佐々木将人@函館 です。

どう考えても通説判例の線でなくなるし
刑法プロパーの議論になりそうなので
fj.sci.lawにもふってフォロー先はそっちのみ

>From:Yasuyuki Nagashima <yasu-n@horae.dti.ne.jp>
>Date:2003/07/18 23:35:28 JST
>Message-ID:<bf90h9$35i$1@newsl.dti.ne.jp>
>
>判例の説明では分からなかった、と言う点とあわせて、
>佐々木さんにとっては腑に落ちない説明なのか、
>だとすればどの部分がそうなのか…
>もしよろしければ、教えていただけますか?

まず

>>>「(特別刑法を含む)刑法は、行為を処罰の対象にする。
>>> ある行為がその後定常的な状態を生むとしても、
>>> あくまで処罰する対象は行為であり、状態ではない」
>>>ってときに、割と交通違反は「ある定常的な状態」を
>>>生みやすいことにあるのではないか、と…

という部分ですが
これは刑法学ではきちんと概念として整理していまして
即成犯……法益侵害によって既遂に達しかつ終了するもの(殺人罪等)
継続犯……法益侵害によって既遂に達しているがそれで終了する訳ではなく
     法益侵害状態が継続する限り犯罪事実としても継続するもの
     継続してしている限り1罪(監禁罪等)
状態犯……法益侵害によって既遂に達しておりそれで終了するもの。
     法益侵害状態はその後も続くものであるが
     構成要件の中でそのことを予想しているのがポイント(窃盗罪等)
そして上の「定常的な状態」というのは継続犯にも状態犯にも言えるところ
もし状態犯だとすると
「運転しはじめた時点で」という説明は矛盾しないんだけど
継続犯だとすればその説明はそもそも理由にならないのです。
だって事故時にも酒酔い運転について道路交通法違反罪の実行行為中な訳で
交通事故を起こす行為と社会的に見て1個の行為と評価できるなら
観念的競合になるのです。
……しかもスピード違反については「即成犯」だっていうのが判例だし。

で、わからない根本原因は何かというと
そもそも昭和49年5月29日最高裁判決は
「法的評価を離れ社会的に見て1個の行為なら観念的競合、
 そうでなければ併合罪」
というのを言っているわけで(その上での各論な訳だ)
酒酔い運転をして事故を起こす行為が
「社会的に見て1個の行為」と見る理由が
「酒飲んで無免許運転するっしょ?
 そうするとキーをまわしてエンジンかかって車動いた時点で
 もう酒酔い運転と無免許運転は既に既遂に達しているでしょ。
 しかも同時に。
 だから観念的競合になるの。
 そして業務上過失致死傷罪は
 既に酒酔い運転について既遂に達しており
 その状態が継続しているにすぎない者が
 新たに事故を起こした結果成立する犯罪であるから
 犯罪成立後に起こした新たな犯罪なんで観念的競合にならない。
 よって併合罪。」
って言うなら
それって法的評価を離れてないやん。

これを裏付ける事実として
実際に酒酔い運転と業務上過失傷害とを起訴する場合の
起訴状の標準的な形として
「酒酔い運転を開始した時点の日時場所」をもって特定するのではなく
まさに事故を起こした時点の日時場所をもって特定しているのですよ。
人間は同じ時刻・場所で社会的に見て複数の行為ができるもんなの?
それに運転開始時に既遂に達しているなら
事故を起こした時点では既遂に達しているのであって
その時点で行為を行ったことにはならないんじゃないの?

ってあたりがどうにもよくわからないのだよ。

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