工繊大の塚本です.

In article <3b0f4bcb-506c-475c-8034-7949e0a1accb@g3g2000pra.googlegroups.com>
kyokoyoshida123 <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> そうでしょうね。あるx,yについては|Φ'(x + t(y - x))|が
> 定義されない場合もあるでしょうね。
> でも,この定義域Eを凸包の閉包の広げてやれば定義されるのですよね。

いいえ, 元々 x + t(y - x) が Φ の定義域になければ,
どうしようもありません. x + t(y - x) が Φ の定義域
からはみ出さないように, E を上手く取っておかないと
いけません.

> In article <090521165318.M0118983@cs2.kit.ac.jp>
> Tsukamoto Chiaki <chiaki@kit.ac.jp> writes:
> > その D は 2×1 (或いは 1×2) 行列値の微分作用素です.
> 
> なるほど。f=(f_1,f_2) (但し,f_1:R^2→R,f_2:R^2→R)とすると

今, 簡単の為に, f は単なる実数値関数としています.
その f: R^2 → R について,

> Df=
> [[∂f/∂x,∂f/∂x],
> [∂f/∂y,∂f/∂y]]
> なのですね。

  Df = [[∂f/∂x],
        [∂f/∂y]]

と, D を作用させたものは, 2×1 行列になります.

> D^2f=
> [[∂^2f/∂x^2,∂^2f/∂x∂y],
> [∂^2f/∂y∂x,∂^2f/∂y^2]]
> となるのですね。

これは, そう表しても良いわけです.

> > 実数値関数 f について, D^2 f はそうです.
> >   D^2 f
> >   = [[ ∂^2f/∂x^2,  ∂^2f/∂x∂y, ∂^2f/∂x∂z ],
> >      [ ∂^2f/∂y∂x, ∂^2f/∂y^2,  ∂^2f/∂y∂z ],
> >      [ ∂^2f/∂z∂x, ∂^2f/∂z∂y, ∂^2f/∂z^2  ]]
> 
> 有難うございます。これは
> D^2 f=D(Df)
> [[∂/∂x,∂/∂x,∂/∂x],
>  [∂/∂y,∂/∂y,∂/∂y],
>  [∂/∂z, ∂/∂z,∂/∂z]]
> ・
> [[∂f/∂x,∂f/∂x,∂f/∂x],
>  [∂f/∂y,∂f/∂y,∂f/∂y],
>  [∂f/∂z, ∂f/∂z,∂f/∂z]]
> から得られるのですね。

どうして三重になっているのでしょうか.

  D^2 f = D(Df)
  = [[∂/∂x],
     [∂/∂y],
     [∂/∂z]]
    ・
    [[∂f/∂x],
     [∂f/∂y],
     [∂f/∂z]]

なら良いでしょう. 「積」は上手く翻訳する必要があります.

> (D^2 f)(P)は3×3行列ですが((h,k,j),(h,k,j))は3×2行列ですが
> (D^2 f)(P)((h,k,j),(h,k,j))は3×3行列と3×2行列の積ではなくて,
> [ h, k, j ] (D^2 f)(P) [[h],
>                         [k],
>                         [j]]
> という1×3行列,3×3行列,3×1行列の積(1×1行列)を表しているのですね。

どうでないといけないかは, Taylor 展開で必要になる
のがどういう項であるかで分かるでしょう.

> > 一般に, f が d 変数 x_1, x_2, ... , x_d の
> > 実数値関数のとき, h = (h_1, h_2, ... , h_d) について,
> >  P = (a_1, a_2, ... , a_d) での (D^k f)(P)(h, h, ... h) は
> >   (D^k f)(P)(h, h, ... , h)
> >   = Σ_{i_1, i_2, ... , i_k = 1}^d
> >     (∂^k f/∂x_{i_1}∂x_{i_2}…∂x_{i_k})(P) h_{i_1} h_{i_2} … h_{i_k}
> > で与えられます.
> 
> 有難うございます。これがd変数のtの合成関数fのk階微分d^k/dt(f)=(D^k f)(P)(h,
> h, ... h) の意味だったのですね。

これが Taylor 展開で必要とされる項です.

> x=(x_1,x_2,…,x_d),y=(y_1,y_2,…,y_d),
> Φ(x)=Φ(x_1,x_2,…,x_d)=Φ(ψ_1(t),ψ_2(t),…,ψ_d(t))とすると
> d変数のtの合成関数Φの微分dΦ/dtは
> d^k/dt^kf(x)=(D^kΦ)(ψ_1(t),ψ_2(t),…,ψ_d(t))
> =Σ_{i_1,i_2,…,i_k=1}^d
> [(∂^kΦ/∂x_{i_1}∂x_{i_2}…∂x_{i_k})(ψ_1(t),ψ_2(t),…,ψ_n(t))
> (dΦ_{i_1}/dt)(t) (dΦ_{i_2}/dt)(t) … (dΦ_{i_k}/dt)(t)]
> と書けるのですね。

駄目です. 沢山ある typo を別にしても,

  (d^k/dt^k)(Φ(ψ_1(t), ψ_2(t), ... , ψ_d(t)))
  = Σ_{i_1, i_2, ... , i_k=1}^d
     (∂^kΦ/∂x_{i_1}∂x_{i_2}…∂x_{i_k})(ψ_1(t), ψ_2(t), ... , ψ_d(t))
     (dψ_{i_1}/dt)(t) (dψ_{i_2}/dt)(t) … (dψ_{i_k}/dt)(t)

が成立するのは, (dψ_j/dt)(t) が定数となる場合だけです.
一般に, 高階微分では (d^pψ_j/dt^p)(t) を含んだ項が
出て来ます. ま, 工学系の大学一年生は, 半分位, そこで
一回は間違いますね.

> > (D^k f)(P) は k 階の(共変)テンソルで,
> 
> このd×d行列は共変テンソルと呼ばれるのですね。

2階のテンソルは行列と見做すことも出来ますが,
高階のテンソルは行列ではありません.
 d^k 個の成分を持つものです.

> > それは R^d の k 個の直積上の多重線形写像だと考えられます.
> 
> この写像は(R^d)^kから何への写像になるのでしょうか?

今は実数値ですね.

> >  Φ(y) = Φ(x + 1(y - x))
> >        = Φ(x + 0(y - x)) + d(Φ(x + t(y - x)))/dt|_{t=0}・1
> >          + (1/2) d^2(Φ(x + t(y - x)))/dt^2|_{t=0}・1^2
> >          + (1/3!) d^3(Φ(x + t(y - x)))/dt^3|_{t=0}・1^3
> >          + …
> >          + (1/(n-1)!) d^{n-1}(Φ(x + t(y - x)))/dt^{n-1}|_{t=0}・1^{n-1}
> >          + (1/n!) d^n(Φ(x + t(y - x))/dt^n|_{t=θ}・1^n
> 
> すいません。縦線「|」の箇所「|_{t=θ}・1^n」はどういう意味でしょうか?

その左側の式において t = θ とする, という意味です.
 d^2(Φ(x + t(y - x)))/dt^2|_{t=0} なら,
 Φ(x + t(y - x)) の t についての2階の導関数を
求めて, t = 0 としたものを考えるわけです.

> >   d(Φ(x + t(y - x)))/dt
> >   = Σ_{i=1}^d (∂Φ/∂x_i)(x + t(y - x)) (dψ_i/dt)(t)
> >   = Σ_{i=1}^d (∂Φ/∂x_i)(x + t(y - x)) (y_i - x_i)
> >  h_i = y_i - x_i とおきましょうか.
> 
> Σ_{i=1}^d (∂Φ/∂x_i)(x + t(y - x))h_iでいいのでしょうか?

そうなりますね.

> > 先ず. Φ(x + t(y - x)) を 1 変数 t の
> > 関数と考えているので, ∂ ではなく d を使って,
> >   d^2(Φ(x + t(y - x)))/dt^2
> 
> ここはd^2/dt^2(Φ(x + t(y - x)))と書かれていないのは
> Φ(x + t(y - x))がまだ微分されていないからなのですよね。

 (d^2/dt^2) が, 右側のものの t について2階の導関数を
求める, 微分作用素である, と分かるのであれば,
 (d^2/dt^2)(Φ(x + t(y - x))) でも構いません.

> >   = (d/dt)(Σ_{i=1}^d (∂Φ/∂x_i)(x + t(y - x)) h_i)
> 
> ここは合成関数の微分の公式
> 「y=f(x_1(t),x_2(t),…,x_n(t))の時,
> dy/dt=Σ_{i=1}^n ∂y/∂x_idx_i(t)/dtですね。」

何回も使ってますね.

> >  Taylor 展開の k 次の項は, t = 0 として,
> >   (1/k!) (D^k Φ)(x)(h, h, ... , h)
> >   = (1/k!) Σ_{i_1, i_2, ... , i_k = 1}^d
> >            (∂^kΦ/∂x_1∂x_2…∂x_k)(x) h_{i_1} h_{i_2} … h_{i_k}
> > です.
> > 注意すべきは, k 次の項は, h の成分,
> >  h_1 = y_1 - x_1, h_2 = y_2 - x_2, ... , h_d = y_d - x_d
> > の k 次式になっていて,
> > O(|y - x|^k) の項である,
> > つまり, 定数 M が存在して, その絶対値が M |y - x|^k で
> > 押さえられるようなものである, ということです.
> 
> h_1h_2…h_d=(y_1 - x_1)(y_2-x_2)…(y_d - x_d)
> |y - x|^k=(√((y_1-x_1)^2+(y_2-x_2)^2+…+(y_n-x_n)^2))^k
> ですから,M::=max{|y_1 - x_1|,|y_2-x_2|,…,|y_d - x_d|}^kと採ればいいですね。

やはりお分かりではない. |h_k| = |y_k - x_k| ≦ |y - x|.

  |(1/k!) Σ_{i_1, i_2, ... , i_k = 1}^d
           (∂^kΦ/∂x_1∂x_2…∂x_k)(x) h_{i_1} h_{i_2} … h_{i_k}|
  ≦ (1/k!) Σ_{i_1, i_2, ... , i_k = 1}^d
            |(∂^kΦ/∂x_1∂x_2…∂x_k)(x)| |h_{i_1}| |h_{i_2}| … |h_{i_k}|
  ≦ ((1/k!) Σ_{i_1, i_2, ... , i_k = 1}^d |(∂^kΦ/∂x_1∂x_2…∂x_k)(x)|)
     |y - x|^k

ですから,

  M = (1/k!) Σ_{i_1, i_2, ... , i_k = 1}^d |(∂^kΦ/∂x_1∂x_2…∂x_k)(x)|

と取ることになりますね.
   
> >   lim_{|h| = |y - x| → 0}
> >   |Φ(y) - Φ(x) - Σ_{k=1}^n (1/n!)(D^k Φ)(x)(h, h, ... , h)|/|h|^n
> >   = 0
> > となります.
> 
> |Φ(y) - Φ(x) - Σ_{k=1}^n (1/n!)(D^k Φ)(x)(h, h, ... , h)|/|h|^n
> =|(∫_[0,1](D^nΦ)(y+t(x-y))dt-(D^nΦ)(y))(x-y)|/|x-y|
> =|∫_[0,1](D^nΦ)(y+t(x-y))dt-(D^nΦ)(y)|
> と変形できますね。

これは又出鱈目な変形ですね. 積分形での剰余項の表示も
ありますが, それはそんな出鱈目なものとは違います.

  |Φ(y) - Φ(x) - Σ_{k=1}^n (1/n!)(D^k Φ)(x)(h, h, ... , h)|/|h|^n
  = (1/n!) |(D^n Φ)(x + θ(y - x))(h, h, ... , h)
            - (D^n Φ)(x)(h, h, ... , h)|/|h|^n
  = (1/n!) |Σ_{i_1, i_2, ... , i_n = 1}^d
            ( (∂^nΦ)(∂x_{i_1}∂x_{i_2} … ∂x_{i_n})(x + θ(y - x))
              - (∂^nΦ)(∂x_{i_1}∂x_{i_2} … ∂x_{i_n})(x) )
            h_{i_1} h_{i_2} … h_{i_d}|/|h|^n
  ≦ (1/n!) Σ_{i_1, i_2, ... , i_n = 1}^d
            | (∂^nΦ)(∂x_{i_1}∂x_{i_2} … ∂x_{i_n})(x + θ(y - x))
              - (∂^nΦ)(∂x_{i_1}∂x_{i_2} … ∂x_{i_n})(x) |
  
> これからどうすれば
> lim_{|h| = |y - x| → 0}|∫_[0,1](D^nΦ)(y+t(x-y))dt-(D^nΦ)(y)|=0
> が言えますでしょうか?

上から,

  0 ≦ lim_{|h| = |y - x| → 0}
       |Φ(y) - Φ(x) - Σ_{k=1}^n (1/n!)(D^k Φ)(x)(h, h, ... , h)|/|h|^n
    ≦ lim_{|y - x| → 0}
       (1/n!) Σ_{i_1, i_2, ... , i_n = 1}^d
               | (∂^nΦ)(∂x_{i_1}∂x_{i_2} … ∂x_{i_n})(x + θ(y - x))
                 - (∂^nΦ)(∂x_{i_1}∂x_{i_2} … ∂x_{i_n})(x) |
    = 0

は明らかです.
-- 
塚本千秋@応用数学.基盤科学部門.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp