Re: 構成要件という言葉の疑問
佐々木将人@函館 です。
>From:Keizo Matsumura <kmatsu@nr.titech.ac.jp>
>Date:2004/03/26 17:17:27 JST
>Message-ID:<4063E717.7F9FEBBA@nr.titech.ac.jp>
>
>その正解にたどり着いても問題の解決にはならない場合がある。
>それが現在の司法システムの限界かも。
まずですね、現在の司法システムが完璧だとは思ってないし
実のところ穴だらけだと思ってますよ。
もし完璧だとするならば
日本と異なる司法システムを採用している国は
完璧じゃないってことになるけど
そんな馬鹿な話はあり得ない……。
穴をあげていけばキリがないけど
やはし「強制執行を完遂できない場合がある」というのは
私は穴だと思ってます。
……裁判で勝っても相手に資産がないので取れない場合ね。
だけどですね〜。
まず第1に
正解にたどりつけないで、間違ったところからああだこうだ言われても
そりゃあ全然建設的じゃあないってことですよ。
そして第2に「司法システムが完璧じゃなきゃいけないのか?」
「問題の解決は司法システムによらなきゃいけないものなのか?」
という点は
私自身は違うと思っているんですね。
法律論で行った方がいい場合もあるしだめな場合もある。
だめな場合には「法律論では問題は解決しないんだ」ってことを示せば
それでいいと思っています。
>「裁判官の卵たちは、司法修習で”要件事実教育”を徹底して受けています。
>これはさまざまな実例を通して、それが”要件事実”なのか”事情”なのか
>を振り分けする訓練を受け、事情の方は徹底して排除していくという教育で
>す。」
>
>ここに偏りは、ないのでしょうか?
偏り以前に間違い。
要件事実論はね
(刑事訴訟でも形を変えて出て来ていると指摘する人もいるけど)
基本的には民事訴訟の問題。
そしてどうして要件事実論かと言えば
それは日本の実体法が成文法で「要件効果」の形で書かれているからなんで
それと法的三段論法とを採用する限り
いわば必然。
もしそういう思考自体がいけないというなら
およそ「法律にのっとった裁判はやるな」と言っているに等しい。
……これは偏りじゃなく間違いの領域ですわ。
嘘だと思うなら法曹会で出している
「民事訴訟における要件事実」だとか
「問題研究 要件事実 言い分方式による設例15題」だとかを
読んでみるといいよ。
そしてね、最大の誤りは
「日本の民事訴訟の多数は和解で終局している」
という事実を完全に無視して
訴訟の行方として判決だけをとりあげているってことなんですよ。
今最高裁のサイトで司法統計見たら
大ざっぱなところ
簡裁1審通常訴訟年間30万件のうち
判決15万件
内当事者不出頭による原告勝訴判決10万5000件
当事者が出頭した上での原告勝訴判決4万件
和解8万5000件
取下7万件でね。
当事者がまがりなりにも争うのが30万件のうち12万5000件程度
(実際には出頭しても「まったくおおせのとおりで」という
「棄却答弁・請求原因事実は認める」ってえのが
4万件のうちの相当数を占めているはずだけど
そこまで細かい数字は出てこない。)
そのうちおおむね1:2の割合で和解で終わっている訳。
地裁1審通常訴訟だと年間15万5000件のうち
判決15万5000件
内当事者不出頭による原告勝訴判決3万件
当事者が出頭した上での原告勝訴判決3万5000件
当事者が出頭した上での原告敗訴判決1万件
和解5万件
取下2万件という結果で
当事者がまがりなりにも争うのが15万5000件のうち9万5000件程度
そのうちおおむね半分強が和解で終わってます。
……争いのある事件でも
地裁1審ですら半分強、簡裁1審にいたっては3分の2近くが
和解で終わっているんですね。
その和解だってたいていは(5分5分ではないものの)
それぞれがそれなりに痛み分けというのが圧倒的だから
(でなきゃ簡裁だと分割払いの和解が大多数かも)
判決だけ見て議論するのはその時点で大間違いなんです。
……でもこの著者の場合仕方ないかもしれない。
多数の事件が和解で終わっているという事実を伏せないと
>同書 P.161
>正義や公益などという発想は、そもそも裁判官の頭の中には存在しない
と言えないんですな。
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cal@nn.iij4u.or.jp 佐々木将人
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ルフィミア「まさと先輩、今年もよろしくお願いします。」
まさと「振袖着れるようになったの?」ルフィミア「はい。勉強しました。」
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