Re: Ramanujanの和の等式の証明
工繊大の塚本です.
n^s = \sum_{d|n} \phi_s(d) となることの証明において,
In article <0c77abf0-92a6-45f1-862a-d2a6895ec5ad@f18g2000yqd.googlegroups.com>
KyokoYoshida <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> In article <110210175126.M0217089@ras1.kit.ac.jp>
> Tsukamoto Chiaki <chiaki@kit.ac.jp> writes:
> > n の素因数分解を
> > n = (p_1)^{e_1} (p_2)^{e_2} \cdots (p_r)^{e_r}
> > とすると,
> > \sum_{d|n} \phi_s(d)
> > = \sum_{f_1=0}^{e_1} \sum_{f_2=0}^{e_2} \cdots \sum_{f_r=0}^{e_r}
> > \phi_s((p_1)^{f_1} (p_2)^{f_2} \cdots (p_r)^{f_r})
>
> すいません。
> http://beauty.geocities.jp/yuka26076/study/Number_Theory/Lemma1_1_vi_prime_01.jpg
又, n/[f, g] などという訳の分からない式を書いている.
d は n の約数を動く変数に過ぎません. 分かりませんか.
> 2行目の変形の理由が分かりません。どうしてでしょうか?
n = (p_1)^{e_1} (p_2)^{e_2} \cdots (p_r)^{e_r} となっていれば,
その約数 d とは, 0 \leq f_1 \leq e_1, 0 \leq f_2 \leq e_2, \dots,
0 \leq f_r \leq e_r となる f_1, f_2, \dots, f_r についての
d = (p_1)^{f_1} (p_2)^{f_2} \cdots (p_r)^{f_r} の形の自然数に
他なりません. 従って,
\sum_{d|n} \phi_s(d)
= \sum_{f_1=0}^{e_1} \sum_{f_2=0}^{e_2} \cdots \sum_{f_r=0}^{e_r}
\phi_s((p_1)^{f_1} (p_2)^{f_2} \cdots (p_r)^{f_r})
となりますが, ここで \phi_s の定義式,
(紛れないように, n でなく N としておきましょう)
\phi_s(N) = N^s \prod_{p: prime, p|N} (1 - p^{-s})
を N = (p_1)^{f_1} (p_2)^{f_2} \cdots (p_r)^{f_r} に対して
適用すれば,
\sum_{d|n} \phi_s(d)
= \sum_{f_1=0}^{e_1} \sum_{f_2=0}^{e_2} \cdots \sum_{f_r=0}^{e_r}
((p_1)^{f_1} (p_2)^{f_2} \cdots (p_r)^{f_r})^s \times
\prod_{p: prime, p|((p_1)^{f_1} (p_2)^{f_2} \cdots (p_r)^{f_r})}
(1 - p^{-s})
となります.
> > d は (f, g) の約数全体を動く変数と言うだけの意味で,
> > n/[f, g] とは無関係です.
>
> 了解いたしました。
\sum_{d|n} の d でも同じような誤りを犯すというのでは,
了解したというのには程遠いでしょう.
> > { (f, g, D) \in N^3 ; D|(f, g) } の条件 D|(f, g) は
> > 「 D|f かつ D|g 」ということですから,
> > 同じ D を持つ (f, g, D) の全体は,
> > f, g が共に D の倍数 f = f'D, g = g'D となるときの (f, g, D),
> > つまり, (f'D, g'D, D) の全体です. ですから,
> > \sum_{f=1}^\infty \sum_{g=1}^\infty \sum_{D|(f, g)} の和は
> > \sum_{D=1}^\infty \sum_{f'=1}^\finty \sum_{g'=1}^\infty の和に
> > 置き換えられます.
>
> http://beauty.geocities.jp/yuka26076/study/Number_Theory/Lemma1_1_vi_06.jpg
> という風に書きかえれました。
私の行った書き換えとは似ても似つかないものですね.
CD というのは common divisor のつもりですか.
それなら CD(GCD(f, g)) は変だと思いませんか.
f, g を固定した時には, D | (f, g) となる D は
有限個ですから, \sum_{CD(GCD(f, g) \ni D = 1}^\infty も
変だとは思いませんか.
f, g を色々と取り替えると, D | (f, g) となる D としては
任意の自然数が出て来ます.
その時に, 同じ D の値がでてくる f, g を纏めようとする訳です.
だから,
\zeta(s) \times
\sum_{f=1}^\infty \sum_{g=1}^\infty
f^{\alpha-s} g^{\beta-s} \times
\sum_{D|(f, g)} D^s \prod_{p: prime, p|D} (1 - p^{-s})
= \zeta(s) \times
\sum_{D=1}^\infty \sum_{D|f} \sum_{D|g}
f^{\alpha-s} g^{\beta-s} D^s \prod_{p: prime, p|D} (1 - p^{-s})
という書き換えになります. ここで D は f, g による制約なしに
全ての自然数を動いていくわけです. だから,
\sum_{CD{GCD{f, g}} \ni d = 1}^\infty などという書き方は
全くの間違いです. \sum_{f/GCD{f, g} = 1}^\infty も
\sum_{g/GCD{f, g}=1}^\infty も何処からそういう話が出て来るのか
分からない, 酷い間違いです.
> でも
> ζ(s)Σ_{f=1}^∞Σ_{g=1}^∞f^{α-s}g^{β-s}Σ_{d=1}^∞d^sΠ_{p|d}(1-p^-s)
> から
> ζ(s)Σ_{d=1}^∞Σ_{f'=1}^∞Σ_{g'=1}f^{α-s}g^{β-s}d^sΠ_{p|d}(1-p^-s)
> と書き直す時に各Σの部分が絶対収束するという保障が無ければ
> Σの順序は入れ替えれないのでしたよね。
> 絶対収束するという保障はどこから来るのでしょうか?
絶対値を取ったものがある足し合わせ方について収束する
ことを示せば宜しい. それを実行するのは貴方の責務の一部です.
実は最終的な結果には,
実軸上の一定の範囲で(絶対収束して)成立することを
確かめるので十分なので,
s が実数であるという仮定の下で考えるので十分です.
> > = \zeta(s) \zeta(s-\alpha) \zeta(s-\beta) \times
> > \sum_{d=1}^\infty \prod_{p|d} ((1 - p^{-s}) p^{e(d,p)(\alpha+\beta-s))
> > となります, ここで p は prime を表し,
> > d = \prod_{p|d} p^{e(d, p)} で, e(d, p) を決めました.
> > この最後の和は無限乗積の展開になっています.
> > = \zeta(s) \zeta(s-\alpha) \zeta(s-\beta) \times
> > \prod_{p: prime}(1 + (1 - p^{-s})(\sum_{j=1}^\infty
> > p^{(\alpha+\beta-s)j}))
>
> http://beauty.geocities.jp/yuka26076/study/Number_Theory/Lemma1_1_vi_07.jpg
> となるんですよね。これは何の公式を使われたのでしょうか?
公式なんてありません.
\prod_{p: prime} (1 + (1 - p^{-s})(\sum_{j=1}^\infty p^{(\alpha+\beta-s)j}))
= (1 + (1 - 2^{-s})2^{\alpha+\beta-s} + (1 - 2^{-s})2^{2(\alpha+\beta-s)}
+ (1 - 2^{-s})2^{3(\alpha+\beta-s)} + \cdots )
\times
(1 + (1 - 3^{-s})3^{\alpha+\beta-s} + (1 - 3^{-s})3^{2(\alpha+\beta-s)}
+ (1 - 3^{-s})3^{3(\alpha+\beta-s)} + \cdots )
\times
(1 + (1 - 5^{-s})5^{\alpha+\beta-s} + (1 - 5^{-s})5^{2(\alpha+\beta-s)}
+ (1 - 5^{-s})5^{3(\alpha+\beta-s)} + \cdots )
\times
(1 + (1 - 7^{-s})7^{\alpha+\beta-s} + (1 - 7^{-s})7^{2(\alpha+\beta-s)}
+ (1 - 7^{-s})7^{3(\alpha+\beta-s)} + \cdots )
\times
\cdots
というのを展開すると,
2, 3, 5, 7, \dots, それぞれの素数 p のところから
1 か (1 - p^{-s}) p^{e(\alpha+\beta-s)} の形の項のどれか
を選んで掛け合わせた,
(1 - (p_1)^{-s}) (p_1)^{e_1(\alpha+\beta-s)}
\times (1 - (p_2)^{-s}) (p_2)^{e_2(\alpha+\beta-s)}
\times \cdots
\times (1 - (p_r)^{-s}) (p_r)^{e_r(\alpha+\beta-s)}
の形の項の和になるでしょう. 上の項で
d = (p_1)^{e_1} (p_2)^{e_2} \cdots (p_r)^{e_r}
と置けば, d としては全ての自然数がちょうど一回ずつ出て来ます.
そうして, p|d となる素数は p_1, p_2, \dots, p_r ですから,
上の項は
d^{\alpha+\beta-s} \prod_{p: prime, p|d} (1 - p^{-s})
になります. だから, (下から逆算して)
\zeta(s) \zeta(s-\alpha) \zeta(s-\beta) \times
\sum_{d=1}^\infty d^{\alpha+\beta-s} \prod_{p|d} (1 - p^{-s})
= \zeta(s) \zeta(s-\alpha) \zeta(s-\beta) \times
\sum_{d=1}^\infty \prod_{p|d} ((1 - p^{-s}) p^{e(d,p)(\alpha+\beta-s))
= \zeta(s) \zeta(s-\alpha) \zeta(s-\beta) \times
\prod_{p: prime} (1 + (1 - p^{-s})(\sum_{j=1}^\infty p^{(\alpha+\beta-s)j}))
となるわけです.
--
塚本千秋@数理・自然部門.基盤科学系.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp
Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
GnuPG Key ID = ECC8A735
GnuPG Key fingerprint = 9BE6 B9E9 55A5 A499 CD51 946E 9BDC 7870 ECC8 A735