工繊大の塚本です.

In article <322e5fc9-4176-4b93-af4a-e020e9768888@u26g2000vby.googlegroups.com>
KyokoYoshida <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> aはNからCへの写像の事でa_nはnのaによる像a(n)を意味するので
> a_n={0},特に原像が単集合の場合は中括弧を省略してa_n=0と書く。
> そしてaの原像全体Nの像a(N)もa(N)={0}と書けますよね
> (複数個の原像の像の中括弧は省略できない)。

今, a(N) という集合を考える状況にありません.

> とずっと思っていたのですが因みに「集合・位相入門(松坂和夫著)」では
> http://beauty.geocities.jp/yuka26076/study/Number_Theory/def_sequence.jpg
> と説明されていて,

そこに数列 (松坂では (a_n)_{n \in N}) とその写像としての
値域 (松坂では { a_n }_{n \in N}) とは混同しないように,
と書いてあるではないですか. 注釈として, 通常の微積分学の
書物では (a_n)_{n \in N} を { a_n } (正確には, 私は,
 { a_n }_{n=1}^\infty と書いています) と表すことが多い
(まあ, 好ましくない, としていますが, それは値域を
考慮する必要がある, ごく稀な場合に問題になるだけなので,
無用の注意だと思います), とも書いてあるではないですか.

どんな数列についても, ということを表したい時に,
数列の写像としての値域を持ち出すのが間違っています.

> やはりa_nは像を表すので{ a_n }_{n=1}^∞={0}と書けるのではないでしょうか?

今は, 数列を問題としているので, 数列の写像としての値域を
問題とはしていません. そう書くのは (a_n)_{n \in N} と
 { a_n }_{n \in N} との混同です.
 
> 所で実数関数ln(1+x),2xにて不等式|ln(1 + x)|≦2|x|が成立てば
> 複素関数|ln(1+z)|≦2|z|でも成立つとどうして言えるのでしょうか?

それはごもっとも. z は複素数でしたね.
有限増分の不等式から, |z| \leq 1/2 のとき,

  |\log(1 + z)|
   = |\log(1 + z) - \log(1)|
   \leq (max_{0 \leq t \leq 1} |1/(1 + t z)|) |(1+z) - 1|
   \leq 1/(1 - 1/2) |z| = 2|z|

とするべきでした.

> つまり
> 『Letφ≠A,B⊂C and Map(A,B)⊃{f_n}n∈N be holomorphic on D⊂A.  Then
> lim_{n→∞}f_n is also holomorphic on D』という命題があるのですね。

その収束が(広義)一様収束であるとき, です.
 106 page の定理 5.3 をお読み下さい.
 
> In article <110601214046.M0120365@ras2.kit.ac.jp>
> Tsukamoto Chiaki <chiaki@kit.ac.jp> writes:
> > # 絶対収束するだけでなく一様収束でもあることが大事です.
> 
> 上の命題で必要ですものね。

必要なことはちゃんと書いておきましょう.
 
> > 一方, \log は連続関数ですから,
> >  g(z)
> >   = \sum_{n=N}^\infty \log(1 + u_n(z))
> >   = \lim_{M \to \infty} \sum_{n=N}^M \log(1 + u_n(z))
> >   = \lim_{M \to \infty} \log(\prod_{n=N}^M (1 + u_n(z)))
> >   = \log(\lim_{M \to \infty} \prod_{n=N}^M (1 + u_n(z)))
> > であり,
> >  \exp(g(z))
> >   = \exp(\log(\lim_{M \to \infty} \prod_{n=N}^M (1 + u_n(z))))
> >   = \lim_{M \to \infty} \prod_{n=N}^M (1 + u_n(z))
> > です.
> 
> そうですね。この変形は分かりますがこれからどうやって
> 絶対収束性が分かるのでしょうか?

 |u_n(z)| \leq M_n で, \sum_{n=1}^\infty M_n が収束するなら,
 \sum_{n=N}^\infty \log(1 + u_n(z)) が絶対収束し, 一様収束する
ことは Weierstrass の優級数判定法を用いて既に示しました.
それが \prod_{n=N}^\infty (1 + u_n(z)) が, そして,
 \prod_{n=1}^\infty (1 + u_n(z)) が絶対収束するということの意味です.

> 今,exp(Σ_{n=N}^∞Ln(1+u_n(z)))=Σ_{k=0}^∞(Σ_{n=N}^∞Ln(1+u_n(z))^k/k!
> (∵expのTaylor展開公式)だから
> exp(Σ_{n=N}^∞Ln(1+u_n(z)))のD上での絶対収束性を言うには
> Σ_{k=0}^∞|(Σ_{n=N}^∞Ln(1+u_n(z))^k/k!|が
> D上で収束する事を言わねばなりませんよね。

そんな必要はありません. 言葉の定義がどうなっているか,
もう一度 111 page からの (a) 無限積 の内容をお読み下さい.

> > 正則関数の無限和 \sum_{n=N}^\infty \log(1 + u_n(z)) が
> > 一様収束すれば, その導関数の無限和 \sum_{n=1}^\infty (\log(1 + u_n(z)))'
> > も一様収束し, (\sum_{n=1}^\infty \log(1 + u_n(z)))' に等しいことは,
> > 106 page の定理 5.3 で証明されています.
> 
> 『Σ_{n=N}^∞ d/dz(1+u_n(z))がD上で一様収束するなら
> Σ_{n=N}^∞(1+u_n(z))は項別微分可能で
> d/dzΣ_{n=N}^∞(1+u_n(z))=Σ_{n=N}^∞ d/dz(1+u_n(z))』
> という命題は使えないのでしょうか?

 (1 + u_n(z)) ではなくて \log(1 + u_n(z)) ですね.
正則関数 \log(1 + u_n(z)) については,
その和が一様収束していれば,
 (d/dz) \log(1 + u_n(z)) の和の一様収束性を議論しなくて済むのが, 
この議論の肝心な点です. (d/dz) \log(1 + u_n(z)) の和が
自動的に一様収束することを, 定理 5.3 の証明を読んで
確かめて下さい.

> 定理 5.12 の (iii) を使うと
> f(z):=πzΠ_{n=1}^∞(1-z^2/n^2),u_n(z):=-z^2/n^2と置くと,
        ここに (\pi z) が付いています.

  \log f(z) = \log(\pi z) + \log(\prod_{n=1}^\infty (1 - z^2/n^2))

ですから,

  f'(z)/f(z)
   = (d/dz)(\log f(z))
   = \pi/(\pi z) + \sum_{n=1}^\infty (- 2 z/n^2)/(1 - z^2/n^2).

> f(z)'/f(z)=Σ_{n=1}^∞u_n(z)'/(1+u_n(z))より
> f(z)'/f(z)=Σ_{n=1}^∞2z/(z^2-n^2)となり,
> f(z)'/f(z)=1/z+Σ_{n=1}^∞2zn^2/(z^2-n^2)とはならないのですが、
> 何処を間違ってますでしょうか?

 (\pi z) を無視してはいけません.

> > f(z) = \sin(\pi z) = (\pi z) \prod_{n=1}^\infty (1 - z^2/n^2)
> > に対しては,
> >  f'(z)/f(z)
> >   = (d/dz)(\log(f(z)))
> >   = (d/dz)(\log((\pi z) \prod_{n=1}^\infty (1 - z^2/n^2)))
> >   = (d/dz)(\log(\pi z) + \log(\prod_{n=1}^\infty(1 - z^2/n^2)))
> >   = (d/dz)(\log(\pi z)) + (d/dz)(\log(\prod_{n=1}^\infty(1 - z^2/n^2)))
> >   = 1/z + \sum_{n=1}^\infty (- 2z)/(1 - z^2/n^2)

失礼. = 1/z + \sum_{n=1}^\infty (- 2z/n^2)/(1 - z^2/n^2) です.

> >   = 1/z + \sum_{n=1}^\infty 2z/(z^2 - n^2)

これは正しい.

> > となります.
> 
> http://beauty.geocities.jp/yuka26076/study/Number_Theory/theorem5_13__02.jpg
> となったのですが
> 最後は,1/z + \sum_{n=1}^\infty 2zn^2/(z^2 - n^2)ではないのでしょうか?

少しの書き間違いを修正できないようでは駄目です.

> 所で1/z+d/dz lnΠ_{n=1}^∞(1-z^2/n^2)=1/z+Σ_{n=1}^∞d/dz ln(1-z^2/n^2)
> で項別対数微分を使ってあるのですよね。
> でも定理 5.12の(iii)の主張はf(z)'/f(z)=Σ_{n=1}^∞u_n(z)'/(1+u_n(z))
> という式変形が出来るという事
> だけですよね。これからどうして項別対数微分が成立つという主張が
> 読み取れるのでしょうか?

実際 (d/dz)(\log(1 + u_n(z))) = (u_n'(z))/(1 + u_n(z)) ですから,
項別対数微分ではありませんか.

> > 違います. 任意の正数 R について, |z| \leq R で一様収束です.
> > 複素平面全体では *広義* 一様収束です.
> 
> 複素平面では一様収束になれない理由は何なのでしょうか?

 \sum_{n=1}^\infty R^2/n^2 の第 N 項からの後の誤差項
 |\sum_{n=N}^\infty R^2/n^2| は R^2 に比例するので,
同じ正数で一様に抑えることはできません.
-- 
塚本千秋@数理・自然部門.基盤科学系.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp