Thu, 02 Feb 2006 00:12:24 +0900,
in the message, <drqkbe$cfn$1@caraway.media.kyoto-u.ac.jp>,
Kouichi Seki <kou1@edit.ne.jp> wrote
>3項には
>「○○○については一切責任を負わないものとします。」
>と書かれています、では何について責任を負うという意味なのでしょう。

厳密に言えばはっきりしないのですが、おそらくは、「接続サービスの提供が
できなかったことにより通常生じる損害」、です。

# 間違いないように言うのなら、「民法416条により法律上賠償義務のある損
 害の内、3項に該当しない損害」。

何の規定も無ければ原則として民法416条1項により、「債務不履行によって生
じた損害の内、通常の事情により通常生じる(類似の事例においてほぼ共通に
生じるような)損害は、法律上賠償義務があります。
416条2項では、「債務者が予見できた特別な事情により通常生じる損害」も賠
償義務を認めていますが、約款29条3項は、この、416条2項により法律上賠償
義務のある「債務者が特に知り又は知り得た特別の事情により通常生じる損
害」を賠償の範囲から除外することを意図するものと考えるのが妥当です。

とすれば、約款29条3項により、民法416条2項の適用を除外するので賠償責任
を負うのは416条1項の範囲、ということになります。
無論、3項は色々わけの解らない表現を並べているので、「416条1項に該当す
る範囲でも一定の免責をする意図」があるかもしれませんが、それは、結局の
ところわけの解らない表現が法律的にどういう意味か不明確なので判断のしよ
うがありません。

もし、当事者間で揉めれば最終的には裁判所が判断するということになるだけ
です。

>「(スピードはともかく)1日24時間のインターネット接続をするための環境の提供」
>というのは3項にある除外項目のいずれかに含まれると考えられますか。

含みません。
それはまったく別の話です。

# 確かに当該約款全部を読んだわけではないので「絶対」と断言はできません
 が、まあ大概の約款はそれほど差がないので、まず外れていないと確信はし
 ています。

約款29条は、「接続できない状態が生じた場合の損害賠償に関する定め」で
あって、接続サービスを提供するという話とは前提が違います。

通信サービス提供契約の内容自体が元々「設備の保守点検など約款に定める一
定の場合を除いて1日24時間インターネット接続サービスを提供する」という
ものでしょう?
(今どき、時間制限があるというのは珍しいかと。)
ならば、それは「契約の内容そのもの」であって、契約が存在する以上、サー
ビス提供者側がその義務を負うのは当然の話です。

約款29条が何を定めた規定かと言えば、サービス提供が「できなかった」場合
つまり義務違反(契約違反)の場合の賠償について定めた規定です。
つまり、当該条項は、通信サービスを提供する義務について規定するものでは
なく、あくまでも「通信サービスを提供する義務を果たせなかった時の代替義
務」を定めるものです。
契約に基づく義務を「果たせなかった」場合に替りに負う義務の規定なのです
から、そこに「果たせなかった」義務を含むのは論理的に矛盾します。
債務そのものを履行する義務(契約内容を実現する義務)と債務不履行時の義
務(契約内容が実現できなかった時の代りの義務)は同時に成立つことはあり
ません。

文言上の話をするなら、同一条文において項を分ける場合は、第1項の前提条
件(その範囲は形式的には定まりませんが。)がそのまま他の項にも及ぶから
そういう定め方をするのです。
本件においては、
「当社は、当社又は接続事業者の責めに帰すべき理由により、本サービスの提
供をしなかったとき」
というのが約款29条の各項共通の条件と読むべきです
(その意味では責の無い「善意無過失」の場合は規定していないとも言える
 が、裏返しとして29条全体が善意無過失の場合は当然賠償しないということ
 を述べていると考えても間違いではない。)。

-- 
SUZUKI Wataru
mailto:szk_wataru_2003@yahoo.co.jp