Shinji KONO wrote:
> 例えば、ドイツが、
> 
>     ユダヤ人虐殺はなかった
>     ヒットラーの墓に、首相や大統領が公式参拝する
> 
> っていうのと同等です。細かい議論は、あまり関係なくって、そう
> いうように利用されてしまうわけ。もちろん、ドイツがそんなこと
> すれば、ドイツの常任理事国入りなんて、ふっとんでしまう。

そんなおり、ドイツじゃドイツ人の手によるヒトラー映画 "Der Untergang"(陥
落) <http://www.deruntergang-special.film.de/> というのが封切りになりま
した。 ヒトラー最後の13日間の苦悩というやつを描写したんだそうですが、
これまで、第二次大戦に関するドイツ人の罪の意識を全部ぶちこんで密封してお
いた「ヒトラー」という名の箱を、ドイツ人自信が開ける気になったということ
のようです。 (ヒトラーの著書「我が闘争」は今でもドイツでは発禁)

ドイツは政府として周辺国に過去の清算をいろいろやっているわけですが、実際
には、国民の精神的な問題は全部ヒトラーひとり(と、NAZI幹部)におしつけ
て、それで心の平安を保ってきた側面があるわけです。つまり、過去の精神的な
ある部分をそっくりえぐり取ってヒトラーと言う名の棺桶にいれて埋めてしまう
ことで、過去と自分を切り離して考えることができていたわけですが、そこに埋
めてしまったものの中になにか大切なものがありはしないか、と掘り起こし始め
たわけです。(なんだかいかにもドイツっぽいエグい話ですが)

ドイツは切り離したものの回復へとむかっているわけですが、ひるがえって日本
の場合、ドイツのような過去の切り離し方も事実上できなかったし、その精神的
な部分も国家的には肯定も否定もせずずっとひきずってきているわけです。そう
いう意味じゃドイツよりも平穏に、葛藤なくやってきたといえるかもしれません
が、その「平穏さ」ゆえに、「首相の靖国公式参拝」も「平穏]にうけとめられ
てしまうし、そのことで「何にも変わってないじゃないか」と中国あたりから非
難されて気分を害しても、一方では中国からの観光客誘致に笑顔をふりまいてい
る温泉地があったりして、何がいったい「国益」なんだかわからない状態です。

そういう状態だから、首相も「パフォーマンス」をわりと葛藤なく演じられるん
でしょう。小泉首相の場合、靖国問題と常任理事国入り問題は、別にどちらかを
取り下げなければならないものだとは思えないらしいですが、それは戦後これま
での経緯を見れば、自然といってもいいなりゆきです。

萩原@グリフィス大学