In article <20080601222228.24302b9a.mistletoe@s9.dion.ne.jp> mistletoe@s9.dion.ne.jp writes:
>> しかし、メカニズムなんて、進化論の本質としては、実はどうでも良いのです。
>  本質としてはそうなのも知れませんが、やはり、メカニズムをキチンと
>説明していない点が誤解の温床になっているようにも思います。
うーん、それはどうでしょうか……

まず、上記引用に文脈依存の表現があるので再確認しておきたいのですが、
上記引用の「メカニズム」は「変異のメカニズム」のことを指しています。
上のように切り取ると「進化のメカニズム」を指しているようにも読めますが、
そうではありません。

何故ここにこだわるかというと、私の主張を言い換えると、
「変異のメカニズム」と「進化のメカニズム」は独立である
ということになるからです。

最近の分子生物学は「変異のメカニズム」について
少し前まで思いもよらなかったような知見を明らかにしつつあるわけで、
この「変異のメカニズム」に関しては、
ダーウィンの考え方は完全に否定されていると考えて良いでしょう。

しかし、「進化のメカニズム」の部分については、
ダーウィンの考え方は大筋では変更を迫られてはいないわけで、
そこは区別して考えるべきだろうというのが1つ。

もう1つは、進化論を否定する連中が、
基本的には「進化のメカニズム」を否定しようとしているように
私には思えるということです。
もちろん、レトリックとして「変異のメカニズム」に関する
議論の弱点を挙げつらうことはあるでしょうが、
それは彼らにとっては手段に過ぎないのではないかと思うのです。

ついでに言うと、「変異のメカニズム」に関する最近の議論は、
「あくまで仮説である」ことを忘れて突っ走ってしまいかけている
傾向があることを危惧してもいます。
意外と足元が脆弱なんじゃないかと思っているのです。

それゆえになおさら、「進化のメカニズム」に関する基本的な考え方それ自体を、
多くの人にシッカリと理解してもらう必要があるんじゃないかと思っています。

                                戸田 孝@滋賀県立琵琶湖博物館
                                 toda@lbm.go.jp