Re: f:V(+)V(×)V*→Fをf((v+v')(×)g)=g(v)+g(v')で定義する.fが線形写像である事を示せ
工繊大の塚本と申します.
In article <2db06346-5567-4e8d-90f9-e829fdec5631@n33g2000pri.googlegroups.com>
kyokoyoshida123 <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> [問] VをF上の有限次元線形空間とする。V*をVの双対空間とする。
> そして{v_1,v_2,…v_n}と{g_1,g_2,…,g_n}をそれぞれVとV*の基底とし,
基底が与えられているというのは変ですね.
> f:V(+)V(×)V*→Fをf((v+v')(×)g)=g(v)+g(v')で定義する
> ((+)は直和,(×)はテンソル積)。
> fが線形写像である事を示せ。
f: (V(+)V)(×)V^* → F ですか. 変わった問題ですね.
先ず, f((v, v')(×)g) = g(v) + g(v') とするわけですが,
これは (V(+)V)(×)V^* の全ての元についての像を定めて
いるわけではないので, それだけでは f は「定義」されて
いません. つまり, 「 f が線形写像であることを示せ」
というのは正確ではないです. 「この式がある線形写像 f を
定めることを示せ」というのが本当です. つまり,
「 f((v, v')(×)g) = g(v) + g(v') を満たす線形写像
f: (V(+)V)(×)V^* → F が唯一つ存在することを示せ」
という問題でなければなりません.
> f(((v+v')(×)g)+((w+w')(×)g'))=f(((v+v')(×)g))+f(((w+w')(×)g'))
> と
> f(α((v+v')(×)g)))=αf(((v+v')(×)g)) (α∈F)
> とはどうやって示せばいいのでしょうか?
f(((v, v')(×)g)+((w, w')(×)g')) の定義は与えられて
いないのですから, 与えなければ何も示せません.
α((v, v')(×)g) は (v, v')(×)(αg) に
等しいのですから,
f(α((v, v')(×)g))
= f((v, v')(×)(αg))
= (αg)(v) + (αg)(v')
= α(g(v)) + α(g(v'))
= α(g(v) + g(v'))
= αf((v, v')(×)g)
は示せますが, 前にも言いましたように, (V(+)V)(×)V^*
の元は (v, v')(×)g の形のものだけではありませんから,
これで線形性の半分が示されたわけでもありません.
先ず, 一般に, W を F 上のベクトル空間, A を任意の集合,
φ: A → W を任意の写像とするとき, φ は線形写像
Φ: span(A) → W を導く, つまり a ∈ A ⊂ span(A)
について Φ(a) = φ(a) となる線形写像が一意的に決まる
ことに注意します.
次に, 一般に U, V, W が F 上のベクトル空間,
ψ: U×V → W が双線形写像であれば,
Ψ: span(U×V) → W を ψ から定まる線形写像とし,
span(U×V) の
(u_1 + u_2, v) - (u_1, v) - (u_2, v) (u_1, u_2 ∈ U, v ∈ V)
(u, v_1 + v_2) - (u, v_1) - (u, v_2) (u ∈ U, v_1, v_2 ∈ V)
(αu, v) - α(u, v) (α ∈ F, u ∈ U, v ∈ V)
(u, αv) - α(u, v) (α ∈ F, u ∈ U, v ∈ V)
で生成される部分ベクトル空間を T とするとき,
T は Ker Ψ に含まれます. 従って,
Ψ は商ベクトル空間 span(U×V)/T から W への線形写像を
定めます. つまり, 線形写像 F: U(×)V → W で,
F(u(×)v) = Ψ((u, v)) = ψ(u, v) を満たすものが
存在します.
ここで U を問題の V(+)V, V を問題の V^*, W を F とし,
ψ((v_1, v_2), g) = g(v_1) + g(v_2) とすると,
ψ: (V(+)V)×V^* → F は双線形写像ですから,
線形写像 f: (V(+)V)(×)V^* が存在して,
f((v_1, v_2)(×)g) = g(v_1) + g(v_2) となっています.
これで条件を満たす線形写像 f の存在が言えました.
(v_1, v_2)(×)g の形の元は (V(+)V)(×)V^* を生成します
から, f の一意性は明らかです.
こういった議論には V や V^* の基底は使わないものです.
貴方が問題について誤解して質問しているのでなければ,
余り良い問題であるとはいえません.
参考になりましたでしょうか.
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塚本千秋@応用数学.基盤科学部門.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp
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