青龍 wrote:
>  しかし、日中共同宣言の際に、過去の侵略について謝罪だけでなく反
> 省の意も表さなかったら、そもそも国交回復自体が出来たかどうか疑問
> です。

「意を示す」ことは出来ますし、実際示したわけです。が、それを自民党政権が
実行しつづけることは無理です。自民党とはそういう政党ですから。無理と見込
んでその条件で国交回復したというところが中国の老獪なところです。自民党政
権はこれで中国にしっぽを握られてしまった。


>  同じく、敗戦国であるドイツも過去のナチスの犯罪について徹底的な反
> 省の姿勢を取ることによってようやく西欧社会に復帰出来たのです。

それをドイツ(西ドイツ)はナチに責任転嫁して「徹底的に」できたわけです。
それは、政権からヒトラー時代の人間を一掃したからなのかもしれませんし、ナ
チが解体してヒトラーが自殺したからなのかもしれません。そして、それは、帝
国時代の政権から多くが参加して出来た当時の「自由党+民主党=自民党」政権
にはおそらくできなかったことでしょう。天皇に責任のすべてをかぶせることも
できないのが日本という国だし。

# 片山政権がもっと強くて、もし仮に「日本共和国」になっていたら、
# いまごろ中国の日本を見る目も変わっていたかもしれませんが、そ
# れは浅沼稲次郎の暗殺が起きたように当時は所詮無理なことでした。

とにかく、そういった構造を持つ「日本」の「政権」が中国と是が非でも国交回
復したいということで、できるかどうかわからない約束をしたというのが「日中
共同宣言」じゃないでしょうか。


>  ここで、ぼろが出るのは、それこそ日本の外交が稚拙だからでしか
> ありません。

もちろんそうです。けれども、おそらくかなりがんばってもぼろは出ます。それは、

> 日本政府の立場が明確に決まっているのに、政府を構
> 成する首相や閣僚が本音を出すのは、外交的には致命的なミスです。

でありながら、そういう「ミス」を犯しやすい体質を構造的に持ってしまってい
るからです。そこが中国のつけいるスキなんですね。

# もっとも、中国はこれによって実質的な被害を日本におよぼしている
# わけじゃなく、国内問題のガス抜きにこれを利用してきただけなんで
# すが、ここに至って、そのガスが漏れて日本に向かって吹き出る様相
# を呈したことで、日本国民も逆にカリカリ来てるわけですが。


>>「故意でやったんなら謝るべきではない」というのが、世界各国の外交方針の
>>大勢を占めるゆえんでしょう。

「勝ち組み」は無理なくこの理屈を採用しています。「負け組み」の日本がこの
理屈で押そうというのは、やはり無理です。


>>つまり、故意でやったことに対して詫びを入れてしまうことは、こうした構造
>>的なねじれを生み、国の対応の一貫性のなさを突く隙を相手に与え続けること
>>になるわけです。

>  萩原さんの主張の問題点は「構造的なねじれ」といって、政府内
> での失言を容認してしまうことでしょう。

別に容認する気はありません。失言は「ミス」だし、それによって、日本国民に
不利益をもたらしているという意味で容認できません。

ただ、日本の問題は、

>  すなわち、政府にまともな判断能力があるのであれば、政府から
> 過去の侵略を正当化するような発言が出てくるようなことは決して
> 構造的なねじれではなく、政府のミスにすぎません。

そうじゃなくて、戦争による被害の問題について、だまって罪(賠償請求)を受
け入れて罪を償う(賠償金を支払う)形にせずに、中国の賠償請求放棄の申し出
に乗って、「謝罪・反省」するという形で国交回復をしてしまったばっかりに、
「政府から過去の侵略を正当化するような発言が出てくるようなこと」が起こり
やすい構造的な体質とは相容れない約束をすることになってしまったということ
です。その結果、日中関係に関しては、構造的に「本音とタテマエが容易に一致
しないねじれた構造」になってしまったわけです。小泉首相が言を左右しつつ靖
国神社にだけはお参りしないわけにはいかないというのもその「ねじれ」のひと
つの顕われでしょう。

いや、「国交回復」自体が悪いと言っているわけでも、「謝罪」と「反省」が悪
いと言っているわけでもないんです。その「国交」と「謝罪」と「反省」をセッ
トにすると、ぼろが出てしまうような体質を日本は、なかでも自民党政権は、
持っているということです。

それは、ドイツと違って戦争に負けたくせに政権体質が実質上変わらなかった日
本のサガでもあります。むろん、戦争に勝っていれば、米英仏中露のように、自
分のやったことに知らん振りしてても誰も国交を結んでやらないなどということ
はないんですが。

# もちろん「だから次は勝とう」なんて話ではありませんけどね。


> そこで、ミスを
> した日本側が、中国がそのような状態に追い込んだと非難しても、
> 鼻で笑われるだけだと思います。

「非難」は、していないんですよ。ただ、中国政府の老獪さに感心しているだけ
で。実にうまいところを突いたなあ、と。


さて、ここまでひっぱってきて、じゃ、どうすればいいんだという話ですが、そ
ういう「宣言」を出しそういう「条約」を結んだ以上は、それを破棄しないかぎ
りそれに従うべきだということになります。

つまり、オプションは大きく分けて二つ。
1 中国に日本政府が戦前戦中にしたことに対して、政府内の人間は口を慎む。
または
2 日中共同宣言、日中友好条約を破棄して(一年前に通告すれば破棄できる)
新しい宣言を出し新しい条約を結ぶ。つまり賠償金を支払って、過去の清算をする。

2番目は中国が飲みそうもない提案ですから、1を採るしかない。しかし、ここ
は中国政府を見習って、それは「政府内」の問題であって、「日本国民」の問題
とは別だということにしておけば、国民の気分はいくぶんラクかもしれません。

なんだか竜頭蛇尾……

萩原@グリフィス大学