工繊大の塚本です.

In article <df48f6ff-df9f-4d3c-9198-45ad9809262b@k36g2000pri.googlegroups.com>
kyokoyoshida123 <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> In article <081208001702.M0210470@cs2.kit.ac.jp>
> Tsukamoto Chiaki <chiaki@kit.ac.jp> writes:
> > 先ず, 一般に, W を F 上のベクトル空間, A を任意の集合,
> > φ: A → W を任意の写像とするとき, φ は線形写像
> > Φ: span(A) → W を導く, つまり a ∈ A ⊂ span(A)
> > について Φ(a) = φ(a) となる線形写像が一意的に決まる
> > ことに注意します.
> 
> えーと,線形写像Φ,Φ': span(A) → W ;Φ(x)=Φ(x)=φ(x) (∀x∈A)としてみると
> ∀x∈span(A)をとるとx=Σ[i=1..n]c_ia_i (但しc∈F)と書けて,
> Φ(x)=ΦΣ[i=1..n]c_ia_i=Σ[i=1..n]c_iΦ(a_i)(∵Φは線形写像)
> =Σ[i=1..n]c_iφ(a_i)(∵仮定)=Σ[i=1..n]c_iΦ'(a_i)=Φ'(Σ[i=1..n]c_i(a_i))
> =Φ'(x)
> でΦ=Φ'となりました。

一意的はそれで良いですね.

> φの線形性は利用しませんでしたが線形である必要はあるのでしょうか?

> > φ: A → W を任意の写像とするとき,

としてある通り, φ が線形である必要はありません.
文は,

> > φ は線形写像 Φ: span(A) → W を導く,

と続いています.

> > 次に, 一般に U, V, W が F 上のベクトル空間,
> > ψ: U×V → W が双線形写像であれば,
> > Ψ: span(U×V) → W を ψ から定まる線形写像とし,
> 
> ψ(u_1+u_2,v)=ψ(u_1,v)+ψ(u_2,v)
> ψ(cu,v)=cψ(u,v)
> ψ(u,v_1+v_2)=ψ(u,v_1)+ψ(u,v_2)
> ψ(u,cv)=cψ(u,v)
> と書けて,
> Ψ,Ψ': span(U×V) → Wを∀a∈U×V,Ψ(a)=Ψ'(a)なる線形写像とすると
> ∀x∈span(U×W)を採ると
> Ψ(x)=Ψ(Σ[i=1..n]c_i(u_i,v_i))=Σ[i=1..n]c_iΨ(u_i,v_i)=Σ[i=1..n]c_iψ
> (u_i,v_i)
> =Σ[i=1..n]c_iΨ'(u_i,v_i)=Ψ'(Σ[i=1..n]c_i(u_i,v_i))=Ψ'(x)
> よってΨ=Ψ'.

一意性は既に済んでいますね.

> これも双線形の性質は特に使いませんでしたが…。

双線形写像の性質は Ker Ψ ⊃ T のところで使います.

> > span(U×V) の
> >  (u_1 + u_2, v) - (u_1, v) - (u_2, v)  (u_1, u_2 ∈ U, v ∈ V)
> >  (u, v_1 + v_2) - (u, v_1) - (u, v_2)  (u ∈ U, v_1, v_2 ∈ V)
> >  (αu, v) - α(u, v)  (α ∈ F, u ∈ U, v ∈ V)
> >  (u, αv) - α(u, v)  (α ∈ F, u ∈ U, v ∈ V)
> > で生成される部分ベクトル空間を T とするとき,
> > T は Ker Ψ に含まれます.
> 
> ∀t∈Tを採るとt= c_1((u_1 + u_2, v) - (u_1, v) - (u_2, v))
> +c_2((u, v_1 + v_2) - (u, v_1) - (u, v_2))
> +c_3((αu, v) - α(u, v))
> +c_4 (u, αv) - α(u, v)) (但しc_1,c_2,c_3,c_4∈F)となっていて

正確にはそれぞれの型のものがいくつかの和になります.

> Ψ(t)=Ψ(c_1((u_1 + u_2, v) - (u_1, v) - (u_2, v))
> +c_2((u, v_1 + v_2) - (u, v_1) - (u, v_2))
> +c_3((αu, v) - α(u, v))
> +c_4 (u, αv) - α(u, v)))
> から=0はどうやって導けますでしょうか?

 Ψ は線形写像ですから,

  Ψ((u_1 + u_2, v) - (u_1, v) - (u_2, v)) = 0
  Ψ((u, v_1 + v_2) - (u, v_1) - (u, v_2)) = 0
  Ψ((αu, v) - α(u, v)) = 0
  Ψ((u, αv) - α(u, v)) = 0

を示せば良く, 更に線形性から

  Ψ((u_1 + u_2, v) - (u_1, v) - (u_2, v))
   = Ψ((u_1 + u_2, v)) - Ψ((u_1, v)) - Ψ((u_2, v))
   = ψ(u_1 + u_2, v) - ψ(u_1, v) - ψ(u_2, v)

ですが, 最後のものが 0 になるのは ψ の双線形性から
示されるわけです. 後のものも同様です.

> >  従って,
> > Ψ は商ベクトル空間 span(U×V)/T から W への線形写像を
> > 定めます.
> 
> すいません。これは何かの命題なのでしょうか?
> 「線形写像Ψ:span(U×V)→WにおいてT⊂KerΨなら
> span(U×V)/T から W への線形写像(つまりU(×)V→Wなる線形写像)が存在する」

 span(U×V) の二つの元 σ_1, σ_2 の差 σ_1 - σ_2 = τ が
 T の元であれば, Ψ(σ_1) = Ψ(σ_2 + τ) = Ψ(σ_2) + Ψ(τ)
であり, T ⊂ Ker Ψ より Ψ(τ) = 0 ですから,
 Ψ(σ_1) = Ψ(σ_2) です. つまり span(U×V)/T の元 [σ] に
対して, Ψ([σ]) = Ψ(σ) とすれば, Ψ([σ]) は代表元 σ の
取り方によらず定まります. このことから上の命題の成立が分かります.
線形写像が商空間からの写像に「落ちる」為の条件というものです.

> > (v_1, v_2)(×)g の形の元は (V(+)V)(×)V^* を生成します
> > から, f の一意性は明らかです.
> 
> ん? ちょっとよくわかりません。
> f,f':(V(+)V)(×)V^*→F;(v_1, v_2)(×)g |→ g(v_1)+g_(v_2)とすると
> ∀x∈(V(+)V)(×)V^*に対してf(x)=f'(x)を示したいですが,
> ∀x∈(V(+)V)(×)V^*をとると,代表元の採り方によっては
> x=(v_1, v_2)(×)g と書けたり,x=(v'_1, v'_2)(×)g'と書けたりしますよね。
> (勿論, (v_1, v_2)(×)g=(v'_1, v'_2)(×)g')

正確には x = Σ_{i=1}^N c_i (v_1i, v_2i)(×)g_i だったり,
 x = Σ_{i=1}^N' c'_i (v'_1i, v'_2i)(×)g'_i だったり,
するわけです.

> その場合には(v_1, v_2)(×)g とx=(v'_1, v'_2)(×)g'の像は
> g(v_1)+g(v_2)とg'(v'_1)+g'(v'_2)が等しいかどうかは
> どうやって知る事が出来ますでしょうか?

その像が等しいものでなければ (V(+)V)(×)V^* から F への
線形写像とは呼ばないので, f, f':(V(+)V)(×)V^* → F が
線形写像だと宣言したところでそれは仮定されています.

そういうものの「作りかた」の方が大事なのです. それが
可能であることは先に示したとおりです.
-- 
塚本千秋@応用数学.基盤科学部門.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp