青龍です。

"NISHIZAWA Yutaka" <yutaka@msi.co.jp> wrote in message news:68d613b4he.fsf@somwinh.msi.co.jp...
> 青龍 <shou77@hotmail.com> writes:
> まぁ、池田さんも敢えて極論を述べているわけですけれども。
> 逆に青龍さんの主張は、青龍さんの考える“道義”なるものに過剰な程大きな
> ウェートを置くあまり、パワーポリティクスという現実から乖離しているよう
> に見えます。韓国はちと怪しいですが、少なくとも中国政府は、青龍さんが考
> えるよりも遥かにプラグマティックであると僕は思います。日本の振る舞いが
> どうであれ(というのは、本気で関係を左右するほどの行動にはどうせ出やし
> ないと見透かされているので)、その時々の内政外交に都合がいいように反日
> 的だったり親日的だったりするでしょう。

 中国政府がプラグマティックであり、戦争責任問題を政治的に利用して
いることはもちろん理解しています。
 その上で、私は、過去の侵略戦争についての謝罪と反省は、道義的に
必要と考えるとともに、中国が戦争責任問題を政治利用しにくくする為に
も有効だと考えています。

 例えば、ODAについても、私はもう中国に対するODAは不要だと考えて
いますが、現在中国が靖国問題について日本に抗議しているときに、OD
Aを打ち切る行動に出ると、中国政府はこれを戦争責任と絡めて問題化
しやすくなるでしょう。まして、池田さんのいうように侵略についての謝罪
も反省も必要がないと日本政府が主張し、それに対するに中国の反発を
黙らせるためにODAをちらつかせるようなことをすれば、中国のみならず、
世界が日本のODAを「金で被害者を黙らせるためのものだ」と認識し、
ODAが持つ日本のイメージアップのための宣伝効果を大幅に損なってし
まうでしょう(大なり小なりODAが政治目的に使われていることは否定しま
せんが、それをあからさまにすることは、外交としては最悪の選択でしょう)。
 むしろ、戦争責任についての態度をはっきりさせ、この問題についての
中国の批判を封じた段階で、ODAを打ち切るのであれば、中国は上記の
ような政治利用を格段にしにくくなります。

 また、池田さんの主張を見ていると、中国に対して過去の侵略戦争につ
いて謝罪・反省をすることが、あたかもその後中国に対していいなりになる
ことにつながるかのように捉えていますが、このような理解が果たして妥当
だろうか疑問に思います。
  私としては、むしろ現在及び未来の問題について中国に対し堂々と発言
出来るようにするためにも、過去の侵略に対する反省と謝罪はしっかりやっ
ておくべきだと思います。また、中国政府の政治的な思惑にかかわらず、日
本の過去の侵略で実際に傷ついた人たちがいる以上、彼らの慰謝に勤める
ことは、道義にも適うことであり、メリットにこそなれデメリットになるとはいえな
いでしょう。
 実際、池田さんのいうデメリットというのはかなり曖昧なものです。過去の
侵略について反省・謝罪することが、なぜ中国のいいなりになることにつな
がるのか全然説明出来ていません。
 特に、反省・謝罪は不十分とはいえ、過去にも行ってきたのですから、その
立場を明確にすることが中国のいいなりになることにつながるというのは、あ
まりにも唐突な主張でしょう。
 
 

> あと、日本に対して声高に文句を言う国との関係だけで「国際関係」を捉えて
> しまう傾向があるようですね。小泉首相が靖国神社に参拝するようになってか
> ら、たとえばマレーシアやタイやインドやベトナムやカンボジアやフィリピン
> やシンガポールや台湾との関係は悪化したでしょうか?

 これについてはふたつほど問題点を指摘したいと思います。
 第一に、現在の東南アジア諸国は、日本の戦争責任をことさらに
問題にすることはしていませんが、それは日本政府の態度が過去
の侵略戦争についての反省という基本姿勢を崩していないという前
提の下でです。池田さんのように、過去の戦争責任を全面的に否定
するような態度に日本政府が出ればそれでもなお東南アジア諸国が
それを問題にしないとは言い切れないでしょう。
 第二に、現状においても日本の戦争責任を問う声は東南アジア諸
国でも存在するということです。これは民衆レベルでの話ですが、過
去の東南アジアの政権は日本からのODAを効率よく引き出すために、
国内における日本に対する戦争責任の追及(具体的には損害賠償
訴訟など)を押さえ込んでいたことさえあるわけです。従って、東南ア
ジアの態度を見る際に政府のいっていることだけに注目するのでは
十分ではないように思います。