Re: 通信の秘密はこれを保障する(憲法21条)
阿部@佐倉です。
In article <20050508231845cal@nn.iij4u.or.jp>,
cal@nn.iij4u.or.jp (SASAKI Masato) wrote:
> 実はこの点について一番まとまっているのが
> 司法試験の過去問の記述だったりするので
> 平成元年13問を全部引用してしまう。
> (元の問題は穴埋め問題……以下は穴埋め後の文章な訳だ。)
> 「言論の自由の概念は、イギリスの歴史において国会が自由な討論の特権を
> 獲得しようとする闘争を通じて確立されてきたものであり、会期中に議員
> が議員としての資格においてなした発言を刑事罰から免責するという意味
> のものであった。すなわち、言論の自由は市民的自由ではなく、議員の特
> 権であったのであり、英米においては、少なくとも18世紀の最後の四半
> 世紀にいたるまでは、言論の自由をそのようなものとしてとらえるのが一
> 般的であった。」
>
> 別に表現の自由に限りません。英米法を勉強しているとすぐわかる
> 「最初はこういう目的だったけど後に別の事項に転用される」
> 類のものです。
司法試験の解答=法律学の分野としてはそう書けば足りるの
かもね。
でも、国会が自由な討論を行うってこと自体が、いったい
どのような社会状況から生まれたのかとか、そもそも国会が
自由な討論を行うっていう考え方はどこから生まれたのとか、
議員が討論することなんてあり得る訳とか、さらに掘り下げ
られます。
私は、ミルトン「アレオパヂティカ」に起源を求めたいほう
なので、政治的自由の闘争が確立に大きく寄与したとしても、
そこから始めるのには反対ですけど。
> そして「刑事罰から免責」なのですから
> その担当が法律学以外のなにものでもないのは
> 言うまでもないでしょう。
> (少なくともこの時期には法律学という学問体系は確立しています。)
表現の自由論について、すべての論議が法律学の枠内で
行われてきたのですか。どこで線引きするのかって難しい
かもしれませんが、表現の自由をめぐる論者って、すべてが
法律学の研究・思索の中で論を作ってきたのでしょうか。
> >けど、その価値を(私的な空間であっても)実現させよう
> >という発想はあってはならないのですか?
>
> ここは長島さんの言うとおりなんだけど
> あえて厳しい言い方をさせてもらえば
> 「表現の自由より大事な私的自治の原則を無視するのはなぜ?」
> そこが全く理解できないし、理解したくもない。
表現の自由と私的自治の原則を比較するという見方自体が
おかしい。
どのように私的自治を行うかという、「どのように」の
部分で「からの自由」とは異なる「ための自由」という
面から捉えた表現の自由の実現ということを目標に掲げる
ことがありうるのではないでしょうか。
どのような原理で自治を行うか。すなわち、函館住民を
排除するとか、佐倉住民を優遇するとか、函館住民も
佐倉住民も排除もしなければ優遇もしないとか、
そういう原理と同様に、表現の自由を最大限実現する場に
したいという原理があってもおかしくはないと思う。
じゃあ、その表現の自由って何だ。グループの憲章を
破ってもいい自由なのかとか、そういうわれわれの
目指したい表現の自由って何かを議論してゆけばいい
のではないでしょうか。
--
阿部圭介(ABE Keisuke)
koabe@mars.sakura.ne.jp
関心 ・専門分野 :
新聞学(ジャーナリズム、メディア、コミュニケーション)
Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
GnuPG Key ID = ECC8A735
GnuPG Key fingerprint = 9BE6 B9E9 55A5 A499 CD51 946E 9BDC 7870 ECC8 A735