靖国問題と中国(Re: 河野洋平)
青龍です。
本筋だった河野洋平の発言の是非の部分がすっぱり削られていますが、
この点についてはもう反論はないと理解してよろしいでしょうか?それならそ
れでいいのですが、もし終わってないならそれを放置して付随的な論点だけ
議論を続けるのはこちらとしては本意ではありません。
"Junya Suzuki" <PP6J-SZK@asahi-net.or.jp> wrote in message news:4131c9a8$0$6192$44c9b20d@news3.asahi-net.or.jp...
> "青龍" <shou77@hotmail.com> wrote in message news:cgbpdi$au5$1@news511.nifty.com...
> > > ところで神社にお参りしてはいけない約束事とはなんでしょうかね。
> > > 約束違反というなら何処がそうだと言うのを示して、大使引き上げでも断交でもやれば
> > > いいんじゃないですかね。約束違反なら中国側にはそうする権利があります。そこまで
> > > 至らなくても該当する約束と、その違反部分を提示してから批判してもらいたいですけどね。
> >
> > この点は既に指摘してますが、鈴木さん本当に私の投稿をまともに読んでますか?
> > まじめに読んでいない人のために繰り返し説明するのは時間の無駄なので、もう一
> > 度私の投稿をきちんと読み返してください。
>
> 誰がいつ、どのようなことを約束したのかが明示されたものを具体的なものだと言いますが、
> そのように記述されたものがどこかにありましたか?
"青龍" <shou77@hotmail.com> wrote in message news:cg9ipd$c4q$1@news511.nifty.com...
> そして、侵略した日本とされた中国という関係を前提とする限り、過去の侵
> 略を反省している日本政府が、侵略を実際に支持した戦争指導者を英霊と
> して祀っている神社に参拝することは過去の反省と謝罪という中国との外交
> 関係と矛盾する行為です。これに対して中国が非難することこそ、「内政」干
> 渉とは言い難いでしょう。
>
> # 似たような例として、今北朝鮮は、日本人の拉致が犯罪であることを認め
> ていますが、一方で拉致の実行犯とされている人間を国家の英雄としてたた
> えています。これに対して日本政府がその態度を批判したらそれは内政干渉
> となるでしょうか?
と書いてます。日中共同宣言をはじめ、過去の侵略戦争を反省するという日
本政府の立場はもはや常識ですので、具体的な文書名までは出しませんでし
たが、鈴木さんはしらなかったようなので、もう少し詳しく書きましょう。
日本政府として、中国をはじめとするアジア諸国に対する侵略を認め、反省する
ことを表明したものはいくつかあります。代表的なものは平成7年8月15日の村山
談話ですが、日中国交回復の際の日中共同宣言以来侵略戦争の反省という基本
姿勢は変わっていません
http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/nittyuukoudousenngenn98.htm
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/07/dmu_0815.html
日中共同宣言にも盛り込まれているように、この反省は単に日本の一方的な意
思表明にとどまらず、それを受け入れた中国との間の約束であり、国交回復の前
提となっています。
一方、靖国神社は国家のために戦った者を「英霊」として祀り、肯定的に評価し
ています。そして、この「英霊」の中に中国への侵略を決定した戦争責任者も含ま
れています。
つまり、中国から見れば、靖国神社は自国への侵略を決定した人間を「英霊」と
して肯定的に評価しているといえます。
もちろん、靖国神社が一宗教団体である限り、このような価値観を持つこと自体
は信教の自由として保障されています。この点で、A級戦犯を分祀城という主張は
的はずれも甚だしいといえます。
問題は、この靖国神社に内閣総理大臣が参拝することです。
前にも書いたように、小泉首相の参拝の場合、純粋に私的な行為として評価する
ことは困難であり、その行為は日本国を代表する内閣総理大臣としての行為という
側面がどうしても出てきます。
つまり、小泉首相が靖国神社に参拝することは、中国への侵略を反省することを
表明した日本政府の代表たる首相が、その侵略を決定した戦争責任者を「英霊」と
して肯定的に評価する宗教施設に参拝したことになり、過去の侵略の反省と矛盾し
た行動と解釈されるのです。
中国はこの矛盾を過去の約束に違反する行為と捉え、非難しているのでしょう。
もちろん、このような中国の理解に対してはいくつかの反論が考えられます。
一つは、「死ねば、皆神(もしくは仏)となる」という日本の宗教観を強調し、たとえ
戦争責任者であっても死んだ以上神として祀ることと、過去の反省とは矛盾しない
と主張することです。
ただ、このような宗教観は異なる宗教観を持つ人たちに理解してもらうのは難しく、
このような宗教観を盾に相手の批判を無視するのでは、相互理解は困難となるでしょ
う。理解を求めること自体は否定しませんが、過去の戦争の反省と矛盾しないことを
ねばり強く説明していくことが必要でしょう。
# また、このような宗教観に対しては、そもそも靖国神社自体がこのような伝統的な
宗教観から逸脱したものであるという批判もあります。
靖国神社には戊辰戦争や西南戦争ので戦った反政府軍の死者は祀られていませ
ん。靖国神社で祀られているのはあくまで、天皇の下お国のために戦って新だ者であ
り、死者の選別は靖国神社でも為されています。
また、日本の伝統的な宗教観からすれば、自分たちが殺してきた相手方の死者も
手厚く祀るのが自然です(例:元寇、平将門、朝鮮出兵)。しかし、明治以降敗者方の
死者は祀られていません。
これらの矛盾を無視して、日本の伝統を強調しても説得力に乏しいといえるでしょう。
また、A級戦犯を規定する東京裁判自体の不当性を主張する人もいます(靖国神社自
体もこのような主張をHPで載せています)。
しかし、これは日本政府自体が東京裁判を受け入れている以上、政府の代表たる首
相の行為を正当化する理由にはなりがたいです。日本政府として、A級戦犯の不当性
を主張するなら前提としてこの東京裁判を否定することになりますが、その様なことを
すれば余計日本に対する風当たりは強くなるでしょう。
また、仮に東京裁判の不当性を主張するとしても、それはあくまで裁判が不当であっ
たというにすぎず、侵略戦争の責任者は誰かという問題は依然残ります。そして、過去
の侵略を認め反省しながら、東京裁判の不当性を主張するのであれば、日本が独自に
戦争責任を追及することが必要となります。それをしないで東京裁判の不当性だけを訴
えてもそれは世界から見れば単なる責任逃れにしか見えないでしょう。
以上が首相の靖国参拝についての私の見解であり、どちらかといえば中国政府の
主張に近いでしょう。ただ、私の理解が絶対的なものだとは思っていません。上に挙
げた以外にもいろいろな反論はあるでしょう。
しかし、大切なのは、その反論を中国との対話の中でねばり強く説明して、中国側の
理解を得ることであり、中国側の反発を内政干渉として門前払いしてすませることでは
ありません。仮に中国の批判が誤解に基づくものであってもその誤解は対話の中で解
いていくことが過去の侵略を反省した日本の採るべき態度だと思います。
Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
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