河野真治 @ 琉球大学情報工学です。

In article <c898dc$qkc$1@caraway.media.kyoto-u.ac.jp>, Yoshitaka Ikeda <ikeda@4bn.ne.jp> writes
> 相対運動では記述できない理由が書かれていないので、
> 絶対運動を導入する必然性がありません。

ふーん、相対論以前のニュートン力学では、電磁気学が光速度一定
を要求するので、絶対運動を導入する必然性があります。必然性
があったらどうする?

実際、当時、その絶対速度を測定する方法(光行差が簡単) がいろ
いろ開発されて、それでも、なんか検出できなくって、フレネルの
随伴係数っていうエーテルの引きずりってので一次のオーダーまで
は一致したわけです。

もし、相対性理論がなかったら、あの異常に複雑な電磁気理論を今
でもいじっていたかも知れない。もっとも、相対論だから、めっち
ゃ簡単になるってわけでもないんだけど... ただ、一番計算が簡単
になる座標系を選んで計算して良いってのは素晴しい。これは、な
んと、大学受験にも応用できる! 相対論万歳! 

> #そもそも、あなたの「時空数学原理」は間違ってます。

このあたりの決めつけって彼らの「相対性理論は間違ってます」と
おんなじだと僕は感じます。

> #物体の速さは移動距離/時間ではありません。これは平均速度を求める式。
> #物体の速度は物体の座標を表す関数F(t)をtに関して微分したときのある時刻
> でのベクトルだし、速さはその大きさに過ぎない。

このあたりは、もう少し丁寧な考察が必要です。ガリレオもニュー
トンもそこから始めました。もちろん、アインシュタインも。

> #別に、この定義だと時間と時刻の違いを意識する必要はありません。微分す
> るという操作が時間の中からある時刻を取り出す操作になっているわけで、物
> 理学者も数学者も(少なくとも、ニュートンの時代以後)わかっている問題で
> す。

ところが、量子力学の出現で、

     速度と(時間を含む)位置

ってのが単純に従属しているわけではないらしいとわかるんですよね。
                .              
解析力学では、q,q (と書かずにq'と書かないのは、微分じゃくて
独立変数だからなんだけど) 

今でも、「速度と位置の関係」ってのは、そんなに「わかっている
問題」ってわけでもないんです。

まぁ、場の量子論で最初から表示に時空間の位置をパラメータとし
て入れてしまうようだと、むしろ、古典論的な4次元幾何学として
の位置と時間に戻ってしまうわけなんだけど。量子力学的には、相
対性理論はゲージ不変性に対応するわけですよね。

で、問題は、「なんで、ゲージ不変性なんてものがあるんだ?」っ
てことになるんだけど、それはあまり正しい質問じゃないんだよね。
人間が持っている数学的なツール(高次元幾何学や連続群、ヒルベ
ルト空間)が持っている記号的な構造が、抽象的な数学構造よりも
冗長性を持っていて、その冗長性を消すための人間の数学的なツー
ルがゲージ不変性なんだと思います。

相対論が間違っているっていう人は、結局は、ゲージ理論も捨てて
しまうわけで、それは、あまりに勿体無いわけなんだけど、必要な
い範囲では別に捨てても良いです。

単に見ているものではなくて、その裏に、人間の力では表現し切れ
ない(けど、一部分は理解できる) 構造があるんだというのを知る
のは素晴しい体験だと思う。単純に「間違っている」じゃぁ、得ら
れない。

まぁ、ここでいろいろ言っている人達も、もしかすると、その一部
を見ているのかも知れないし、見損なっているのかも知れない。で
も、別な見方をするきっかけぐらいにはなるかも。ただ、おんなじ
ことを繰り返されるのはうんざりです。

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Shinji KONO @ Information Engineering, University of the Ryukyus
河野真治 @ 琉球大学工学部情報工学科