佐々木将人@函館 です。

>From:Koichiro <koichiro@gmx.net>
>Date:2003/11/02 16:58:28 JST
>Message-ID:<bo2df4$8eb$3@zzr.yamada.gr.jp>
>
>ただ、公表権という観点からすると納得しかねます。

公表権ってなんですか?

まさかと思いますが著作権法18条に定める公表権?
それなら前提は著作物であることが必要です。
……著作物でなければ公表権は認められません。
  したがってその侵害というのもありえません。

>別記事の繰り返しになりますが、私信とは非公開がデフォルトです。
>それは件の判決で「一般論」として記されている通り。

であればその根拠はプライバシー権な訳ですね?
高松高裁判決は
|しかしこの一般論を覆す理由がないとして
|プライバシー権侵害を認めている訳ではありません。
|本件の特殊事情として
|・もともとある団体の内部紛争に関する件であった
|・手紙の差出人はその団体では相当の地位にあった
|・手紙の受取人はその団体で反主流派とも言える立場であった
|・手紙の内容は
| 「自分はそういう地位にあるので支援はできないが
|  心情的には受取人に賛成しているのでがんばってほしい。」
| という内容であった
|という事実を認定した上で
|「みだりに公開されないことについて
| 法的保護に値する利益を有しており」
としています。
一般論が私信の非公開を原則としているなら
このような事実認定も法律構成も不要です。
「非公開であるべき私信を公開するのが権利侵害である。
 本件においては権利の侵害を正当化する事由はない」
と説明すれば足ります。
なぜそうしなかったか?
「私信を公開すれば自動的にプライバシー権侵害になる」
というルールは存在しないのです。

したがって「私信は非公開がデフォルトである」という主張は
高松高裁判決に反しています。

>私信とプライバシーにまつわる歴史的経緯があるにせよ、
>| ・公開されるような相手だと判断したらそもそも出さない。
>| ・公開されて困るようなことは書かない
>| などの防御策がいくらでも可能なのに
>という判断が付くような状況にない場合は

判断がつかないということは
|「みだりに公開されないことについて
| 法的保護に値する利益を
有していないことが明らかですから
公開してもなんの問題はないということになります。

>> そもそも著作物とは認められないのではないでしょうか?
>
>言語の著作物にあたるのではないでしょうか?
>書き手の思想、感情をオリジナルに表現したものですから。

であれば判例タイムズ926号p207で手紙も見て
「書き手の思想、感情をこんなにオリジナルに表現しても
 著作物性が否定されるのか」
と愕然としてください。

同判決は
「自身の考えを述べたものであって、
 その思想または感情を表明したものといえる」
ことは認めた上で
それだけでは著作物にはならないとし
「著作物というためにはその表現自体に
 何らかの著作者の独自の個性が現われていなくてはならないと解すべき」
として
本件の手紙には法的保護に値する「創作的に表現したもの」という性質が
認められないと判断しています。

まさに
|この点fjでは異なった意見を述べる人がいますが
|たいていは同判決で問題になった手紙を見ていないか
|(判例タイムズでは判決全文を見ることができ
| その中で問題となった手紙も見ることができます。)
|同判決の判断基準を採用していないかのいずれかで、
|通説判例から見て誤りと言えるものです。
のとおりです。

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まさと  「それ青いブレザーでキュンキュンさせながら言わないと……。」