佐々木将人@函館 です。

>From:Shiro <h9shiro@tky2.3web.ne.jp>
>Date:2003/06/07 04:42:32 JST
>Message-ID:<bbqqqf$qi3$1@usj.3web.ne.jp>
>
>一 存在しない債権を請求する事は犯罪にならないのか。

自分で存在しないとわかっているのに
あたかも存在しているように装って
相手に「存在しているなら払わなきゃいかんな」と信じさせて
その結果としてお金をgetすれば
これは立派に詐欺罪になりますし
仮に相手が払わないとしても
実行の着手が相手に請求する行為に認められるので
詐欺未遂罪となります。

ポイントは2つで
第1は「自分で存在しないとわかっている」という点
存在すると思い込んでいれば詐欺罪にはなりません。
第2は相手の方で
「もし本当のことがわかっていたら払わなかった」
という事情が存在していること
教科書事例としては
相手の方で
「債権なぞないのがわかっていたけど
 請求してきた人がかわいそうで
 お金をあげた」
場合には詐欺罪ではなく詐欺未遂罪になるということです。
「面倒だから払った」というのは結構微妙ですね。
たいていは「面倒なことにまきこまれたくない」というものであれば
詐欺(既遂)罪成立でいいと思うのですが……。

>二 コンテンツ事業者名、利用日時が書いてない請求書は、
>  請求書として有効なのか。 

請求書として有効かどうかというのを議論しても
法的にはあまり意味はないと思います。
すなわちもし本当に債権があるのであれば
請求書があろうとなかろうと払わなきゃいけない訳でして
請求の有無で法律上の効果が変わる訳ではないのです。
例外としては
・消滅時効
  請求書を送った後6か月以内に裁判を起こせば
  請求書を送った時点で消滅時効の進行が中断される
・期限の定めのない債務
  期限を定めてないんだから「払え」と言わないとだめ
そしてこれら例外の場合には
「誰と誰との間のどんな契約に基づく金額がこれだけの債権」
であれば十分なんで
利用日時がいちいち書いてないから無効とまでは言えないでしょう。
  
>三 有料だと明示されていなかったが実は有料だった場合、
>  支払の義務はあるのか。

ものによります。
たとえば高級料亭にはたいてい有料であることの明示はないけど
「有料でないことの明示がないから有料だとは思わなかった。」
なんてえのは通らないでしょう。
そりゃあいくらなんでも「無料」と思うのが非常識。

だから世間的にどう考えているかってえのが基準になるでしょう。

そこで考えて見るにインターネット上の各種情報を見るために
たとえばIDとパスワードによる認証すらなくして見ることができる場合には
それは無料だと考えられているでしょうから
そういうものを「実は有料です」と言っても
これは通らないと思います。
この場合は「有料で情報を提供する」「有料で情報の提供を受ける」
という当事者間での意思の合致が全然ないんで契約が不成立、
契約が不成立であれば債権債務も発生しないという説明になりますが
まあ物の道理で考えても同じ結論になると思います。
一方見るためには一定の手続が必要である場合には
微妙でしょうね。
意思の合致がないから契約不成立というのが原則なんですが
先の高級料亭の例のように
「そこを利用することは有料だと思うのが当たり前」であれば
そこを利用する行為自体で有料で利用する意思があったとされるでしょう。

ただですね。通常の商売人が有料であるにもかかわらず
後払いでいいというからには
それなりの経済原理が働くからでして
例えばとある健康センターでは館内の利用について腕輪のバーコードで管理し
退館時に精算するというシステムをとっている訳だけど
これが可能なのは
「たいていは後で払ってもらえるだろう」と思っていることと
精算しないと靴ロッカーの鍵を返さないことによって
逃げられないようなシステムを確立していることの両方によりますね。
(加えて払わない人は警察に突き出すと。)
でもインターネットの場合だと
商売人の立場で考えると客が払ってくれるかどうかの確証がないんで
基本的には先払いにしたり
クレジットカード等の決済にしたり
後払いにしても個人情報をできるだけ集めようとするでしょう?
そしてもし合法的な手順で回収しようとするなら
相手の居場所をつきとめて裁判所の手続を利用しなきゃならない。
そう考えれば普通後払いにはしませんわな……。
……そうするとまだ「有料が原則」って状況とは言えないかも。

知らないところから後払いの請求が来たら
裁判所の手続にのるまで無視を決め込むというのも
健全な常識だと思うけどなあ……。
……裁判所から連絡が来たらこれは無視してはいけない。

……十万円以下ならやっちゃんだって動かないと思う。
 (やっちゃん自体がやっている場合は別だけど
  それだって警察に通報されるリスクや
  通報されなくても自分自身にかかる費用を考えたら
  getできたって赤字ってえのにやるかい……と。)

こういうのって
「めんどうくさいから払ってしまえ」ってえ人が結構いるんで
成り立っているだけなんだよね。
「いかに相手の所に行かないで振り込ませるか」ってだけの勝負。

最後に……
債権回収を業としてやるなら債権回収会社としての認可を受けないとだめ。
認可を受けたところはその認可を示すはずだ……。
(貸金業者がその登録番号を示すのと一緒)

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ルフィミア「私のアンソロ本を書くって本当?」
まさと  「それ、微妙に間違っている……。」