まず、確認事項ですが、
「角運動量保存」という用語の使用に注意してくださいね。
こういう問題では、保存される「角運動量」が
非回転系と回転系とで異なるということが本質です。

非回転系では「目前に見えている現象の持つ角運動量」自体が保存されるのに対して、
回転系では、それと「系全体の回転に起因する角運動量」との和が保存されます。
つまり、回転系では、元々角運動量を持たなかったモノが、
単に収束発散するだけで角運動量を獲得したように見えます。

そういう意味では「コリオリ効果の利いた角運動量」が保存される
とでも表現せねばならないところですが、
残念ながら普及した用語がありません。

このことに注意した上で論ずるならば、
In article <3992187news.pl@rananim.ie.u-ryukyu.ac.jp> kono@ie.u-ryukyu.ac.jp writes:
>>コリオリの力
>>角運動量
>それは実態は同じものだと思う...
というのが本質です。
コリオリの力というのは、現象を運動方程式レベルで
ミクロに見たときに現れるコリオリ効果であり、
それを系全体で積分してマクロに見ると
(コリオリ効果の利いた)角運動量保存になるんです。
一方だけが利いて他方が利かないなんてことは有り得ません。

In article <dc5tlj$li6$1@news.jaipa.or.jp> kenji@nasuinfo.or.jp writes:
>地球の自転が原因で発生する運動の変化の意味では同じですが、
>運動への影響の仕方は異なります。
>コリオリの力のみが利いてくる条件を作れます。
>「もし、地球の一部分を囲ってやり、
>24 時間に一回転回転させて自転による角運動量を打ち消してやれば、
>コリオリの力のみが働いている状態をつくれます。
表現が曖昧で、想定している状況が確定できないんですが、
#もちろん、「24時間」というのを
#緯度効果を考慮して修正した時間に置換するのは当然として

「角運動量を打ち消す」という表現が、
角運動量保存(に対するコリオリ効果)が無くなるという意味だとしたら、
これは、囲った部分の中の回転と一緒に回転している観測者の立場になって、
コリオリの力も消えてしまいます。
(細かく言うと、地球自転によるコリオリ効果と、
 囲った部分を回転させることで生ずるコリオリ効果とが
 正確に同量逆向きとなってキャンセルする)

「角運動量を打ち消す」という表現が、
単に角運動量の初期値を零にするという意味
(地球と一緒に回転している観測者の立場は保たれる)だとすれば、
やはり「角運動量保存」により回転運動が生じ、
「コリオリの力のみが利いてくる」という状況にはなりません。
「角運動量保存」というのは「零は零のまま保つ」ということだからです。
収束や発散が生ずると「系全体の回転に起因する角運動量」が増減するため、
それを打ち消すべく「目前に見えている現象の持つ角運動量」が変化します。

そもそもの出発点として、
In article <dc59b0$etp$1@news.jaipa.or.jp> kenji@nasuinfo.or.jp writes:
>それ以前に、現実の台風はレコード盤のように薄っぺらです。
>台風の厚さと半径の比は 1/80 程度だそうです。
から始まる議論に、深刻な事実誤認がありますね。
上の2行までは良いのですが、

>このような薄っぺらな円板の下側と上側で、
>反対方向の空気の流れが発生しています。
というのは違います。
「薄っぺらな円板」の中で収束した気流は、
上空に向かって放散される形になります。

もちろん、放散された気流は広い上空で発散流になるわけで、
>ですから加わるコリオリの力も下側と上側で逆方向になるはずです。
>コリオリの力で台風の渦ができるとしたならば下側と上側で渦の形が
>反対になるはずです。
ということ自体は間違いではありません。
但し、
・発散域が広いために、渦自体が極めて弱い
・発散域には「雲」が無いため、渦が可視化されない
という2つの理由により、逆向きの渦は「見えない」のです。

従って、
>そのような台風の衛星写真はありません。
という結果になるのは当然です。

ついでに言うと、
角運動量保存から出発して計算しても、
「下側と上側で渦の形が反対になる」という結論は同じになるハズですよ。
同じにならなかったら、どこかで計算を間違えている。

                                戸田 孝@滋賀県立琵琶湖博物館
                                 toda@lbm.go.jp