In article <bjckl9$fud$2@film.rlss.okayama-u.ac.jp>, KGK == Keiji KOSAKA wrote:
>「事例ゼロでは意味が無い」というだけでは、「その具体的な事例は文脈にお
>ける事例しか選択肢は無い」とは言えません。

 そら一般的には無理ですが、一定の条件が満たされれば言
える話です。

 条件:
  ・明示されている事例は存在しない
  ・事例を探す時点以前に発言の応酬が存在している(=
   文脈が存在している)
  ・文脈以外に参照すべき情報のポインタ等は、存在して
   いない

 で、件の文脈においてはこの条件は全て満たされています。

 帰結するプロセスを具体的に示すと、こんな感じです。
 「事例ゼロでは意味が無い」であれば、さて事例はどこに
あるかいな、となるわけです。
 明示されていればそれが選択肢としても最上位に来るので
すが、件の文脈においては示されていません。またポインタ
もありません。となると、暗黙的に存在するものの中から探
すことになります。そして、具体的な「暗黙的に存在する」
場所は、文脈でしかありません。
 従って、「その具体的な事例は文脈における事例しか選択
肢は無い」と帰結されます。

>もちろん、話を振る方は「文脈における事例」を念頭に置いて振るんでしょう
>が、それに乗る方は別の事例を念頭に置いててもかまわないし、すり合わせさ
>えできれば、むしろその方が面白い議論になりやすい。
>それが議論の幅を広げるきっかけになるから。

 それはその通りですし、私もそれを否定はしません。

 が、私が言っているのは件の記事において投稿者が言って
いることを読解するという話ですから、そこまでスコープを
広げた話をしているわけでは無いのです。

 幅を広げるとか広げないとかいう以前に、「コイツは何を
言っているのか」を理解するフェーズの話です。

>で、論者が別の事例を念頭に置いてたとしても、文脈に依存しすぎない限り話
>が通じるってのがメタな議論ってものです。

 メタな話とは、そんなに簡単な話ではありません。

 馬鹿のレベル分けをすることは意味が無いと思いますが、
メタのレベル分けをすることは大切です。メタ化というのは
いろんな軸で可能ですし、軸が共通であってすら階層化のや
りかたは多々あるのですから。しかも、任意に軸を導入でき
るだけに、矛盾させることは容易で、そんなメタ化をやって
しまったら結論が意味を失いますから、目も当てられません。

 従って、メタな話をする場合は、事例に関する詳細を省け
る代わりに、メタ化の構造については、いろいろ考える必要
が出てきます。しかも、その構造が話者間でずれていれば、
話はすれ違うばかりです。

 従って、メタ化の構造に対する認識がずれている場合も、
話は通じません。むしろ、メタな話をする際に頓珍漢な応答
が生じ理由としては、そういう認識のずれが寄与することが
大きいように私は経験から感じています。

 傍証として、話が頓珍漢になっている場合に、抽象化の構
造について問われた相手がちゃんと答えを返したことがほと
んど無いという経験があります。構造を考えていなければ答
えられないでしょう。
 そもそもメタ化とは多くの選択肢を持つものであるという
認識すら無い場合もあるように感じます。

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頼光 mailto:raikou@mug.biglobe.ne.jp
関心・専門分野:
 宗教学、歴史学、社会学、情報工学