河野真治 @ 琉球大学情報工学です。

In article <d9t7nq$mnt$1@caraway.media.kyoto-u.ac.jp>, kiguchi@rist.kindai.ac.jp writes
> 現代的な理解もいいけれど、個別発生は系統発生を繰り返すので、昔の天才が
> 何を考えたのかを知っておく必要があると思う。剛体の話にしてもアルキメデ
> スから始まって、振動中心にかんするメルセンヌ問題、その解としてのホイヘ
> ンスの剛体振り子などの問題をどう解いたかの知識がないとね。

ところがさ、物理の歴史的にも、保存量は「速度の二乗か速度か」
とかの議論が力(F=ma)より先行しているんですよね。その議論の後
で、ニュートンがあれをでっちあげて、

    F=ma

が先行するようになってしまったわけでしょ? やっぱり加速度って
のは、かなり高度な概念で、F 自体も目に見えないわけだから、そ
れが最初かってのは無理あると思う。ニュートン流の定式化の弊害
の一つだと思います。そもそも、作用反作用を基本法則に持って来
るあたりセンスがぼけぼけだと思う。

例えば、慣性の法則自体、

    F = 0 だから、a = 0 だ

って見るよりも、

    mv という保存則があるから、v = 一定だ

って方が観測と直接に結び付いてますよね。天体力学でも逆二乗法則
より、ケプラーの面積速度一定の方が先に指摘されています。本質的に
保存則の方が理解しやすいってことです。

で、それは、現代的な理解からも当然なんですよね。だって、ハミ
ルトニアンが基本法則なわけだから。

> まあ、初等力学というのは、老ダランベールに影響を受けたナポレオンが優秀
> の砲兵を作るために工科学校を作ったとき完成した学問で、ポエニ戦争のアル
> キメデス以来、軍事と関係しているけれどね。そこで固定してしまったことが
> 問題なんだけれど。

F=ma が重視されるのは、そういう点もありますね。弾道学ばかり
が物理じゃないぞっていう感じ。

> しかし、現在の工科の大学生を見ていると、古代バビロニアの知識さえ受け継
> いでいないことを思い知らされるよ。まず、何々あたりという比の概念が分か
> らない。長さが2倍になったら体積は何倍になるかというスケーリングもでき
> ない。なんでこうなったのかと思う毎日。

それは、確かに... 日常生活に基づいた学習を目指して欲しい。

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Shinji KONO @ Information Engineering, University of the Ryukyus
河野真治 @ 琉球大学工学部情報工学科