# ち、地雷踏んじまった。

Mon, 03 Oct 2005 21:35:34 +0900,
in the message, <BF6754A6.7BAE%moonlight@jupiter.shonan-seashore.net>,
Takeshi Matsumoto <moonlight@jupiter.shonan-seashore.net> wrote
>ちなみに「発明の3要件」って何のことでしょうか?
>私はそんな言葉を聞いたことがないのですが・・・

別投稿でも秒殺しているけど、少なくとも現行特許「法」とは無関係な(相変
わらずの)話。

# 過去の投稿を少し漁れば大体理解できます。

ちなみにgoogleでは
www.nagaokaut.ac.jp/j/annai/vos/vos104/ambition.html
が「発明の3要件」で唯一つだけ引っ掛かりましたが、明らかに特許法の話で
はない。
確かに「企業発明の話に根ざしているという点で特許と全く無関係な話という
わけではない」が、どう読んでも法律論を論じているのではない。

# ちなみに当該記述の筆者は研究者らしいが科学者じゃないと思った。
 「発明」を求めることが「科学本来の姿」だと?
 それは科学技術の方だ。
 科学それ自体じゃない。
 つまりただの研究者(あるいは技術者。)。
 ノーベル物理学賞を獲った小柴名誉教授が文部省から予算を獲る時に担当官
 に「その研究がどんな役に立ちますか?」と尋かれて吐いた台詞は「おそら
 くほとんどの市民生活には何の役にも立ちません」とかなんとかだったらし
 いが(それに予算を出した文部省の役人も大したものだ。)、
 まさに「有用」という意味で科学が「発明」につながるとしてもそれはただ
 の「結果論」だ
 (化学系の大学教員って結構こういうの多いらしい。
  特に企業出身は。
  こういうやつは、発明とか金儲けに直接繋がらない学生の教育をものすご
  く疎かにする。
  つまりいい加減な講義しかしない。
  言い換えれば学生を金づるとしか思ってない。
  ……いや、金づると思ってればまだマシか?:-P
  理系離れとか言うけどその根本はこういう輩の存在だ。)。
 元々学問というのは人間の知的好奇心という欲求を充たすためにやってるだ
 けだ。
 要するに「好きだからやってる」
 (……実のところはプロスポーツとかも元々はそうなんだけど。)。
 もっとも、そのうちきっとなんかの役に立つとは思うけどね。
 一体、メンデルが遺伝の法則を見つけたからと言ってそれが直接何かの役に
 立ったかと言えば、何の役にも立っていない。
 それにメンデルは何も発「明」してないしな。
 メンデルの発見した遺伝の法則は当時全く理解されなかった。
 それが1900年になってほぼ同時期に世界で複数の学者が遺伝についての法 
 則を発見して調べてみたらメンデルが35年前に既に発見していたということ
 が判ったというもの。
 ってことは、メンデルが見つけても見つけなくてもその後の科学ひいては科
 学技術の発展には何の関係もなかったということですらある
 (コペルニクスの地動説だって似たようなもんだよな。)。
 じゃあメンデルのやったことは科学ではないのかい?
 だいたい、科学の歴史はどちらかと言えば発見の歴史であって発明の歴史
 じゃない。
 そして発見は特許が取れないから発見自体では大した金儲けはできない。
 アメリカで新しい学問・研究成果を金儲けに使うことが多いとしてもそれ
 は、「金儲けのために研究をしているのではなくて学問・研究の結果がたま
 たま金儲けに使えそうだから使う」だけ。
 せいぜい「あわよくば」であって、最初から金儲け目的だったらもっと確実
 な金儲けの方策に走るだろうね。
 上手く行くか行かないか判らないような方法ではなくて。
 実際のところ学問・研究成果で「金儲けができる方が珍しい」。
 ……エジソンは商売上手だったらしいが、所詮、発明家でしかない。
 もっとも、彼が商売をするのは「次の発明をする資金稼ぎ」だった面もある
 ようだが。
 発明して金儲けなんてのが科学の到達点だなどと思ってるからこの国では基
 礎科学が軽んじられるんだけど、先端技術なんてほとんどはしょせん今しか
 通用しないただの「技術」。
 technologyはscienceではない。
 法律もそうだけど基本原理を蔑ろにして応用ばかりに目を奪われるのはしょ
 せんハウツー物のレベルでしかない。


以下読者一般向けの補足。

特許法における発明の要件は、
1.自然法則を利用したものであること
2.技術的思想であること
3.創作であること
4.高度であること
の4つ
(ただし高度かどうかの判断は、容易に考え出すことができないかどうかとい
 う判断になるので実質的に進歩性の問題になる。
 その意味で「進歩性を欠くようなものは高度ではないから発明ではない」と
 言っても事実上間違いではない。
 しかし、それはあくまでも事実上の問題。
 法律論としてはあくまでも進歩性は特許の要件であって発明の要件ではな
 い。
 そもそも法理論上は、高度であることを進歩性の問題と捉えるにしてもそれ
 は発明を考案と区別するために高度であることを要求しているだけと考える
 ので、高度であることは本来的に発明に必須の要件ではないとも言える。
 であるならば、極論すれば高度かどうかは発明であるかどうかを決める
 に当って大した問題ではない。)。

特許の要件は、
1.特許法上の発明であること
2.産業上利用し得ること
3.新しいこと(新規性)
4.容易に考え出すことができないこと(進歩性)
5.先願であること
6.公益に反しないこと
の6つ。

# こんなものは出典を示すまでもなく「まともな特許法の本ならほぼ100%
 載っている」。

あとは要件該当性の具体的判断基準として特許庁が定める審査基準の問題。
それ以外は特許の要件論とは無関係。



……しかし、「役に立たない発明」と言われる代物は古今東西枚挙に暇が無い
と思うのだが、もし「役に立たなければ発明でない」と言うのなら、この「役
に立たない発明」って一体何?って気もする。

-- 
SUZUKI Wataru
mailto:szk_wataru_2003@yahoo.co.jp