならば本来債権者と債務者が同一人なので混同で消滅するはずなのにしない
のは、管理組合が法人でない場合、準総有だから持分が存在しないから混同
しようがないため
(準合有の場合も持分は一応あるがやっぱり混同で消滅はしないけど
ね。)。
持分が観念できないということは、分割が'論理的に'観念できないのだから
不可分
(持分があれば常に可分というわけではないが、持分がなければ問答無用に
不可分だということ。)。)。
具体的には区分所有者が二人いて負担する管理費がそれぞれ10000円だったと
すれば、お互いに相手に対して有する管理費債権と自分の管理費債務を相殺す
れば支払い義務がなくなると言うこと
(これも厳密には、10000円の内5000円分は自分に対する債務だから混同で消
滅して残り5000円分を相殺すると言うべき。)。
# この話は前にはしてないな。
……それこそ、
> それでいいならそもそも管理費なる概念を設ける必要はないもん。
> 管理に要した具体的な費用を個別に割り振ればいいだけでしょ。)
の通り。
加えて、この場合に、債権者は誰を相手に請求するのかって考えるとそれは結
局、
>仮に可分債権としても権利能力なき社団名で
>訴訟上請求できるものと解するのが相当だと思います。
の裏返しでしょう。
まさか個別に全員に請求するのかね……。
# 可分なら他人の分は請求できない。
全員を個別にまたは共同被告として訴えなければならないけど、必要的共同
訴訟ではなさそうなのでそうすると、判決が合一確定しない可能性も大あ
り。
……それでいいのかねぇ?
--
SUZUKI Wataru
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