長島です。
えらく遅くなりましたが、ようやく少し時間をかけて
問題の判決文をよく読んでみました。

In article <20030720105235cal@nn.iij4u.or.jp>,
cal@nn.iij4u.or.jp (SASAKI Masato) wrote:

>即成犯……法益侵害によって既遂に達しかつ終了するもの(殺人罪等)
>継続犯……法益侵害によって既遂に達しているがそれで終了する訳ではなく
>     法益侵害状態が継続する限り犯罪事実としても継続するもの
>     継続してしている限り1罪(監禁罪等)
>状態犯……法益侵害によって既遂に達しておりそれで終了するもの。
>     法益侵害状態はその後も続くものであるが
>     構成要件の中でそのことを予想しているのがポイント(窃盗罪等)
>そして上の「定常的な状態」というのは継続犯にも状態犯にも言えるところ
>もし状態犯だとすると
>「運転しはじめた時点で」という説明は矛盾しないんだけど
>継続犯だとすればその説明はそもそも理由にならないのです。

この点は了解です。

>だって事故時にも酒酔い運転について道路交通法違反罪の実行行為中な訳で
>交通事故を起こす行為と社会的に見て1個の行為と評価できるなら
>観念的競合になるのです。

これが問題になるわけですが…

>そもそも昭和49年5月29日最高裁判決は
>「法的評価を離れ社会的に見て1個の行為なら観念的競合、
> そうでなければ併合罪」
>というのを言っているわけで(その上での各論な訳だ)

これも了解です。

そして、判例はその基準に照らした上で
「酒酔い運転と業務上過失致死傷は併合罪」の判断をしていますが、
その判断は私が当初考えていたよりもずっと単純で、
「酒酔い運転は時間的場所的に見て継続的。
 でも事故を起こす行為は一時点一場所。
 社会的にこれを一緒とは考えないでしょ。
 だから併合罪」
ってな感じのようですね。

この判例では補足意見・反対意見も出ていまして、
岡原反対意見では
「事故を起す運転が
 「運転継続中における一時点一場所における事象」であるといっても、
 自動車が若干の時間をかけて、いくらかの距離を移動しなければ
 事故は発生しないのであって、
 しかもその間、事故の原因である過失そのものである
 酒酔運転という全く同一形態の行為が続いている」
…との判断が示されており、私もこっちに近い意見なんですが、
この意見こそが

>それって法的評価を離れてないやん。

と批判されているみたいなんですよねぇ…。

>それに運転開始時に既遂に達しているなら
>事故を起こした時点では既遂に達しているのであって
>その時点で行為を行ったことにはならないんじゃないの?

判例は、酒酔い運転が継続犯であること自体は
特に疑問を持っていないようです。
で、岡原反対意見は、多数意見の
「酒酔い運転は時間的場所的に見て継続的。
 でも事故を起こす行為は一時点一場所。
 社会的にこれを一緒とは考えないでしょ。
 だから併合罪」
って判断に対して
「一般的な継続犯と即成犯の関係を単純に導入しているだけじゃないのか。
 だったら、ブレーキが効かない車を、そうだと知っていて運転して
 その結果ブレーキが効かず事故を起こして他人を怪我させても
 道交法違反と業務上過失致傷の併合罪を取るのか」
と批判していますが、
岸補足意見で「いや、単に事実を社会的観点から評価しただけだ」
と反論されています。

とはいえ、この事例の場合は、個人的には
たとえ事故を起こした行為は酒酔い運転と独立と考えるのは
かなり無理があるんじゃないかと考えるものでして…
そういう意味では岡原反対意見のほうが納得できるというのが
正直な感想です。

------------------------------------------- 
Yasuyuki Nagashima 
yasu-n@horae.dti.ne.jp
-------------------------------------------