「また、」と「または、」が違うように、「ほか、」と「ほかは、」も違うん
だよって話。

法律の条文では、言葉がかなり厳密に使い分けられていて、その他の規則の場
合もおおむねそれに準じてます。
例えば、「または」と「もしくは」は使い分けられてるし、「その他」と「そ
の他の」も使い分けられてる。
この辺は例えば、
http://adminn.fc2web.com/houmu/kisoyougo/kisoyougo.html
をサンショウウオ。

で、同じような話として、「また、」と「または、」も使い分けられてるって
話は、昔、fjのどっかで佐々木さん辺りがしてたと思う。
記事の再発見はできなかったけど、まあ、普通の日本語としてちょっと厳密に
考えればすむ話だから素朴に見てほしい。
# ちなみに、法律で使うときは、「また」と「又は」が標準らしい。

X1. AはBをする。また、Cをする。
X2. AはBをする。または、Cをする。

という二つの条文は、意味が違います。
どちらも、Aに課せられた義務を列挙してますが、前者はBをするという義務に
Cをするという義務を追加しているのに対して、後者はBをするという義務と選
択的にCをするという義務を課してます。
つまり、X1でのAの義務はBとCの両方をすることですが、X2では、BかCかのど
ちらかをすればよい。
# ちなみに、この場合の「する」は「しなければならない」とほぼ同じ。
# 強さが違うのかな。

後半を否定表現にしても同じ要領。

X3. AはBをする。また、Cをしてはならない。
X4. AはBをする。または、Cをしてはならない。

だと、X3での義務はBをすることとCをしないことの両方。X4での義務はBをす
ることかCをしないことかのどちらか。
でも、X4は悪文だな。普通はそういう表現をしないと思う。

では、

Y1. AはBをするほか、Cをする。
Y2. AはBをするほかは、Cをする。
Y3. AはBをするほか、Cをしてはならない。
Y4. AはBをするほかは、Cをしてはならない。

ではどうでしょう? 1<=n<=3 で、XnとYnは同じ意味になります。
「また、」も「ほか、」も追加の役割をするのに対し、「または、」と「ほか
は、」は選択的に述べてるわけです。

よく見ると、Y4だけ特殊だなあ。「BをしないんだったらCをしちゃだめ」とい
う風に見える。

どっちにしても、JPRSの例の規則は、Y3に相当するのだから、BをするのもCを
しないのも両方義務だってこと。

以下は落穂ひろい。
# の方が長い(^^;)

! "<43dc8739$0$970$44c9b20d@news3.asahi-net.or.jp>" という記事で
!     Sun, 29 Jan 2006 18:13:30 +0900 頃に wacky  さん は言ったとさ:

> 何時もながら自信満々に間違えてるな…。^^;

自己分析ですか?

> KGK == Keiji KOSAKAさんの<drfgbl$fe0$1@film.rlss.okayama-u.ac.jp>から

>> ひょっとして、「〜ほか、」の「〜」に反してないから文面に反してないって
>> 主張でしょうか?

> はい。^^;

上述のように間違った解釈ですね。

>> 二重に間違ってますね。

> いいえ。^^;

二重のうちひとつにしか反論してないようですが、「おれは一重にしか間違っ
てないんだ」って主張ですか?

>> 問題の文は、
>> 
>> http://jprs.jp/doc/rule/disclose-rule.html
>> | 2.WHOIS公開情報の提供を受けた者(以下「情報受領者」という)は、「JP 
>> |   ドメイン名登録情報等の取り扱いについて」に定める目的の範囲内で、自己
>> |   の責任において当該の WHOIS公開情報を利用するほか、当社の書面による承
>> |   諾なく、当該情報を第三者に提供しまたは公開、頒布してはならない。
>> 
>> ってやつです。
>> 「WHOIS公開情報の提供を受けた者(以下「情報受領者」という)は」という
>> 部分で主題を提示してるわけですから、続く文は、情報受領者が従うべき規則
>> であると解するのが普通ですね。

> ハイハイ。^^;

>> で、
>> 
>> (1)「JP ドメイン名登録情報等の取り扱いについて」に定める目的の範囲内で、
>> 自己の責任において当該の WHOIS公開情報を利用する
>> と、
>> (2)当社の書面による承諾なく、当該情報を第三者に提供しまたは公開、頒布
>> してはならない。
>> 
>> が「ほか」でつなげてあるわけですが、普通の日本語として読めば、(1)と(2)
>> の両方とも従わなくてはならないものですね。

> 普通の日本語では「ほか」に"AND"の意味はありません。

追加の役割をすることがありますから、結果として"AND"の役割もします。
「また」を単純に"OR"にしちゃうと間違えるってのと同じこと。

> じゃ、例題。

> http://www.yuhikaku.co.jp/bookhtml/011/011406.html
> 先頭文字を目次として使うエクスプローラ型のメニューで用語を検索するほか
> ,前方一致,後方一致の検索でも調べたい用語が簡単に引ける便利さです。
> http://www.yuhikaku.co.jp/bookhtml/011/011406.html

> は「メニュー」と「検索」の両方やらないと用語にたどり着けないのかね?

文脈的には「可能な方法」を列挙してるわけね。
つまり、メニューを使うのも可能な方法だし、前|後方検索も可能な方法だと。
JPRSの場合の「(1)も義務だし(2)も義務」ってのと全く同じ要領で解釈できま
す。

「両方やらないと」なんてのは、義務の性質を可能な方法に持ち込んだがゆえ
の誤りですね。

>> そもそも、上の(1)か(2)のどちらかを満せばよいってことなら、「公開さえし
>> なければ目的外利用してよい」ってことになります。
>> それは、ないよね。

> 言いたかないけど、馬鹿か?アンタ。

と否定しといて、

> これはもう、普通に読んで「(1)か、(1)でなければ(2)」でしょ。

同じこと主張するのは何故? 自分が言ってることの意味も分かってないの?
「(1)でなければ(2)」ってのは、「目的外利用なら公開するな」でしょ?
それは、公開しない目的外利用を禁止してない。
# っつうか、「(1) or [[not (1)] and (2)]」は「(1) or (2)」と等価だし。

> 普通の常識を持つ社会人なら「目的の範囲内で利用している分には書面による
> 承諾は不要である」と読めるでしょう。

いいえ。
目的の範囲内の利用でも公開するんだったら書面による承諾は必要です。
# でも、目的の範囲内で、かつ、公開が必要って例を思いつかない。

> 普通の常識を持つ社会人なら「目的外
> 利用したければ書面による承諾が必要」である」と読めるでしょうね。

いいえ。
書面による承諾は、公開等するときに必要なもので、目的外利用なんてのは最
初からOUT。

> #そもそも、何でもかんでも「(2)書面による承諾」が必要なら、その時点で
> #「(1)利用目的の判断」は意味が無い。

「何でもかんでも」ではなく、「第三者に提供しまたは公開、頒布」する場合
のみです。
それ以外の利用は、目的の範囲内である限り、書面による承諾は不要。
「自律分散協調による問題解決」のモデルに従う限りは、「第三者に提供しま
たは公開、頒布」せずに目的内利用ができるんだから、それが標準でしょ。

> #それどころか、「ネットワークトラブルに悩む人に代わって担当部署を調べ
> #て教えてあげる」ことさえ「(2)書面による承諾」が必要になってしまう。

そういうときは、調べ方を教えてあげるのが、一番親切。
もちろん、規則の存在と共に。

もし、wacky氏のいうような意味にしたいのなら、

: WHOIS公開情報の提供を受けた者(以下「情報受領者」という)は、「JP 
: ドメイン名登録情報等の取り扱いについて」に定める目的の範囲内で、自己
: の責任において当該の WHOIS公開情報を利用する。ただし、当社の書面によ
: る承諾があれば、当該情報を第三者に提供しまたは公開、頒布してよい。

と書くんです。原則が目的の範囲内で、例外として承諾のもとの公開を許可す
るという書き方。
ほかの書き方ができないわけじゃないけど、JPRSの実際の文面では、wacky氏
のような解釈は無理。

> <余談>

>>> 刑法の話なら刑法について適用しましょう。
>> 
>> 「罰則があるような規定」の、最もドラスティックな例ですね。

> まあ、一般相対論に対する特殊相対論のように特殊な例でしょうな。

それって、あんまり「特殊」じゃないような。
宇宙論以外の物理のほとんどの分野で「相対論」といえば「特殊相対論」を指
します。

>>>> 原則は文理解釈で、必要にせまられた場合のみ論理解釈の一部を許すが、類推
>>>> 解釈は禁止というものですね。
>> 
>>> そりゃあ、まあ、刑法じゃあある程度はしょうがないわな。
>>> 他者の人権を強制的に制限することが可能な法律なんだからね、それは。
>> 
>> 他の規則だと、恣意的に罰則を与えてよいってこと?

> 逆だろうが…。
> 刑法*ですら*そんなことはできないと言っているのに。

恣意的に罰則を与えちゃだめなんだったら、原則は文理解釈だよね。

>> それとも、「暗黙の適用範囲」の解釈が恣意的になり得るってことが理解でき
>> てない?

> だから、裁判は必ず事件毎に行われるわけ。似たケースだから裁判は省略して
> 同じ判決を当て嵌めようってわけにはいかないのさ。

明示的に適用範囲を決められるのなら、そっちの方がいいに決まってんじゃん。
厳密には決まらなくても、方向性は決められる。

>> 刑法でさえ100%原則通りってわけにはいかないんだから、他の規則が100%原則
>> 通りってわけにいかないってのは当たり前。
>> だからといって、原則を頭から無視してよいわけではない。
>> 例外扱いするには例外たる根拠が必要だし、例外であってもできる範囲で原則
>> に沿うのが妥当。

> で、KGK氏の言う【原則】通りに事が運ぶ割合がどれほどあると言うのかね?
> 私は*殆ど無い*と思うよ。

大抵の事例で原則通りでしょ?
日常生活の中でいろんな規則を守ろうと考えるときに、普通は原則通り考えれ
ばOK。
「廊下を走るな」と書いてる廊下では、走らなければその規則に違反しないっ
てのは明らかでしょ?
「それでも走らなければいけない」といった例外的な事情が起ってはじめて、
原則からはずれることを考えるわけ。

> #そもそも、「それが原則か否か」なんて誰も気にしていないんだよな。

原則と例外で取り扱いが違うのは当たり前。

> #「wackyの主張は文理解釈でないから間違いだ」と主張していたのはKGK氏、
> #あなたですよね。

いいえ。

> </余談>
-- 
KGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGK
KG  KGK (life name: Keiji KOSAKA), Dept. of Phys., Okayama Univ.        K
KG kgk@film.rlss.okayama-u.ac.jp http://film.rlss.okayama-u.ac.jp/~kgk/ K
KGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGKGK