Re: Eを開球で覆って定義した外測度とLebesgue外測度とが等しくなる事の証明
工繊大の塚本です.
In article <a35b0096-3dfa-4295-b32c-0df2954989e1@q16g2000yqg.googlegroups.com>
kyokoyoshida123 <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> Corollary3.10は「Eが可測集合なら0<∀ε,δ∈Rに対して,
> m(E\∪_{j=1}^N B_j)<δでm(B_j)<εとなるEを覆う開球B_1,B_2,…,B_Nが採れる」
> という主張ですよね。
E を覆うわけではありません. E\(∪_{j=1}^N B_j) は
一般に空集合ではありません.
> 0<∀ε∈Rに対し,Σ_{j_i=1}^N_i m(B_{j_i})≦m_*(Q_i)+ε/2^iで
> m(B_{j_i})<δなるQ_iの開球被覆{B_{1_i},B_{2_i},…,B_{N_i}}が採れ,
Corollary 3.10 だけではそのような開球被覆の存在が
示されないので, Hint が書いてあるのです.
> 『Eを可測集合とするとm(O\E)<ε'なるE⊂O∈T(:R^dの通常の位相)が採れる。
> 次にCorollary3.10からΣ_{j=1}^N m(B_j)≦m(E)+2ε'且つ
> m(E\∪_{j=1}^N B_j)≦3ε'なるB_1,B_2,…,B_Nが採れる』
> ここでCorollary3.10はm(E\∪_{j=1}^N B_j)≦3ε'なる
> B_1,B_2,…,B_Nが採れるという主張で
> Σ_{j=1}^N m(B_j)≦m(E)+2ε'という主張はしていないと思うのですが…。
> 勘違いしてますでしょうか?
Corollary 3.10 は Lemma 3.9 における, E の Vitali 被覆
から選んだ disjoint な B_i らで, Σ_{i=1}^N m(B_i) > m(E) - δ
を満たすものは, 更に, m(E\∪_{i=1}^N m(B_i)) < 2δ を
満たすように取れる, というのが主張です.
その証明を見ると, E ⊂ O を m(O\E) < δ となるように取り,
B_i らは O に含まれるものから取るようになっていて, 実は,
∪_{i=1}^N B_i ⊂ O です. B_i らは disjoint ですから,
Σ_{i=1}^N m(B_i) = m(∪_{i=1}^N B_i) ≦ m(O) < m(E) + δ
でもあります.
δ = ε' とするわけですから, Corollary 3.10 (とその証明)
からは,
Σ_{j=1}^N m(B_j) < m(E) + ε',
m(E\∪_{j=1}^N B_j) < 2ε'
が成り立つような disjoint な B_j らが取れるので, text の
主張は少し変ですが, まあ, 間違いではありません.
> あと,B_1,B_2,…,B_Nの直径については言及しなくて言いのでしょうか?
> B_1,B_2,…,B_Nの各直径はばらばらなのでしょうか?
Vitali 被覆を一定の直径以下のものからなる被覆に
取り換えることにより, それはいつでも仮定できます.
> それと,Oはそのご登場しませんが何の役に立っているのでしょうか?
Cororally 3.10 の証明のところで使うので,
Σ_{j=1}^N m(B_j) < m(E) + ε'
が成り立つことの保証でもあります. 後では要りません.
> 『最終的にE\∪_{j=1}^N B_jを立方体の和集合で覆え。
> その測度の和は≦4ε'である。』
> ええと,ここはE\∪_{j=1}^N B_j⊂∪_{i=1}^∞ Q_iとすると,
> Σ_{i=1}^∞ |Q_i|<4ε'という事でしょうか?
> 4ε'は何処から来るのでしょうか?
m(E\∪_{j=1}^N B_j) < 2ε' ですから, 任意の ε'' > 0
について, E\∪_{j=1}^N B_j ⊂ ∪_{i=1}^∞ Q_i で
Σ_{i=1}^∞ |Q_i| < m(E\∪_{j=1}^N B_j) + ε'' < 2ε' + ε''
となる Q_i らが存在します. ε'' = ε' と取れば,
Σ_{i=1}^∞ |Q_i| < 3ε' ですね.
> 『そして,これら立方体をそれら含む開球で置き換えよ』
> E\∪_{j=1}^N B_j⊂∪_{i=1}^∞ B_i
> (但し∪_{i=1}^∞ Q_i⊂∪_{i=1}^∞ B_i)
> と書き換えればいいのでしょうか?
Q_i ⊂ B'_i となる開球で, m(B'_i) < C |Q_i| (但し,
C は次元で決まる定数) となるものに置き換えれば,
E\∪_{j=1}^N B_j ⊂ ∪_{j=1}^∞ Q_i ⊂ ∪_{j=1}^∞ B'_i,
Σ_{j=1}^∞ m(B'_i) ≦ C Σ_{j=1}^∞ |Q_i| < 3Cε'
が成り立ちます. B'_i の直径を押さえたければ, Q_i は
有限個の立方体の和に置き換えておくことになります.
このとき,
E ⊂ (∪_{i=1}^N B_i)∪(∪_{j=1}^∞ B'_j),
Σ_{i=1}^N m(B_i) + Σ_{j=1}^∞ m(B'_j) < m(E) + (1+3C)ε'
となります. ε = (1 + 3C)ε' となるように ε' を取れば,
任意の正数 ε に対して, E を覆う(直径が一定以下の)開球
B_i らで, Σ_{i=1}^∞ m(B_i) < m(E) + ε となるものが
取れたことになります.
> 『一般のEに対して,Eが立方体の時,上を適用する事で始めよ』
> の意味が分かりません。Eがd次元立方体の時,
> Eは可測集合だからCorollary3.10を適用して,
> m(E\∪_{j=1}^N B_j)≦3ε'なるB_1,B_2,…,B_Nが採れる。
> それからどうすればいいのでしょうか?
Lebesgue 外測度の定義から, 任意の正数 ε について,
E ⊂ ∪_{i=1}^∞ Q_i, Σ_{i=1}^∞ |Q_i| < m_*(E) + ε
となる Q_i らが存在します. E = Q_i として上を適用すれば,
開球 B_{i,j} らで, Q_i ⊂ ∪_{j=1}^∞ B_{i,j},
Σ_{j=1}^∞ m(B_{i,j}) < |Q_i| + ε/2^i
を満たすものが存在します. このとき,
E ⊂ ∪_{i=1}^∞∪_{j=1}^∞ B_{i,j},
Σ_{i=1}^∞Σ_{j=1}^∞ m(B_{i,j})
< Σ_{i=1}^∞ (|Q_i| + ε/2^i) < m_*(E) + 2ε
ですから, m^B_*(E) < m_*(E) + 2ε となり,
m^B_*(E) ≦ m_*(E) です. これが示すべきことでした.
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塚本千秋@応用数学.基盤科学部門.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp
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