工繊大の塚本です.

In article <8c9eb83d-edb6-4ae1-b6af-048850c22c2f@w24g2000prd.googlegroups.com>
kyokoyoshida123 <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> そうですね。区間だから0<∀ε∈R,m^*(U\{α∈[0,∞);m(E_α)>r})<εなる開集合
> (開区間)Uが採れますよね。
> よって,ルベーグ可測集合の定義から{α∈[0,∞);m(E_α)>r}∈Σと分かるのです
> ね。
> そうしますと単調減少関数だからルベーグ可測関数という訳ではなく,
> mのαについての原像が区間になってるからmはルベーグ可測関数なのですね。

 α の関数として m(E_α) が単調減少であるから,
 { α ∈ [0, ∞) | m(E_α) > r } は区間となるのです.
だからルベーグ可測関数であるという論理の流れです.

> In article <090120174300.M0103085@cs1.kit.ac.jp>
> Tsukamoto Chiaki <chiaki@kit.ac.jp> writes:
> > m(E_α) ≧ g_n(α) となる非負な単調増加単関数列 g_n として,
> > g_n = Σ_{i=1}^{n 2^n} m(E_{i/2^n}) 1_{((i - 1)/2^n, i/2^n]}
> > を取れば,
> 
> どうしてこのようなg_nが採れるのでしょうか?

与えた g_n は g_n(α) ≦ m(E_α) を満たす非負単関数列で,
 n について単調増加ですね. それを考えようというわけです.

> 定義関数列g_nのとり方は
> E_{n,i}:={x∈E;(i-1)/2^n≦f(x)<i/2^n},F_{n}:={x∈E;i/2^n≦f(x)}
> としてg_n=Σ[i=1..n2^n](i-1)/2^n・1_E_{n,i}+n・1_F_{n}
> でしたよね。

それは一つの取り方と言うに過ぎませんが, それはさておき,

> ここではαが変数xに相当し,m(E_α)がf(x)に相当し,Eが区間(0,∞)に相当するから,
> E_{n,i}:={α∈(0,∞);(i-1)/2^n≦m(E_α)<i/2^n}=E_{(i-1)/2}-E_{i/2^n},
> E_{i/2^n}:={α∈(0,∞);i/2^n≦m(E_α)}で
> g_n=Σ[i=1..n2^n](i-1)/2^n・1_E_{n,i}+n・1_E_{n}
> となり,ここからどうして
> Σ_{i=1}^{n 2^n} m(E_{i/2^n}) 1_{((i - 1)/2^n, i/2^n]}
> になるのか分からないのですが…。

今は, 貴方が書いた g_n のような m(E_α) に収束する
単関数列を考えているのではありません. 違う g_n です.
ですから等式でなく,

  ∫_{[0, ∞)} m(E_α) dα
  ≧ ∫_{[0, ∞)} g_n(α) dα
      = Σ_{i=1}^{n 2^n} m(E_{i/2^n}) 1/2^n

という不等式が成立することのみを確認して,

  ∫_{[0, ∞)} m(E_α) dα ≧ ∫_{R^d} |f(x)| dx

を導いたわけです.

> えっ!∫_Efdμ:=lim[n→∞]∫_Ef_ndμ
> (但し,f_nはfの定義関数列でfが非負ならfへの単調増加単関数列)
> がルベーグ積分の定義でしたよね。
> 0≦fなら∫_Efdμ:=sup{∫_Ef_λdμ;f_αはf≧f_λなる非負可測単関数(λ∈Λ:添
> 数集合)}
> (但し,f_λはfの定義関数族でfが非負ならfへの単調増加単関数族)
> とルベーグ積分の定義を単関数列から単関数族へ拡張なさったのでしょうか?

ルベーグ積分の定義としては, どちらもあります.
同値性も証明できます. 単関数列で定義した場合には
単関数列の取り方によらずルベーグ積分の値が定まる
ことを示すのに,

  f, g_n が非負単関数で, g_n が単調増加で,
  lim_{n→∞} g_n ≧ f のとき,
  lim_{n→∞} ∫_E g_n dμ ≧ ∫_E f dμ

といった類の補題が示されている筈です. それを使え
ば容易です.
 
> 所で lim_{α→∞}m(E_α)=0となる理由は
> 「lim[α→∞]E_α=φでしょうからlim[α→∞]m(E_α)=0となる」
> という短絡的(?)な理由で宜しいでしょうか?

 lim_{α→∞} E_α が ∩_α E_α のことであれば,
 f は ∞ を値として取らないとしておけばそうですが,
 
> もしlim[α→∞]E_α≠φなら∫_{R^d} |f(x)|dx=∞で
> これはfがR^dでルベーグ積分可能である事に反しますよね?

 m(E_α) ≦ (1 / α) ∫_{R^d} |f(x)|dx から
明らかですね.

> > h = ∨_{k=1}^N m(E_{t_k}) 1_{(0, t_k]}
> > についても ∫_{[0, ∞)} h(α) dα > ∫_{R^d} |f(x)| dx
> > となります. ここで ∨ はいくつかの関数の最大値を選ぶ
> > ことを示します.
> 
> すいません。hの定義(∨の定義)がいまいちわかりません。
> "いつくかの関数"とはどういう意味でしょうか?

 N 個の関数 m(E_{t_k}) 1_{(0, t_k]} のことです.
 (0, t_k] らは重なっていますので, その重なりのところでは
 m(E_{t_k}) らの中で一番大きな値を取ることにしよう
というわけです.

> >   = Σ_{k=1}^{N-1} t_k m(E_{t_k} \ E_{t_{k+1}})
> >     + t_N m(E_{t_N})
> >   = ∫_{R^d} (Σ_{k=1}^{N-1} t_k 1_{E_{t_k} \ E_{t_{k+1}}}
> >               + t_N 1_{E_{t_N}}) dx
> >となります.
> 
> 今,積分範囲は(0,∞)で議論してたのに最後でR^dにどうしてすり返れるのでしょうか?

これは前半で,

  f_n = Σ_{i=1}^{n 2^n} (i - 1)/2^n 1_{E_{n, i}} + n 1_{E_n} 

という R^d 上の非負単関数に対して,

  g_n = Σ_{i=1}^{n 2^n} m(E_{i/2^n}) 1_{((i - 1)/2^n, i/2^n]}

という [0, ∞) 上の非負単関数を取ると,

  ∫_{R^d} f_n(x) dx 
   = Σ_{i=1}^{n 2^n} m(E_{i/2^n}) 1/2^n
   = ∫_[0, ∞) g_n(α) dα

となったことと同様のことを逆方向に考えているのです.
この対応がこの話の要です.

> >  Σ_{k=1}^{N-1} t_k 1_{E_{t_k} \ E_{t_{k+1}}} + t_N 1_{E_{t_N}}
> >  ≦ |f|
> > ですから,
> 
> すいません。最後で「≦|f|」が突然現れているのが分かりません。
> どうして「≦|f|」なのでしょうか?
> Σ_{k=1}^{N-1} t_k 1_{E_{t_k} \ E_{t_{k+1}}} + t_N 1_{E_{t_N}}は|f|の
> standard representationだからですか?

単に |f| で上から押さえられている単関数であることを
述べているだけです. |f| は単関数ではないですね.

 0 < t_1 < t_2 < … < t_N と仮定しましたから,
 1 ≦ k ≦ N-1 の k について
 t_k < |f(x)| ≦ t_{k+1} ならば, x ∈ E_{t_k}\E_{t_{k+1}} で
 (Σ_{k=1}^{N-1} t_k 1_{E_{t_k} \ E_{t_{k+1}}} + t_N 1_{E_{t_N}})(x)
 = t_k < |f(x)|,
 t_N < |f(x)| ならば, x ∈ E_{t_N} であり,
 (Σ_{k=1}^{N-1} t_k 1_{E_{t_k} \ E_{t_{k+1}}} + t_N 1_{E_{t_N}})(x)
 = t_N < |f(x)|,
それ以外ならば, つまり, 0 ≦ |f(x)| ≦ t_1 ならば,
 (Σ_{k=1}^{N-1} t_k 1_{E_{t_k} \ E_{t_{k+1}}} + t_N 1_{E_{t_N}})(x)
 = 0 ≦ |f(x)| ですね.
-- 
塚本千秋@応用数学.基盤科学部門.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp