"kimura" <kimura@shonan.ne.jp> wrote in message news:3F3F9BC3.AF5F5D1B@shonan.ne.jp...
> GON wrote:
> > 
> > 『CP対称性の破れ』のメカニズムは小林・増川理論における混合角による説明以外にも
> > いくつかありますよね?より高次のダイナミクスによるものなのか?それとも標準理論の
> > 枠内で説明できるものなのか?どっちかはっきりさせることができる実験なのかわかりません。
> 
> 『CP対称性の破れ』のメカニズムが小林・増川理論における混合角による説明以外にあるのは
> 知りませんでした。ゲージ対称性、その対称性の自発的崩壊/ヒッグス機構と合わせて、
> 素粒子の世代構造とその混合を表現する小林・益川理論は 標準理論の骨格になっていると
> 思っていました。
>  もっと高次の超標準理論(SUSY-GUTs)等少しずつ情報を集めて行きたいと思います。

「より高次の」というのは標準理論(模型?)(Standard Model)を超える理論のことです。
これらは宇宙のバリオン生成との関連でしばしば引き合いに出されます。
B−LのU(1)対称性をもった理論とか、もちろん最小超対称性標準モデル(MSSM)とか
標準モデルを超えたモデルから説明するという方向性もあります。あるいは非平衡過程の
ダイナミクスが絡んでいるとか・・・

直接関係はありませんが、QCDにおいてはその量子効果においてCP対称性を破るアノマリが
あるのですが、それが何故か強く制限されていて何故そうなのかよくわかっていない現象が
あります。いわゆるStrong CP Problemと呼ばれているものです。それを解決する方法として
PecceiとQuinnはある種のU(1)対称性を理論に導入することでその破れの効果として説明
しようというものがあります。これなんかも「より高次の」ダイナミクスの結果としてCP問題を
解決しようとする方向性になってます。

つまり、標準モデルによってすべてが説明つくという立場で説明しようとすれば、小林-増川の
CPフェイズにおいて無理が生じるということなんだろうと思いますから、より高次な理論が
背後にあるだろうことは容易に予想がつきます。それがどんなものかは現段階ではわかりま
せんが、すでに多くのモデルは出ています。

わたしが大学院の時に研究してた内容に絡みますが、実はそれらの多くは大統一理論の
エネルギースケールと標準模型の対称性が破れるエネルギースケールとの間に何らか
対称性を破る中間スケールが存在すると、うまく説明がついてしまうという話があります。
そのような理論では太陽ニュートリノの問題も強い相互作用におけるCP問題も暗黒物質
の問題もバリオン生成の問題もニュートリノの質量の問題も一気に解決してしまう可能性
を持っています。さらには重力をも含めた超統一理論への道筋にも合致するものでもあります。
そのようなモデルとしてSO(10)モデルが考えられていてこれらはとっても面白い性質を
たくさん有しています。Pecci-Quinn対称性からフェルミオンの階層性の問題へアプローチ
したものもあって大変興味深いものになってます。

とにかくSO(10)モデルとその対称性の破れの系列は豊かなダイナミクスを提供していて
興味深いものになってます。柳田さんのシーソーメカニズムにしてもSO(10)モデルから
するとニュートリノの質量問題に対して極めて自然な説明を与えてくれます。ここらへんも
はっきりとわかればノーベル賞ものですね。

# ただ、中間スケールとはいえ10^12GEVにも上る大きなスケールなので
# 実験的には不可能かもしれませんが・・・