工繊大の塚本です.

In article <k2o7lb$nc3$1@dont-email.me>
"Kyoko Yoshida" <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> In article <120903222634.M0327209@ras2.kit.ac.jp>
> Tsukamoto Chiaki <chiaki@kit.ac.jp> writes:
> > # ところで, involution という言葉の意味は御存じですか.
> 
> はい、"累乗"という意味ですよね。

その用法は obsolete です. 複素数ベキの所で使われる
こともないでしょう.

> > 更に, \Gamma(s/2) は s = 0, -2, -4, -6, \dots で
> > 一位の極を持つのであって, s = -1, -3, -5, \dots では正則です.
> > \zeta(0) = - 1/2 ですが, s = -2, -4, -6, \dots で \zeta(s) が
> > 一位の零点を持つことは既に知っている筈ですね.
> 
> すっすみません。早速,ζ(s)が一位零点を持つ事を
> http://www.geocities.jp/a_k_i_k_o928346/prop192_102285__00.jpg
> http://www.geocities.jp/a_k_i_k_o928346/prop205_2999__00.pdf
> として確かめようと試みたのですが
> [2]の因子がs=0,-1,-2,…で一位の零点を持ち,

 1/\Gamma(s) は非正の整数の s で一位の零点を持ちます.

> [6]の因子ではs=1,0,-1,-2が一位の極となる事までは分かったのですが

 \int_0^\infty u^{s-1} \exp(-u)/(1 - \exp(-u)) du を解析接続した
関数は, s = 1, 0, -1, -2, \dots, で一位の極を持ちます.

> ここからどうすれば
> 1/\xCE^S(s)
> (Σ_{n=0}^∞(-1)^nB_n(1)/(n!(s+n-1))+∫_1^∞exp(-u)u^{s-1}/(1-exp(-u))du)
> がs=-2,-4,-6,…で一位の零点を持つ事が分かるのでしょうか?

別の所で, その積の非正の整数 s = 1 - n (n は自然数)での値が
 - n B_n(1) = - n B_n であることを見た筈です.
 n が 3 以上の奇数であれば B_n = 0 です.

> これが分かったら
> http://www.geocities.jp/a_k_i_k_o928346/prop209__01.jpg
> と上手くいきました。

「数論1」の定理 3.18 (1) を復習しましょう.

> http://www.geocities.jp/a_k_i_k_o928346/prop211_3__00.jpg
> となり,等式が成立しないのですが、、

それは x^{1/2} x^{-s/2-1} を x^{-s/4-1/2} などとしているからです.
 x^a x^b = x^{a+b} であって, x^{ab} ではありません.

> また
> http://www.geocities.jp/a_k_i_k_o928346/prop211_3__01.jpg
> http://www.geocities.jp/a_k_i_k_o928346/prop211_3__02.jpg
> と両辺とも開いてみたのですが一致しません。
> 何処で勘違いしておりますでしょうか?

全部同じ間違いですね.

> http://www.geocities.jp/a_k_i_k_o928346/theorem1_2__01.pdf
> と一応なりましたが(このような方針でいいのですよね?),

最後の所で積分が出来ていないのと,
途中が全く間違っていることを除けば,
方針としてはそうでしょう.

> 4ページの上から9行目の
> ∫_0^∞Σ_{n=1}^∞exp(-πn^2x)x^{s/2-1}
> =∫_0^∞Σ_{n=1}^∞x^{s/2-1}exp(-x)(πn^2)^{-s/2}
> の変形と

そんな変形が出来るわけがないでしょう.

> 4ページの下から4行目の
> Σ_{n=1}∫_0^∞x^{s/2}exp((s/2)ln(1/(πn^2))-x)dx/x
> =Σ_{n=1}^∞∫_0^∞x^{s/2}exp(-πn^2x)dx/x
> と下から3行目の広義積分でも項別積分が成立つ事はどうすればいえるのでしょうか?

どうして途中で項別積分に変える必要があるのですか.
そういう変形はしません.

  \pi^{-s/2} (\int_0^\infty x^{s/2 - 1} \exp(-x) dx)(\sum_{n=1}^\infty 1/n^s)
  = \sum_{n=1}^\infty (\int_0^\infty (x/(\pi n)^2)^{s/2} \exp(-x) dx/x)
  = \sum_{n=1}^\infty (\int_0^\infty x^{s/2} \exp(- \pi n^2 x) dx/x)

という項別積分を

  = \int_0^\infty (\sum_{n=1}^\infty \exp(- \pi n^2 x)) x^{s/2 - 1} dx

という積分に書き換えるところでは, Lebesgue の定理でも使わないと
いけないでしょうが, 一旦書き換えた後は項別積分に戻すことは
しません.

因みに「数論2」では Re(s) > 1 においてこう書き換えることができると
していますが, \exp(- \pi n^2 x) \leq \exp(- \pi n x) 位の
評価では, \sum_{n=1}^\infty \exp(- \pi n^2 x)
 \leq \exp(- \pi x)/(1 - \exp(- \pi x)) としかなりませんから,
 Re(s) > 2 でないと, Lebesgue の定理が使えません.
どうせ解析接続した形に付いての等式が言えれば良いのですから,
 Re(s) > 2 として示しておくのが良いでしょう.
 
> http://www.geocities.jp/a_k_i_k_o928346/prop209__01.jpg
> にても解析接続できる事は分かりましたが,

それは \hat{\zeta}(s) = \pi^{-s/2} \Gamma(s/2) \zeta(s)
という Re(s) > 1 での定義の式から, 一歩も進んでいませんね.

> これからどうやって
> ζ^(s)=ζ^(1-s)が成立つ事に結び付けれるのでしょうか?

  \psi(x) = \sum_{n=1}^\infty \exp(- \pi n^2 x)

とおくとき, 任意の複素数 s について

  \hat{\zeta}(s)
  = 1/(s(s-1)) + \int_1^\infty \psi(x) (x^{s/2} + x^{(1-s)/2}) dx/x

であることを示したので, それを用いて考えるのです.
 Re(s) > 2 では

  \pi^{-s/2} (\int_0^\infty x^{s/2 - 1} \exp(-x) dx)(\sum_{n=1}^\infty 1/n^s)
  = 1/(s(s-1)) + \int_1^\infty \psi(x) (x^{s/2} + x^{(1-s)/2}) dx/x

が項別積分の一本化やら, Poisson summation formula やらを用いて
示されます. 右辺の積分は任意の複素数 s について正則な関数を
表していますから, 左辺を全複素数平面に解析接続した
 \hat{\zeta}(s) = \pi^{-s/2} \Gamma(s/2) \zeta(s)
と右辺は(有理形関数として)全複素数平面で一致します.

> 少なくともRe(s)>1にてζ^(s)=ζ^(1-s)が成立つ事を言わねばなりませんよね。でも
> http://www.geocities.jp/a_k_i_k_o928346/theorem1_2__01.pdf
> のように頓挫しております。 

あとは

  \hat{\zeta}(1-s)
  = 1/((1-s)((1-s)-1))
    + \int_1^\infty \psi(x) (x^{(1-s)/2} + x^{(1-(1-s))/2}) dx/x
  = 1/((s-1)s)
    + \int_1^\infty \psi(x) (x^{(1-s)/2} + x^{s/2}) dx/x
  = \hat{\zeta}(s)

で御仕舞です.
-- 
塚本千秋@数理・自然部門.基盤科学系.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp