Re: Ramanujanの和の等式の証明
工繊大の塚本です.
> In article <110128182214.M0125074@ras1.kit.ac.jp>
> Tsukamoto Chiaki <chiaki@kit.ac.jp> writes:
> > = \sum_{n=1}^\infty (\sum_{d|n} d^\alpha)/n^s
> > = \sum_{n=1}^\infty \sigma_\alpha(n)/n^s
> > が Re(s) > 1 かつ Re(s-\alpha) > 1 で成立します.
>
> どうしてこの変形ができるのでしょうか?
ん? \sigma_\alpha(n) = \sum_{d|n} d^\alpha は
定義そのものですね.
> > = \sum_{n_1, n_2 = 1}^\infty (n_2)^\alpha/(n_1 n_2)^s
> >
> > ここで, n = n_1 n_2, d = n_2 とすれば,
> >
> > = \sum_{n=1}^\infty (\sum_{d|n} d^\alpha)/n^s
は分かっているのですよね.
Ramanujan 和の性質は既に学ばれているのだと思いますが,
> Σ_{l|k}c_l(n)=Σ_{h=1}^k exp(nh/k)の変形の所が分かりません。
e(nh/k) = \exp(2 \pi i n h / k) です.
> Σ_{l|k}c_l(n)=Σ_{l|k}Σ_{h∈{1,2,…,n},GCD{h,n}=1}exp(2π√(-1)hl/n)から
c_\ell(n) の定義が間違っています.
> どうしてΣ_{h=1}^k exp(nh/k)となるのでしょうか?
Ramanujan 和の定義から,
c_\ell(n)
= \sum_{(m, \ell) = 1, 0 < m \leq \ell} \exp(2 \pi i n m / \ell)
ですから,
\sum_{\ell|k} c_\ell(n)
= \sum_{\ell|k} \sum_{(m, \ell) = 1, 0 < m \leq \ell}
\exp(2 \pi i n m (k/\ell) / k)
ですが, ここで, m (k/\ell) = h とおけば, 上の和では
0 < h \leq k なる h がちょうど一度ずつ現れます.
何故なら, (m, \ell) = 1 なる m, \ell について, m k = \ell h,
つまり, m (k/(k, h)) (k, h) = \ell (h/(k, h)) (k, h)
が成立するのは, m = h / (h, k), \ell = k / (h, k) のときのみ
であるからです. 和は
= \sum_{h=1}^k \exp(2 \pi i n h / k)
となります.
> > = k (if k|n)
> > 0 (otherwise)
> > が理解出来ているとすれば,
>
> ここもΣ_{h=1}^k exp(nh/k)からどうしてこれが言えるのでしょうか?
k | n なら, 任意の自然数 h について
\exp(2 \pi i n h / k) = 1 ですから
\sum_{h=1}^k \exp(2 \pi i n h / k) = k
です. そうでなければ, \exp(2 \pi i n h / k) \neq 1 ですが,
\sum_{h=1}^k \exp(2 \pi i n h / k)
= \exp(2 \pi i n / k) \sum_{h=0}^{k-1} \exp(2 \pi i n h / k)
= \exp(2 \pi i n / k) \sum_{h=1}^k \exp(2 \pi i n h / k)
より \sum_{h=1}^k \exp(2 \pi i n h / k) = 0 が導かれます.
# というのを知っていないと指標の話も始まりません.
> > \sum_{k=1}^\infty k^{-s} \sum_{\ell|k} c_\ell(n)
> > = \sum_{k=1}^\infty (k \times k^{-s} if k|n, 0 otherwise)
>
> ここがわかりません。
> Σ_{k=1}^∞k^-sΣ_{l|k}c_l(n)=Σ_{k=1}^∞k^-sΣ_{l|k}Σ_{h∈{1,2,…,n},GCD{h,n}
> =1}exp(2π√(-1)hl/n)
> (∵c_l(n)の定義)
だからその式は間違っていますが, ともあれ,
\sum_{\ell|k} c_\ell(n) = (k if k|n, 0 otherwise)
なのですから,
> からどうして
> Σ_{k=1}^∞k・k^-s (if k|n), 0 (if otherwise)
> が言えるのでしょうか?
\sum_{k=1}^\infty k^{-1} \sum_{\ell|k} c_\ell(n)
= \sum_{k=1}^\infty k^{-s} \times (k if k|n, 0 otherwise)
としただけですね.
# テキストで, 「この両辺に k^{-s} を乗じて和をとり」
# と書いてある通り.
> > 一方,
> > (\sum_{m=1}^\infty 1/m^s)(\sum_{\ell=1}^\infty c_\ell(n)/\ell^s)
> > = \sum_{m, \ell = 1}^\infty c_\ell(n)/(m \ell)^s
> > で, m \ell = k と置けば,
> > = \sum_{k=1}^\infty (\sum_{\ell|k} c_\ell(n)/k^s)
>
> 最後の\sum_{k=1}^\infty (\sum_{\ell|k} c_\ell(n)/k^s)とできる理由が
> 分かりません。
任意の 2 つの自然数 m, \ell の組と,
任意の自然数 k とその約数 \ell の組とは,
k = m \ell, m = k / \ell で, 一対一対応します.
前者についての和は後者についての和に置き換えられます.
> > となりますから,
> > \zeta(s) (\sum_{\ell=1}^\infty c_\ell(n)/\ell^s)
> > = \sigma_{1-s}(n)
>
> ここも
> \zeta(s) (\sum_{\ell=1}^\infty c_\ell(n)/\ell^s)
> =Σ_{n=1}^∞1/n^s(\sum_{\ell=1}^\infty c_\ell(n)/\ell^s)から
> σ_{1-s}(n)とどうしてなるのでしょうか?
\zeta(s) (\sum_{\ell=1}^\infty c_\ell(n)/\ell^s)
= (\sum_{m=1}^\infty 1/m^s)(\sum_{\ell=1}^\infty c_\ell(n)/\ell^s)
= \sum_{k=1}^\infty (\sum_{\ell|k} c_\ell(n) / k^s)
= \sum_{k=1}^\infty 1/k^s \sum_{\ell|k} c_\ell(n)
という変形と, 先にしめしておいた,
\sum_{k=1}^\infty k^{-s} \sum_{\ell|k} c_\ell(n)
= \sum_{k=1}^\infty (k^{1-s} if k|n, 0 otherwise)
= \sum_{k|n} k^{1-s}
= \sigma_{1-s}(n)
を繋げただけです.
> ところで
> \sum_{\ell|k} c_\ell(n) = \sum_{h=1}^k e(nh/k)
> \sum_{k=1}^\infty k^{-s} \sum_{\ell|k} c_\ell(n)
> = \sum_{k=1}^\infty (k \times k^{-s} if k|n, 0 otherwise)
> \sum_{k|n} k^{1-s}= \sigma_{1-s}(n)
> (\sum_{m=1}^\infty 1/m^s)(\sum_{\ell=1}^\infty c_\ell(n)/\ell^s)
> = \sum_{k=1}^\infty (\sum_{\ell|k} c_\ell(n)/k^s)
> \zeta(s) (\sum_{\ell=1}^\infty c_\ell(n)/\ell^s)= \sigma_{1-s}(n)
> にどのように貢献しているのでしょうか?
一歩ずつ書いてあります. ちゃんと考えて下さい.
> > 順次変形して行くだけです.
> > \sum_{n=1}^\infty \simga_\alpha(n) \sigma_\beta(n) / n^s
> > = \sum_{n=1}^\infty 1/n^s \sum_{f|n} f^\alpha \sum_{g|n} g^\beta
> > = \sum_{f=1}^\infty \sum_{g=1}^\infty \sum_{[f, g]|n}
> > f^\alpha g^\beta / n^s
> > ここは, f|n, g|n となる n は [f, g]|n となる n であることを
> > 用いて和の順序変更をしています.
>
> 意味がよく分かりません。どのように順序変更しているのでしょうか?
自然数 n とその約数 f および g の組は,
二つの自然数 f, g とその公倍数 n の組と
一対一に対応するので,
後者についての和に取り替えています.
> > = \sum_{f=1}^\infty \sum_{g=1}^\infty \sum_{d=1}^\infty
> > f^\alpha g^\beta / ([f, g] d)^s
>
> Σ_{f=1}^∞Σ_{g=1}Σ_{LCM{f,g}|n}f^αg^α/n^s
> =Σ_{f=1}^∞Σ_{g=1}Σ_{n/LCM{f,g}=1}f^αg^α/n^s
> の変形はどうしてできるのでしょうか?
二つの自然数 f, g の公倍数 n の全体は
f, g の最小公倍数 [f, g] の倍数の全体ですから,
n についての和を
n = [f, g] d となる自然数 d についての和に
書き直しただけです.
> > となりますね. (1.11) を用いて, (f, g)^s を
> > \sum_{d|(f,g)} \phi_s(d) に置き換えれば,
>
> Σ_{d|n}φ_s(d)=n^sですよね。
それは任意の自然数 n について成立します.
# その証明は貴方に任されています.
> これからどうしてGCD{f,g}^s=Σ_{d|GCD{f,g}}d^sΠ_{p|n}(1-p^-s)
> が言えるのでしょうか?
n = (f, g) について適用すれば,
(f, g)^s
= \sum_{d|(f, g)} \phi_s(d)
= \sum_{d|(f, g)} d^s \prod_{p|d} (1 - p^{-s})
となります. 最後の等式は \phi_s(d) の定義式を代入しただけです.
なお, 貴方の式は間違って n が入っています.
> それとΣ_{d=1}1/d^s=Σ_{n=1}1/n^sが成り立つのはどうしてでしょうか?
s の関数として, \sum_{d=1} 1/d^s と
\sum_{n=1} 1/n^s とが異なると思う理由は何ですか.
> > = \zeta(s) \times
> > \sum_{f=1}^\infty \sum_{g=1}^\infty f^{\alpha-s} g^{\beta-s} \times
> > (\sum_{d|(f, g)} \phi_s(d))
> > f = d f', g = d g' とすれば,
> > = \zeta(s) \times
> > \sum_{d=1}^\infty \sum_{f'=1}^\infty \sum_{g'=1}^\infty
> > (d f')^{\alpha-s} (d g')^{\beta-s} \phi_s(d)
>
> ここで\sum_{d=1}^\inftyの部分が突然現れてきているのは何故なのでしょうか?
二つの自然数 f, g とその最大公約数 (f, g) の約数 d との組 (f, g, d) と
一つの自然数 d とその倍数二つ f, g との組 (f, g, d) とは, 又,
一つの自然数 d と二つの自然数 f', g' との組 (f', g', d) とは,
一対一に対応するからです.
\sum_{f=1}^\infty \sum_{g=1}^\infty \sum_{d|(f,g)}
\xE3^B^R
\sum_{d=1}^\infty \sum_{f'=1}^\infty \sum_{g'=1}^\infty
に書き直しただけです.
> > = \zeta(s) \times
> > (\sum_{f'=1}^\infty f'^{\alpha-s})(\sum_{g'=1}^\infty g'^{\beta-s})
> > \times (\sum_{d=1}^\infty \phi_s(d) d^{\alpha+\beta-2s})
>
> この変形もどうしてなのでしょうか?
ひょっとして何も考えていませんか.
(d f')^{\alpha-s} (d g')^{\beta-s} \phi_s(d)
= f'^{\alpha-s} g'^{\beta-s} d^{\alpha+\beta-2s} \phi_s(d)
は分かりますか. \sum_{f'=1}^\infty を先に計算すれば,
他の和では定数となる \sum_{f'=1}^\infty f'^{\alpha-s}
が括り出せる, といったことは分かりますか.
> > = \zeta(s) \zeta(s-\alpha) \zeta(s-\beta) \times
> > \sum_{d=1}^\infty d^s \prod_{p|d} (1 - p^{-s}) d^{\alpha+\beta-2s}
> > = \zeta(s) \zeta(s-\alpha) \zeta(s-\beta) \times
> > \sum_{d=1}^\infty \prod_{p|d} ((1 - p^{-s}) p^{e(d,p)(\alpha+\beta-s))
> > となります, ここで p は prime を表し,
> > d = \prod_{p|d} p^{e(d, p)} で, e(d, p) を決めました.
>
> e(d,p)の記号の意味がいまいち把握できません。
d を素因数分解するときの素数 p のベキを e(d, p) としました.
d = (p_1)^{e_1} (p_2)^{e_2} \cdots (p_r)^{e_r}
( p_1, p_2, \dots, p_r は互いに相異なる素数)
であれば, e(d, p_i) = e_i,
p が p_1, p_2, \dots, p_r でなければ, e(d, p) = 0.
--
塚本千秋@数理・自然部門.基盤科学系.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp
Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
GnuPG Key ID = ECC8A735
GnuPG Key fingerprint = 9BE6 B9E9 55A5 A499 CD51 946E 9BDC 7870 ECC8 A735