Fri, 18 Feb 2005 23:59:47 +0900,
in the message, <cv5038$j3$1@bgsv5647.tk.mesh.ad.jp>,
"ISHIBASHI" <m-ishibashi@mtb.biglobe.ne.jp> wrote
>私は、OS自体は101条第2号、第4号の「その発明による課題の解決に不可欠なも
>の」ではないと解釈しています。この要件「その発明…に不可欠なもの」は、制
>度本来の趣旨からみて間接侵害の対象が過度に拡張されないようにする為の要件
>であり、その「もの」は課題解決の為の技術的な役割の一部を担うだけでは足り
>ず、その「もの」を用いることによって初めて直接侵害行為（本件ではインスト
>ール）になる事が必要と考えるからです。

なるほど。

そうすると例えばWindowsのExplorerなりHelp Centorなりに今回の一太郎と同
様の機能があったとした場合それは「OSだから特許権侵害とならない」のか
「Explorer等はOSそのものではなくあくまでもアプリケーションの一種だから
OSの問題ではない」のかあるいはそれ以外なのかどのように考えますか？

>平成12年のキルビー特許事件の最高裁判決以降、侵害訴訟において被告が権利濫
>用を主張し、無効審判は請求しないケースが非常に多くなりました。しかも平成
>17年4月1日から施行される改正特許法では、「特許権又は専用実施権の侵害に係
>る訴訟において、当該特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認めら
>れるときは、特許権者又は専用実施権者は相手方に対しその権利を行使すること
>ができない。」という新しい規定（第104条の3）も加えられます。したがって、
>今後は、無効審判が請求されるのは、侵害訴訟とは無関係のケース（例えば、特
>許を無効にした後、製造販売を始める予定でいる場合など）に限られることにな
>ると思います。

これは結局のところ最高裁判決の理屈を明文化しただけでしょう。
（裏を返せば、裁判所は特許の無効を直接判断できないということについて明
　文の根拠ができたと言っていい。）。
とすれば実務的な影響はほとんどないと思います
（強いて言えば、「無効が明白」が「無効にされるべき」となっているあた
　り、無効の認定が広くなる可能性はありますが、所詮は事実認定の話になる
　のではないかと推測。）。

なお、無効審判請求は上記のような場合ともう一つ既に実施して警告を受けた
がまだ訴訟に至らない場合が考えられます
（この場合確認訴訟という手も一応制度上は使える。）。


それはともかく、なぜ無効審判請求しないか理由が一つ思い当りました。
おそらくは、「訴訟において権利濫用が認められたのに審判で有効となってし
まった場合の再審による判決取消の可能性を排除する」のが目的ではないかと
思います。
つまり、訴訟において権利濫用が認められたら無効審判請求は藪蛇になる可能
性があるということです。

訴訟において権利濫用が認められなければそのとき初めて無効審判請求を出し
それでも負けたら万策尽きただけのことですし勝てば再審請求して確定裁判を
取消すことができます。
訴訟において権利濫用が認められても、特許権者側は無効審判請求ならぬ有効
審判請求ができないので取消になることはありません
（改正法で最高裁の理屈を明文化するなら、特許権者側の保護のために有効確
　認審判とかを設けるということも考えられなくはないけど、それをやると手
　続きがめちゃくちゃ長期化するだろうな。
　改正法確認していないけど、多分やってないだろう。）。
そこで何も実施者が自ら相手に再審の理由を与えるリスクを犯すことはない
と。

もともと最高裁判決の理屈は、「本来無効とすべき場合まで有効として判決を
出さねばならない」という制度上の歪みが「有効として判決が確定したのに無
効審判で無効となった」という事例を生み出したことに対して、裁判所の苦肉
の策だと思ってんですよね。
無効となるべきという実質的な無効判断ができるようになれば、審判との齟齬
が減るし審決取消訴訟と侵害訴訟とで裁判所の判断が異なるという事態も減ら
せる
（訴訟提起がなかったり、侵害訴訟が一審で終わったりしてしまえば別だが、
　その場合は再審請求しろということになる。）。

-- 
SUZUKI Wataru
mailto:szk_wataru_2003@yahoo.co.jp