工繊大の塚本です.

In article <a0da7ab3-681f-46d4-9825-785715eb9b4c@s9g2000prg.googlegroups.com>
kyokoyoshida123 <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> ルベーグの収束定理から忠実に
> lim_{k→∞} ∫_Ω (f_k(x) g(x) - f(x) g(x)) dμ=∫_Ω0dμ
> =0・μ(Ω)とここまで書けますがここから
> =0はやはりどうすれば言えますでしょうか?
> μ(Ω)<∞でないと=0に持っていけませんよね。
> 勘違いしてますでしょうか?

はい. ∫_Ω 0 dμ = 0 は当然です.

非負の関数 f の積分 ∫_Ω f dμ は, 0 ≦ s ≦ f を満たす
単関数 s の積分 ∫_Ω s dμ の上限として定義します.
その単関数 s = Σ_{i=1}^N a_i 1_{A_i} において,
 μ(A_i) = ∞ となるものがある場合に, 単関数の積分
 ∫_Ω s dμ = Σ_{i=1}^N a_i μ(A_i) をどう考えるか.

一つの立場は, a_i > 0 なら ∫_Ω s dμ = Σ a_i μ(A_i) = ∞
とし, a_i = 0 ならその a_i μ(A_i) は 0 と「決める」とする
ものです. これなら「約束で」∫_Ω 0 dμ = 0 です.

もう一つの立場は, 単関数において μ(A_i) = ∞ となるような
 A_i は許さないとするものです. そのように単関数を制限すると
 f の近似列が作れるかどうか気になるかも知れませんが, それは
 (Ω, Σ, μ) がσ有限測度であれば大丈夫です.
つまり Ω = ∪_{n=1}^∞ Ω_n, Ω_n は増大列で, μ(Ω_n) < ∞
となっていれば, s_n = Σ_{i=1}^{N_n} a^{(n)}_i 1_{A^{(n)}_i}
という近似列から ss_n = Σ_{i=1}^{N_n} a^{(n)}_i 1_{A^(n)_i ∩ Ω_n}
という列を作ると, これも近似列になっていて,
 μ(A^{(n)}_i ∩ Ω_n) < ∞ を満たしています.

このような制限つきの単関数で 0 ≦ s ≦ 0 となるものについて
は, a_i = 0, μ(A_i) < ∞  ですから,
 Σ_{i=1}^N a_i μ(A_i) = 0 で,
そのようなものの上限として ∫_Ω 0 dμ も 0 です.

積分が「線形」である為には ∫_Ω 0 dμ = 0 でないといけない
わけですが, そうなることを納得するには後者の方が納得しやすい
でしょうか. 但し, μ(Ω) = ∞ の時に ∫_Ω 1 dμ = ∞ は
自明ではなくなります.

> しかし仮にlim_{k→∞} ∫_Ω (f_k(x) g(x) - f(x) g(x)) dμ=0となったとしても
> 0=lim_{k→∞} ∫_Ω (f_k(x) g(x) - f(x) g(x)) dμ
> =lim_{k→∞} (∫_Ω f_k(x) g(x)dμ -∫_Ω f(x) g(x) dμ)
> から
> =lim_{k→∞}∫_Ω f_k(x) g(x)dμ-lim{k→∞}∫_Ω f(x) g(x) dμ
> に持っていくにはlim_{k→∞}∫_Ω f_k(x) g(x)dμが
> 収束する事を言わねばなりません。

いえ, lim_{k→∞} a_k = a というのは,
 lim_{k→∞} |a_k - a| = 0 が成り立つこと,
というのがそもそもの定義です. そして,
 lim_{k→∞} |a_k - a| = 0 と
 lim_{k→∞} (a_k - a) = 0 はやはり同じですね.

> どうれすればlim_{k→∞}∫_Ω f_k(x) g(x)dμが収束する事が言えますでしょうか?

  |∫_Ω f_k(x) g(x) dμ - ∫_Ω f(x) g(x) dμ|
  = |∫_Ω (f_k(x) g(x) - f(x) g(x)) dμ|
  ≦ ∫_Ω |f_k(x) g(x) - f(x) g(x)| dμ

から, lim_{k→∞} |∫_Ω f_k(x) g(x) dμ - ∫_Ω f(x) g(x) dμ|
 = 0 を証明したので, それで示せています.

> 補題「a≦f≦bがE上でμ-a.e.ならaμ(E)≦∫_Efd(x)dμ≦bμ(E)」
> というのを見つけました。
> よって|f_k(x) g(x) - f(x) g(x)| ≦ M |f_k(x) - f(x)|がΩ上でμ-a.e.なので
> ∫_Ω |f_k(x) g(x) - f(x) g(x)| dμ ≦ M ∫_Ω |f_k(x) - f(x)| dμが
> 言えるのですね。

これは積分論での基本命題ですね.

> よって挟み撃ちの定理から
> lim[k→∞]∫_Ω |f_k(x) g(x) - f(x) g(x)| dμ=0ですね。
> それでこれからlim[k→∞](∫_Ωf_k(x)g(x)dμ-∫_Ωf(x)g(x)dμ)=0までも
> 言えてしまうのは何故なのでしょうか?

これも

  |∫_Ω f_k(x) g(x) dμ - ∫_Ω f(x) g(x) dμ|
  = |∫_Ω (f_k(x) g(x) - f(x) g(x)) dμ|
  ≦ ∫_Ω |f_k(x) g(x) - f(x) g(x)| dμ

ですね.
 
> In article <081203131122.M0121376@cs1.kit.ac.jp>
> Tsukamoto Chiaki <chiaki@kit.ac.jp> writes:
> > 違います. f_k, f が L^p に属し, g が L^q に属すので,
> > f_k g や f g は L^1 に属することが先ず分かっている
> > わけです. H\"order の定理の証明の一部でもあります.

 H\"order ではなくて, H\"older でしたね. (ここだけかな.)
 
> 「0<p<q<∞でμ(Ω)<∞ならばL^q⊂L^p」という補題がありました。
> よって今,0<1<p,q<∞なのでL^p,L^q⊂L^1なのですね。

いいえ. 今 μ(Ω) < ∞ とは仮定していません.
 H\"older の不等式の証明は a, b ≧ 0 について

 a b ≦ (1/p) a^p + (1/q) b^q

を示すところから始まります. これから,

  ∫_Ω |f g| dμ ≦ (1/p) ∫_Ω |f|^p dμ + (1/q) ∫_Ω |g|^q dμ

となり, f が L^p, g が L^q なら f g は L^1 です.

> 定義域が可測集合ではなくσ集合体になっているからです。

言葉の定義について混乱があるのかも知れませんが,
今は措きます.
 
> >> ここで lim[k→∞]∫_Ω |f_k(x) - f(x)|^p dμ)^{1/p}=0(∵題意), ∫_Ω
> >> |g(x)|^q dμ)^{1/q}<∞(∵題意)より lim[k→∞](∫_Ω |f_k(x) - f(x)|^p
> >> dμ)^{1/p}×(∫_Ω |g(x)|^q dμ)^{1/q}=0 従って,lim[k→∞]∫_Ω |f_k(x)
> >> g(x) - f(x) g(x)| dμ=0で
> > これでお仕舞いですね.
> 
> えーと,ここが混乱しています。
> lim[k→∞]∫_Ω |f_k(x) - f(x)|^p dμ)^{1/p}=0(∵題意),
> (∫_Ω |g(x)|^q dμ)^{1/q}<∞(∵題意)はわかります。
> しかも仮定からlim[k→∞]∥f_k(x)-f(x)∥_1=0と ∥g(x)∥_1<∞ですよね。

ええと, lim_{k→∞} ∥f_k(x)-f(x)∥_p = 0 と ∥g(x)∥_q < ∞ ですね.

> |∫_Ωf_k(x)g(x)dμ-∫_Ωf(x)g(x)dμ|=|∫_Ω(f_k(x)-f(x))g(x)dμ|
> ≦∫_Ω|f_k(x)-f(x))g(x)|dμ=lim[k→∞]∥(f_k(x)-f(x))g(x)∥_1

そうです.
 
> でここからlim[k→∞]∥f_k(x)-f(x)∥_1=0と ∥g(x)∥_1<∞を使って
> =0を引き出すのだと思います。

 1-norm の話ではありません.
 
> どうすればlim[k→∞]∥(f_k(x)-f(x))g(x)∥_1=0が言えますでしょうか?

ですから, H\"older の不等式により

  ∥(f_k(x)-f(x))g(x)∥_1 ≦ ∥f_k(x)-f(x)∥_p ∥g(x)∥_q

となることを使うのです.
-- 
塚本千秋@応用数学.基盤科学部門.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp