佐々木将人@函館 です。

>From:"Hattori Yasushi" <hatty2@nifty.com>
>Date:2003/09/23 23:07:46 JST
>Message-ID:<bkpkj5$l7k$1@news511.nifty.com>
>
>言われていることは,とてもよく分かるのですが,いまひとつ
>すっきりしないことがあるのです。
>
>Nシステムとオービスが,わりと近くに設置されている所は,
>現実にありますよね。       ・・・・・OKゾーン

これが間違い。

問題を整理すれば
まず刑事罰を科す法律の話なんだから
構成要件該当性
(故意・過失による行為の存在、結果の発生、行為と結果との間の因果関係)
違法性(違法性阻却事由の不存在)、
責任
の3要素はそろっていないといけない。
だけど今回はこれがそろっているという前提ね。

さらに刑罰を科すためには刑事手続法による所定の手続をふむ必要がある。
その中には「起訴状を2か月以内に送達しなきゃならない」なんて
地味なルールもあるんだけど
その中には
「適式な証拠調べの結果得られた証拠によって
 合理的な疑いをさしはさむことのてきない程度に有罪であることを
 証明しなければ有罪にしてはいけない」
ってルールもある。

そこで現在のNシステムだったら
「顔が写らない」(ことになっている)から
「運転者が誰かということは特定できていない」ゆえに
「その人が運転したことに合理的な疑いが出てくる」んで
有罪にできない訳ね。
また人の問題だけではなく走行地点の特定の問題もある。

現実にはNシステムと高速度走行抑止装置とが
近所に設置されている例があるけど
それは別にNシステムで捕まえて有罪にできることは意味していないどころか
現実としてはだめということになっています。

そして架空の話として
「Nシステムにこんな改良をした」の例として
「顔を写していることにしてしまおうor写していることを白状しよう」
という仮説が出てきたけど
そうなると運転者の特定はできるかもしれない。
特定できればその点では有罪立証可能になる。
だけど地点の特定の問題はどう?

そういう問題点に加えて、
仮にそういう問題がクリアになったとしても
網羅的に写真撮影することには
人権上問題があるんじゃないか
人権上問題のある捜査方法によって得られた証拠は
違法収集証拠として証拠から排斥されるんじゃないか?
って議論は、今までとは別の次元の議論ですね。
(同じ証拠法の問題ではあるんだけど
 違法収集証拠(という証拠能力の問題)がシビアに議論になるのは
 もしその証拠が認められれば有罪立証成功になる
 (証明力は認められる)からなのであって
 証明力のないような証拠であれば
 それで有罪にならないんだから声高に証拠能力を問題にしなくともよい。)

Nシステムで有罪立証できるかどうかという問題は
「人の特定の問題」と「犯罪地点の特定の問題」との2つがあります。
そして人の特定の問題としては
「運転者の顔を写してなければ特定はできない」
「写していれば違法収集証拠となって使えないかもしれない」
という2つの問題があるのです。

それを距離の問題という1つの問題に押し込めてしまう
>Nシステムとオービスが,わりと近くに設置されている所は,
>現実にありますよね。       ・・・・・OKゾーン
という発想がそもそも間違いなのです。

----------------------------------------------------------------------
Talk lisp at Tea room Lisp.gc .
cal@nn.iij4u.or.jp  佐々木将人
(This address is for NetNews.)
----------------------------------------------------------------------
ルフィミア「兄さん、秋休みだね。私をどこに連れていってくれるの?」
まさと  「それ青いブレザーでキュンキュンさせながら言わないと……。」