佐々木将人@函館 です。

>From:SUZUKI Wataru <omegafactor@anet.ne.jp>
>Date:2003/09/11 23:31:56 JST
>Message-ID:<3f607d69.5569%omegafactor@anet.ne.jp>
>
>そもそも「置き忘れる場合に人混みかどうかなど置き忘れる人間は意識してい
>ない」「占有は占有者と物の関係を示すもの」なのに、「占有者と物の関係が
>占有者と物とは別の周囲の状況で変るとすること自体が本来おかしい」と言っ
>てるのだけどね。

どこがおかしいの?
(この点、実は後で述べる点に集約されるのでそっちで述べます。)

>At Sat, 08 Feb 2003 23:11:01 +0900,
>in the message, <3e4508d5.3425%omegafactor@anet.ne.jp>,
>SUZUKI Wataru <omegafactor@anet.ne.jp> wrote
>|と考えるなら、バス待ち客の判例の事例だって置き忘れているのは同じ。
>|しかもこの事例は、「混雑するバス待合所内」の事例。
>|          ~~~~~~~
>です。
>「混雑」してても占有はあります。
>だったら「人混みの中でもある場合はある」でしょ。
>混雑と人混みとどう違うの?

なるほど。

>いわば占有の有無は、行為者の立場から見た主観的な占有者と物との関係、
>で決めると。
>つまり占有は客観的に決るものではない。

その要件が加わっている可能性
(もっとも「占有者が物を置き忘れるのを行為者が待っていた」のに
 占有離脱物というのはいかにもおかしいので
 何らかの理由付けが必要なところ
 特殊な場合による特殊な理由付けって感じがするのだが……。)
は否定しないけど……。

おおもとの問題としては金沢支部判決は
「その物に対する支配力を推及するに相当な場所的時間的範囲内」
「所有者の支配意思が明確にみとめられる」
2要件を示しているという2月9日の私の指摘に対して
「所有者の支配意思が明確にみとめられる」は必須の条件ではないとするのが
4月1日のすずきさんの主張だ。
で、その根拠として
大コンメンタールp195が出てくる。

で、私は
「所有者の支配意思が明確にみとめられる」の要件がないなら
占有離脱物横領罪と窃盗罪の区別はできないのではないか
両罪の区別の基準を4月1日に問うたところ
4月18日に
「当然占有の有無
(今論じているのは、占有の有無の判断基準であって占有の有無によって決 
 る窃盗と占有離脱物横領の区別などではない。)。」
ということになった訳だ。
さらにこれに続いて
「とすれば、「支配意思が明確に認められなくても状況によって占有を認めてい
る」と考えるべきだ。」
って見解が示されている訳で……。

でもこの見解は私が4月19日に金沢支部判決の事案が
「まさに「占有の有無」を論じて
 おそらくは常習累犯窃盗を認めた原審に対し
 「占有離脱物横領こそが成立する以上、常習累犯窃盗は成立しない。」
 という弁護人主張を蹴った
 (おそらくと書いたのは判例原文にあたってないからで
  論理的に考えればこれしかないと思う。)」
と指摘。
この事案でもし
「支配意思が明確に認められれば占有を認める」
「支配意思が明確に認められなくても状況によって占有を認めている」
というのであれば
占有の判断基準は支配意思以外の別の何かってことになるし
その別の何かを端的に示して
弁護人の「占有はなかった」という主張を蹴ればいいでしょう。
だからこそ
6月5日の私の
「A and(B or C)が要件だというなら
 この判決が「AかつBまたはC」が要件であることを示さないで
 端的に「AかつB」と書いたのはなぜ?」
になるんだけど
結局これに対するすずきさんの応答は
8月3日の
「それ以上書いたところで結論に全く影響しないので書くだけ無駄だから。」
という評価になる。
評価なものだから私も8月4日に
「私はそう思わない」でてっきり終わったと思ってたんだけどね……。

実際その別の何かについてすずきさんは大コンメンタールp195で
ある程度類型化されているって言っているんだけど
それならどうして金沢支部判決がその類型化の方をとらなかったのか。
この点はやはりすずきさんは
「それ以上書いたところで結論に全く影響しないので書くだけ無駄だから。」
な訳だけど
私はそうは思わない。
なぜそう思わないかというと
A and(B or C)が要件なのに
A and Bと書くのは正確性に欠け理由として不備だからです。
Cを特定する必要まではないけど
Cが存在し得るところまでは書かないといけない。
それ書かなかったんだから
あとは「この判決のこの部分は採用できない」とするか
「要件はA and BでCは無関係だとするのがこの判決」
とするかなんです。
当然私は「要件はA and BでCは無関係だとするのがこの判決」のり。

そしてこの話からすれば

>大コンメンタール刑法の分析が間違っているという主張ならその根拠を示して
>下さい。
>あるいは大コンメンタール刑法のわたしの理解がおかしいというならその場所
>と根拠を示して下さい。

どちらかはわかりませんが
金沢支部判決はどちらかだという立場なのです。
(「支配意思が明確に認められなくても状況によって占有を認めている」は
 採用していない。)

以上のとおりで私の主張はきちんと整理されて既に示されています。
それを

># 最近、佐々木<cal@nn.iij4u.or.jp>さんも根拠も論証しないで流すことが少
> なくないね。

というのであれば自分の納得できないことを
「相手が論証してない」と言っているだけで
現に納得させていない以上は……。
少なくないどころかそりゃあたいてい論証してないなあ……。

>>|しかして、その物がなお占有者の支配内にあるというを得るか否かは
>>|通常人ならば何人も首肯するであろうところの社会通念によって決するの外はない。
>>としているし
>>私は金沢支部判決がその具体的な基準を示したものだと
>>理解しています。
>
>その点は同意するけど、それだけが唯一の基準だという点は同意しかねるとい
>うこと。
>
>そもそも、どこにも「それが唯一絶対の基準だ」とする根拠はありません。
>根拠があるならそれを「はっきり」示して下さい。

それは論理として変。
「金沢支部判決はそういう意味ではない」というなら理解可能。
「金沢支部判決はそういう意味かもしれないが
 そうだとすれば別のこの判決の示す意味内容と矛盾する」というのも理解可能だし
その場合は「別に矛盾しないよ」と言う必要があると思うけど
「金沢支部判決はそういう意味だがそれが唯一絶対の基準でない。」
というのは既に強弁。
これは金沢支部判決の部分に複数の判決を入れたところで
「○○○○はそういう意味だがそれが唯一絶対の基準でない。」
と言うこと自体はいくらでも可能であることから明らか。
そしてそうであるにもかかわらず「唯一絶対であることを示せ」というのは
他の基準が「ない」ことを示せというので
法律学の約束に反しています。

どのくらい変かといえば
例えば上の刑法大コンメンタールの記述について
「それは唯一絶対の基準でない。唯一絶対だという根拠があるなら
 それを「はっきり」示してください。」
と言っているのと一緒。

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ルフィミア「お兄ちゃん、もうすぐ秋休みだよ。」
まさと  「それ黄色いリボンつけて言わないとわかりにくい……。」