佐々木将人@函館 です。

>From:Ryusuke Miyamoto <miya@easter.kuee.kyoto-u.ac.jp>
>Date:2004/06/24 00:28:50 JST
>Message-ID:<syly8me47kd.wl%miya@kirika.org>
>
>法律のことをよくわかってなくて、寝惚けた発言が多くて
>すみません。(^^;;

別にそれはかまいません。
聞く耳を持っていただければ
いくらでも会話や議論は可能です。

>とりあえず芦部信喜著の憲法を読んでみ
>たものの、理系の私にはどうしても理解できない部分が多
>く(暗黙に仮定されている条件が多すぎる)、

え〜とですね、
芦部憲法は初心者にもわかりやすいとは思います。
しかしあくまであれは「憲法」の本であって
法の中で憲法がだいぶん特殊な位置を占めていることに鑑みれば
法解釈学の思考を学ぶためには
あまり適さないとも言えるのです。
言い換えれば法解釈の技法の基礎は当然身につけているという前提で
書かれた本ですから
もし理解できないのであれば
「当然となっている法解釈の技法の基礎」
を知らない可能性が高いのです。

>実践的な知識を身に付ける必要があ
>ると思うのですが、何か良い入門書のようなものは無いの
>でしょうか?

まず法解釈学の技法ということでしたら
我妻栄 民法案内 私法のみちしるべ
(もともと一粒社だったけど今はどこかな?
 図書館とか古本屋にはあると思います。)
五十嵐清 法学入門
(これも一粒社だったんだけど……
 図書館とか古本屋にはあると思います。)
あたりがいいと思いますし
渡辺洋三 法律学への第一歩「法律学への旅立ち」 岩波書店
もいいんじゃないかと思います。

そしてこれらを読んだ上で
加賀山茂・松浦好治「法情報学」有斐閣
を読みますと、法律専門家の作業手順が理解できますし
その上で
戒能通孝「法律パズル」日本評論社
に挑戦していただくと
だいぶん実践的な知識
(それでいてハウツーじゃない)
が得られると思います。

ちなみに私個人としては
あと数ヶ月しますと私の書いた法律学入門書(の入門書)も出ますので
買っていただけると幸いです。(笑)
(詳細な情報は http://www.lufimia.net/~lnpp/ で。
 #もっとも実践的な知識はあまり得られません。(泣)) 
それまでは
 http://www.lufimia.net/sub/c1/index.htm 
なんぞを読んでマスターしていただくと
私程度にはなれます。(爆笑)

>> 法律はたいていこの部分について
>> 「社会通念」など「その時点で社会が一般的にどう考えているか」
>> ということを基準に採用するのが普通です。
>
>基準そのものがかなり怪しいわけですね。
>怪しいというより一貫性が無い可能性があると
>言った方が良いのですかね?

まず「永久不変に客観的」という点については
そうではないということが言えます。
わいせつ概念自体
時代によって変化してきたところですし
裁判の結果もタイムラグは発生していますが
社会の動きにあわせている部分があります。

しかしそれだけでは普通「怪しい」とは言えないでしょう。
そして一貫性がない可能性については
「上訴……最高裁の判断」
によって統一するシステムになっています。
(もっとも完璧に一貫している訳ではありません。)

>> 全裸の芸を拒否したことでクラブへの所属を拒否された場合に
>> はじめて法律上の問題になるのではないでしょうか?
>
>なるほど。ちなみに、この場合はどのような法に抵触する
>可能性があるのでしょうか?

引用順変えますけど

>> 「法的なけんかの売り方ってないの?」
>> と聞かれたら
>> 「全裸拒否して大会出場を拒否されたら
>>  大会に出場できる地位の確認を求める仮処分と本案訴訟って手はどう?」
>> くらいのアイディアを出すことは可能ですけど……。

の話につながります。

世の中には私的自治の原則というのがありまして
まあおおざっぱに言えば
「自分たちのことは自分たちで決められ
 お上に介入されない。」
ということです。
で、これの延長線上に「クラブ内のことはクラブ内で決められる」
ということもまた言える訳です。
……だから
  >> 一般には法的審査にはなじまないとされている領域ですが
  ということになるのです。

しかし私的自治は万能ではないのもまた事実です。

そうすると
「大学の剣道の大会は
 剣道の技能が一定以上の者であれば参加し
 技の優劣を競うことができるものだ。」
「一方全裸芸なるものは剣道の技の優劣に関係のないことだ」
「その関係のないことをしなかったことをもって
 大会の出場を不可能にするようなことをした
 (例えば部からの排除、大会からの排除)のは
 民法709条の不法行為に該当する。」
「よって大会に出場できる地位の確認を求める」
って構成も
全く通らない話でもなさそうではないか……。
(そしてきっと裁判所は和解を勧めてくると思うから
 大会出場可能な話ならそれにのる……と続く。)

>そうですね。本来全裸でなるべき場でないところで全裸になることを
>要求されるということがあまりに衝撃的であったため、それに捕われ
>てしまっていたようです。すみません。

はい。
よく考えるとこの問題、別に全裸だけが問題じゃないんじゃないんですか?
例えば
「酒を飲まないと大会に出れない」
「個人で参加料100万円を払わないと大会に出れない」
等々。

>> というのはわいせつ系の犯罪の場合
>> 「性的な目的」がなければ成立しないとされているからです。
>> 復讐心で恥をかかすために女性を裸にした事案で
>> 強制わいせつ罪の成立を否定した判例が現にありますから。
>
>とりあえず、性的に羞恥心を覚えさせるというのでは
>強制わいせつにはならないということなのですね。
>性的な目的の定義はどのようなものなのでしょうか?

強制わいせつ系の犯罪の場合だと
「自らの性的欲求を満たすため」
というのが重視されます。
前記判例の事案はこれが欠けていたのです。
(被害者側から見れば性的に羞恥心を覚えさせられたのは
 疑いありません。)

>> ってことが大学の体育会系剣道部の必要性に対する
>> アンチテーゼになっているからであって
>
>私は特異点に過ぎないですから…。

もともと「かわいそうに思わない」理由は複数あるのですが……。

それでもやはり「大学の部活動しかない」
ということは言えないと思います。

>私が一回生の時に、新入部員で団結して対抗しようとしたのですが、
>見事に失敗しました。(^^;;そもそも、私自身が「こんな何を考えて
>いるのか分からない連中と一緒に練習などしたくない」と思って、
>剣道部に残りたいと思っていなかったのが問題なんですが。

そうするとですね、
他の人たちはそこをデメリットと感じていない訳です。
(少なくとも比較の問題として)
で、そういう人が集まって活動している時に
その活動にダメだしを「法的に」するには
「社会から見てとても容認することができない」
というほどのデメリットがなければ
過度の介入になると思うのです。

>>   OBがそれこそ先輩風ふかせればいいんじゃないの?
>
>体育会剣道部の OB の人が注意しても直らなかったわけですしねぇ…。

これも同様ですね。

>そもそも、体育会の本部でも表沙汰になっていない婦女暴行事件(?)
>もあったという噂を耳にしますし、他大学では殺人事件や婦女暴行
>事件等が頻発している現状を見ると、体育会系というのは人の感覚
>を麻痺させる何かがあるのかなと思ってしまいます。

まあ体育会とひとくくりにしちゃいけないのかもしれませんが……。
私もノリとしてついていけない部分があるのは事実です。

>>   そういう自浄機能が働かないところを守る必要があるの?
>
>私は守る必要なんてないと思います。というか、同じ京都大学の卒業
>生として、また現役の学生として恥ずかしいので、こんなクラブには
>さっさと潰れてもらうか、過去との関係を全て断ち切って(OB は全て
>除籍とか)、新生クラブとして再生してもらうかして欲しいのですが…。

私も同じ意見です。
で、ですね〜。

>#法的に彼等を追い詰めることができれば良いなあと思ってました。

私はこの種の問題を法的に問うのがはたしていいのか?って立場なんですよ。
詳細は
 http://www.geocities.co.jp/WallStreet-Bull/4496/project2/fjtest/0010.htm 
を読んでいただきたいのですが……。
「法に反しているからだめなんだ」
という攻め方をするのは
「法に反していなければよいのか?」
という反論に対してあまりにも無力だと思うのですよ。
世の中には法以外のルール群があるし
法以外のルールでいけないとされることも
それなりに尊重されなければいけないんじゃないんですか?

でね、嫌がる人間に裸踊りをさせるなんざあ
法以前にやっちゃいけない方の部類だと思うんだけど……。

まさに

>私「なら、違法かどうかはおいといて、そもそも全裸になれってのを
>下の学年に強要することをどない思うんや?」
>某「…」
>私「おかしいとは思わんのか?」
>某「思いません」
>私「話にならんな。普通のやつには技術的な指導をしてやるが、お前
>にはする気はない。」

このとおりだと思うのです。
そして大の大人なんだから
思わないやつに無理矢理わからせる必要もないのではないか……と。

>法律に頼らないのであれば、
>
>* 大学当局に指摘する
>* 体育会に指摘する(効果なさそう)
>* キャンパスハラスメントほげほげに指摘する
>* 2ch に晒す(?)
>
>ってのが現実的な選択肢なんでしょうかね?
>#効果があるかは不明ですが。

まず自分がそういう主張をしていく
他の人に話していくということが大事なんじゃないんでしょうか?

>法律に頼ってみるのであれば、
>
>* 公然わいせつの現場を警察に押さえてもらう
>
>くらいなんでしょうか。

まあこれもあり。

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Talk lisp at Tea room Lisp.gc .
cal@nn.iij4u.or.jp  佐々木将人
(This address is for NetNews.)
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ルフィミア「本当に本が出そうなんですか?」
まさと「なんか出そうな感じだよ。」